【GIUの記述】

someは、何かを依頼したり申し出たりするときの疑問文で使う

 Can I have some sugar, please? 砂糖を少しいただけますか?

 (おそらくもらえる砂糖があることを前提にしている)

 Would you like something to eat? 何か食べたいですか?

 (食べ物があることを前提にしている)

  Murphy『English Grammar In Use Fifth Edition』2019(しんじ訳)

 

※この説明は、someは肯定文で使うことが基本で、その規則の例外として疑問文で使う場合を例示している。

 

【用例分析】

“Do you want anything to drink?”

“Do you have any liquor?”    

  ――Goblin Ep.11』

 「何か飲み物はいかがですか?」

 「お酒はある?」

 韓流ドラマ「トッケビ」の英語字幕から上司をうちに招いたときのやり取り。申し出ているときにanythingを使い、依頼しているときにanyを使っている。

申し出たり、依頼したりすることと疑問文でsomeとanyを選択することは何の関係もない。「ある?」と尋ねるのがsome、「あるか無いか」を尋ねるのがanyで、話し手の意図を考慮しなくて大丈夫。

 

 Do you want to build a snowman?「雪だるま作ろう?」が勧誘の意図で使われるように、Do you want…は申し出や勧誘の意図で使う表現。それは、以下の例からも分かる。

  Will you be my partner, Grace?

  Do you want to be my partner, Lily? 

   ――Timthy Goes to School , The School Play

   「ぼくと組もうよ、グレース。」「ぼくと組もうよ、リリー。」

 発表会で一緒に組む人を求めて、「~しようよ」と申し出ている。

 

 

Did you receive any jewelry from someone?

  ――Goblin Ep.9

「あなた、だれかに宝石をもらったことがあるでしょ?」

占い師が、依頼人の過去のことを言い当てたシーン。占い師はanyを使って「事実の有無」を尋ねている。Yesという答えを期待しないで依頼者の過去のことを言う占い師は職業として成り立たない。

 間違いなく「あったはず」と確信しYesの答えを期待してany使っても何の問題もない。

 

(melancholy violin ♪♪♪)

“The Farmer in the Dell. Does not sound very happy today, Yoko? 

Is anything wrong?”  

  ――Timothy Goes to School,School Play Ep.20』

 (寂し気なバイオリンの響き)

「小さな谷の農夫ね。ヨーコ、今日はなんだか楽しくなさそうな音色ね。何か良くないことでもあったの?」

 

 学校から帰ってきてバイオリンの練習をしているYokoに母親が尋ねる場面でanythingを使っている。「小さな谷の農夫」は、手をつないで輪になって歌う遊び歌で、本来陽気な曲。母親はいつもと違う様子から学校で何か良くないことがあったと思っているがanythingを使っている。anythingは「有無」を尋ねる表現で、Yesを予想するかどうかに関係無く使われる。

 この文脈では「何かあった」と予想してsomethingを使うことはできる。ただし「何かあった」ときにsomeを使うのは肯定でも否定でも同じことで疑問文の時だけ例外というわけではない。someは「一定数ある」「いくらかある」という数量が基本だから「ある」と思えば、肯定・疑問・否定のどの文に使っても大丈夫。

 

【参考資料】

●語法辞典Fowler's

「A Dictionary of Modern English Usage(1926年)」は、ヘンリー・ワトソン・ファウラー(1858年-1933年)による、イギリス英語の使用法、発音、文章に関するスタイルガイドである。この辞書は、他の英語のスタイルガイドの基準となった。そのため、1926年の初版は現在でも刊行されており、1965年の第2版(Ernest Gowers編集)も1983年と1987年に再版された。2004年にはロバート・W・バーチフィールドによってほぼ全面的に書き直され、コーパス言語学のデータを取り入れた使用法の辞書となった。非公式には、読者はこのスタイルガイドや辞書を「Fowler's Modern English Usage」「Fowler」Fowler'sと呼んでいる。                

   『Wikipedia』より(しんじ訳)

 

●Fowlerのanyの説明

[1919年出版、Fowler兄弟が共同編集した辞書]

(疑問文で)one, some(どんなものでも)   Have you any wool?

(否定を表すまたは示唆する語の後で)     cannot see any difference

(肯定文で)which(of all) is chosen, every  Any chemist will tell you.

  Fowler H, W.(1858-1933)Fowler F. G.(1870-1918)『The concise Oxford dictionary of current English』1919 (しんじ訳)

                                                                               

[1965年出版、Ernest Gowersが編集した改訂第2版]

any(=some)の使用は、肯定文ではなく、否定文や疑問文に限定される。

 Have you any bananas?

 No we haven’t any bananas.

 But yes we have some bananas.

  E.G.編『A Dictionary of Modern English Usage』1965(しんじ訳)

 

 [2004年出版、Robert Burchfieldが編集した改訂版]

anyは単数名詞、複数名詞の両方、そしてhomework(宿題)やmerriment(陽気さ)のような不可算名詞にも使われる。

 (単数)Any promiscuous person is at risk from AIDS.

    ふしだらな人は誰でもエイズのリスクがある。

(複数)I haven’t been keeping any secrets from you

     君には隠し事はいっさいしていないよ。

(不可算)Will there be any music at the party?

     パーティーでは音楽は流れるの?

  R. B.編『The New Fowler’s Modern English Usage』2004(しんじ訳)

 

※anyをone, someとしていたFowler 兄弟の記述からoneを端折って、any=someとしたのはE.G.編集の1965年から。R. B.編集の2004年ではanyについて、文の種類への言及が無く、someとの関係は削除されている。おそらく、日本の学校英文法は、辞書の権威に追随しているのではないか。情報環境が整った今、権威にすがらなくても大丈夫。

 

【しんじの見解】(2025年現在)

 文法書Berry2021の見解に全く同意する。以下に抄訳して引用。

 

「指導用ルールの改良版では、Yesと答えることを期待して質問をするときには some を使うことができる、とされている。これは一つの改善ではあるが、some の使用に関する科学的なルールにはまだほど遠い(far from the scientific rule)。科学的なルールでは、some を使うのは「何かが在る」と言いたい場合で、(また any を使うのは「在るか無いか」に関心がある場合)で、これは他の語のペア、たとえば sometimes と ever、already と yet 違いと何ら変わらない。つまり、some と any の違いは文法の問題ではなく、「意味」の問題なのである。」

  Roger Berry『English Grammar』2021(しんじ訳)

 

 ポイントは、someは肯定、疑問、否定には一切関係なく、「(一定数)ある」と感じた時に使う数量の多少を示す語の一つだということ。一方、anyは数量の多少を示す語群とは全く性質が異なり、oneという語源の意味が残る「一つでも」「一つでもあるかないか」という感覚をもとに不可算の数量へ派生した語。

 英語ネイティブの語感と乖離した、規則と例外フォーマットは要らない。母語話者が実際に使っている表現を観察・分析して真似て使って覚えていくのが外国語を学ぶ基本だと思う。文法説明は「使えない」じゃなくて「使っても大丈夫」と後押しするものがいい。