学校文法では、100年前以上前のNesfeildの3時制モデルをもとに、完了相を過去・現在・未来に振り分けることを基本としています。和製の学習英文法書は、基本的に学校文法に準拠して編集されてきました。近年の英米の学習文法書は、コーパスデータなど実使用に基づいた記述文法を取り入れるようになってきています。

 今回は、[法助動詞+完了]の用例について、綿貫陽,マーク・ピーターセン実践ロイヤル英文法』2006(重版2014) 旺文社をもとに、英米の文法書との相違点を見ていいきます。

 

 綿貫2014では「本書の構成」として「章の配列は、取りつきやすいように従来の英文法書の項目と同じようにしてある」と記述しています。この章立ては旺文社編集部が決めていて、内容からも学校文法に準じた従来の受験英語を念頭において編集されていることが分かります。

同書では、[法助動詞+完了]は、伝統的な学参と同じく【第3章 時制】【第4章 法助動詞】【第9章 法】【第20章 時制の一致・話法】とそれぞれ別の章で扱われています。各章で採ら挙げられている[法助動詞+完了]の用例を見ていきます。

 

【時制】の章には「英語の時制」として「現在時制と過去時制の2つ以外は、助動詞のwillや分詞(現在・過去)を使って、計12の時制が考えられる」と記してあります。取り上げる用例は和式の「直説法」だけです。これは、下に示したNesfieldの基本3時制×4形態(単純・進行・完了・完了進行)=12時制モデルそのものです。

 

   J・C・Nesfield『English grammar , past and present』1898(59頁)

 

 この一覧表ではshallをあげていますが、当時はshallとwill の2つの法助動詞はいずれもFuture Tenseとされていました。近年ではshallが退潮したことから、未来時制を認める立場ではwillを未来を表す表現として位置付けています。[法助動詞+完了]の位置づけとしては、下のように直説法の完了相を過去、現在、未来として、時間の直線上に置いてとらえています。

 

【直説法】 (出来事時)  過去     現在     未来

時制(完了相)           [had done]  [have done] [will have done]

            (過去完了)    (現在完了)    (未来完了)

 

 このモデルを斎藤秀三郎が取り入れ、以来今日の学校文法に引き継がれています。Nefieldは時制の説明としてA verb has three main tenses or timesとしていています。時制tenseと時間timeは一致しているのでどちらで呼んでも良いと考えているわけです。

 

【第3章 時制】中で [法助動詞+完了]の型は下の用例を含め全5例載っています。

未来完了は、<will+have+過去分詞>の形で表す

1)    I think most of the seabirds will have finished nest-building by the

   time you visit the area.

――綿貫2014

 

 この用例は未来時のことを述べています。他の4例は「未来完了の場合も、現在完了の起点を、未来のある時点に移して考えればよい。」との説明の後にあり、いずれも未来時のことを述べる用例だけが載っています。他に[will+完了進行]が1例取り上げていますが、やはり未来時のことを述べる用例です。

 「英語では、文法上の時制と現実の時間とは必ずしも一致しない」(綿貫2014)の記述があり「未来時制」とは呼ばずに「未来を表し表現」としています。記述文法書CGEL2002には「ほとんど文法書が未来時制はないといいながら実際には伝統文法の一次元3時制モデルを採用している」という記述がありますが、これが学校文法の「時制」のとらえ方をよく表しています。学参英文法書が実際に取り上げる[will+完了]の用例はNesfeild1898が示すFuture Tenseと変わりありません。

 

 [will+完了]が過去・現在までに完了している用例は、海外の文法学習書や辞書には載っています。アニメにもに出てて来るような普通の用法です。PEUに載っている用例を紹介しておきます。

 

 Will have+past participle refers to the past

 2)   We can't go and see them now ――they'll have gone to bed.

  Michal Swan『Practical English Usage 3ed.』2005(616頁)

 

 実を言うと、Nefieldとそのモデルを日本に取り入れた斎藤秀三郎は、[will+完了]が未来を表すとは限らないことを示しています。

 

The Future Perfect ― This sense denotes the completion of some event (a) in future time, (b) in past time.

  (a)   He will have reached home, before the rain sets in.  

  (b)   You will have hear this news already; so I need not repeat it.

     John C. Nesfield『English grammar, past and present』1898(167頁)

 

  多分、大方、確か。

3) He will (=may or must)have forgotten me, it is so long since we met.      彼には久しく逢わないから僕を忘れたらう。

     斎藤秀三郎『熟語本位英和中辞典』1918(1542頁)

 

[will+完了]が過去・現在までの完了いることを述べる用法は今から百年以上前から知られていたということになります。いつの間にか受験英語から抜け落ちてしまったのです。

 

 続いて【第4章 法助動詞】にある[法助動詞+完了]の型の取り扱いを見ていきます。

<cannot have+過去分詞>

「~したはずがない」と過去のことについて言うには、cannotの次に完了形を用いる。

 

<could have+過去分詞>は過去のことについての推量を表す。

 

<may have+過去分詞>は、「~したかもしれない」の意味で、過去のことに対する推量を表す。

4)  You may have received an e-mail recently from the webmaster.

 (あなたは最近ウェブマスターからEメールを受け取ったかもしれない)

 

<might have+過去分詞>は、「「~したかもしれない」と、過去のことに対する推量を表す。

5) I might have said this before, but I can't emphasize it enough.

  (前にもこのことは言ったかもしれないが、幾ら強調してもしすぎることはないのだ)

 

<must have+過去分詞>「きっと~だったろう」

 

<ought to have+過去分詞>

[1] 「~すべきはずだったのに」

[2] 事実に反する結果「~したはずなのに」

 

<should have+過去分詞>

[1] 過去の出来事を指して、「~すべきだったのに(しなかった)」の意味

[2] (a) 完了の予想「当然~のはずだ」

 6) Two hours have passed, so they should have finished dinner by now.

  (b) 当然予想できた結果に反すること「~してしまったはずである」

 

<need not have+過去分詞>

 この記述から、[will+完了(完了進行)]は未来

      綿貫他『実践ロイヤル英文法』2014【第4章 法助動詞】より抜粋引用

 

 【法助動詞】の章で扱われる[法助動詞+完了]の型は、過去時のことを述べる用例を主に取り上げ、現在までに完了している用例を一部取り上げています。これに対してに未来に完了していることを述べる用法に関する記述はありません。

また、「法助動詞」の章には[will+完了]の型に関する記述はないのですが、これは「時制」で未来完了として取り上げたから改めて取り上げないということだと解していいでしょう。

 

 学校文法ではほとんど取り上げない用法について、PEUの記述を抜粋して引用します。

【may/might have pp】

May/might have . . . can sometimes refer to the present or future.

 

7) I'll try phoning him, but he may have gone out by now.

 

8) By the end of this year I might have saved some money.

 

【should/ought to have pp】

We can also use this structure to talk about actions which we expect to have been completed by now or at a future time.

 

9) Ten o'clock. She should have arrived at her office by now. I'll try calling her.

 

10) We ought to have finished painting the house by the end of next week.

    Swan『PEU』2016

 

 PEUでは[may/might/should/ought to+完了]の型は、過去時のことを述べることに加えて、現在時、未来時のことを述べる場合があるとしています。 [法助動詞+完了]について、学校文法がwill以外の法助動詞が未来のこと述べることには言及がないのと全く記述が異なることが分かります。

 

 【第9章 法】の中の[法助動詞+完了]は、帰結節として用例が紹介されています。基本説明には帰結節についての言及がなく、「条件が現在のことで、帰結が過去のこと」という項目の中に説明があります。

「過去もそうだったが今も変わらずそうである」という「変わらない事実」に反することを、「もし~なら」と条件にし、「過去の帰結」を仮定して述べる場合、条件節には仮定法過去を使い、帰結節には<過去の助動詞+完了不定詞>を使うことになる」 綿貫他『実践ロイヤル英文法』2014

 

 このように、説明としては「過去のことを述べる」とだけありますが、「仮定法過去」としての用例の中に「現在までに完了しているはずだけど」という意味で使っている例を載せています。

 

 11) If they weren't satisfied, they would have copmlained by now.

 

 12) If I were a man, I would have fallen in love with her, too.

  ――綿貫他2014

 

 「法」の章では「仮定法」の帰結節として[would/could/should/might+完了不定詞]とありこれらが互換可能であることを示唆いています。基本説明には帰結節について言及はありません。しかし、説明には無くても、用例11ではby nowと共起し現在までの完了について述べる例を挙げてあります。基本としては[過去形の法助動詞+完了]は「過去の反事実」ととらえているようです。

 

 学校英文法の「仮定法」は今や日本独特のもので、実際には「直説法」に限った時制とは切り離して、別の直線上に置くことを想定しています。

 

【仮定法】 (出来事時)  過去     現在     未来 

条件節       [had done]      [did]         [shoud do]

         (仮定法過去完了)   (仮定法過去)   (仮定法未来)

 

帰結節     [would have done]  [would do] 

                [could/ahoud/mightもwould同様]

 

 このように述語動詞の型を出来事の過去・現在・未来と1対1で対応させ、これを基本ととらえています。しかしこのモデルではとらえきれない多くの‘例外’があり、その用例は学校文法から抜け落ちています。

 

 PEUでは[would+完了]が未来のことを述べる場合があることを取り上げています。

【would have pp】

 We sometimes use structures with would have … to talk about present and future situations which are no longer possible because of the way things have turned out.

13) It would have been nice to go to Australia this winter, but there's no way we can do it.

 

14) If my mother hadn't met my father at a party thirty years ago, I wouldn't have been here now.

   ――PEU2016

 

 状況が変わって、現在あるいは未来のことがらについてもはや実現する見込みがなくなったという場合に[would+完了]を用いることがあるとしています。

 

 日英の「時制・法」のとらえ方の違いは、[過去形の法助動詞+完了]に象徴的に現れます。PEUでは[would/could/should/might+完了]の型はSubjunctive Moodとは言わず、過去時制の法助動詞wouldは現在時制の法助動詞willよりも距離を置いた想いを表し「相対的に実現性が低くなる」というとらえ方をします。「実現性が低い推量」も「非現実」も法moodの違いはなく、過去時制past tenseの一用法ということです。

 

 学校文法の「助動詞」という章(枠組み)の中で「法助動詞+完了」を時間の直線上に置くことが困難ことは次の論文の記述から分かります。

 

「助動詞の後に完了不定詞がきているの形は、それぞれ、(i)過去形、(ii)現在完了形、(iii)過去完了形という、三つの異なる形をとって具現したかもしれない内容が、法助動詞の後に、不定詞形という形の中に押し込められて、生じているため、外形的には互いに区別のつかない「have+過去分詞」という形をとっているのである。このことは、既は、多くの学者によって

指摘されているところであるが、ここでは、Halliday(1970)の例を借り、簡単にみておくことにしよう。次の(20)に示す(a)、(b)、(c)の例は、それぞれ、(21)に示す(a)、(b)、(c)に対応するものである。

 

(15)(a)He must have left yesterday.

(b)He must have left already.

(c)He must have left before you came.

 

(16)(a)Surely he left yesterday.

(b)Surely he has left already.

(c)Surely he had left before you came.

 

 どうして、(15)の(a)、(b)、(c)の完了不定詞が、それぞれ、過去形、現在完了形形、過去完了形に対応するかというと、それぞれの形が、それらに伴っている時の副詞的修飾語句によって、いわば、保証されているからである。」

 安井 稔『法助動詞における時制』1978

 

 「時制」という概念はラテン語の動詞が屈折(語形変化)によって述べる時間を表示することからきています。英語と同じく孤立言語と言われる中国語には語の屈折が無く、語形変化によって時間を表示するという文法的仕組みはありません。時間の表示は動詞の屈折という手段ではなくても、時を示す語句でも可能です。

 

 従来の英文法が理想としてきたラテン語文法の「時制」という借用語がもとらす先入観を一旦忘れ、述語動詞の型について英語本来の言葉が伝わるしくみとしての機能を考えてみましょう。

 現代英語は屈折を失い、代わりに発達した機能語(辞)will、have、-ed、-ingなどを配列して述語句VPの型を形成します。安井1978では、時間を表示するのはyesterday、already、before you cameなどの副詞的修飾語句であることを述べています。副詞類で時間を表示するのなら、述語動詞の型で表示するのは二度手間です。現代英語の述語動詞VPの型tenseが、時間timeを表示するという単機能であるなら、機能語、機能辞が発達していることが不思議に思えます。

 

 述語を形成する機能語(辞)のそれぞれのコアイメージは、大雑把に捉えて概ね次のようなものと考えてみます。無標(原形)のhaveは「現に在ると感じる状態」、法助動詞willは「想い(確実という認識)」、分詞形成標識-ingは「期間が限定された持続的動的な状態」、過去または過去分詞形成標識-edは「距離を置いて遠くに在る静的な状態」といったところでしょう。

 この中でhaveという機能語と-edを配列した構成が完了相です。「現に在る」と「遠くに在る」の組み合わせと考えれば遠近の対になります。これを時間にあてはめると「幅のある」ということになるでしょう。現在完了[have+-ed]は、「過去にあったことが今に影響している」とか「いまよりも以前のこと」などを表現します。過去完了[had+-ed]は、「現実からさらに遠く離れる」、「現実から離れた過去」、「過去よりも以前」などです。「will+完了」では時制変化するのは法助動詞willなので、完了相自体は特定の時間を示しません。

 

 安井1978の法助動詞と時間表示に関する記述を要約して紹介します。

 

(17)(a)Jim may have left early.

            (ジムは、早く出発したかもしれない。)

        (b)Jim might have left early.

             (ジムは早く出発したかもしれない。)

 

 (17a)は、「ジムは早く出発した」という過去の命題内容に対し、それは、ありうることであるというコメントを、話し手が、話し手の現在時のものとして、述べているものである。(17b)のmightは、mayを用いた場合よりも、確率が低いことを示しているだけである。それだけ、(17b)のほうが、慎重で控え目な表現になっているということはあるが、それ以上のことはない。

 (17b)の形が、いわゆる仮定法過去完了と呼ばれる条件文の帰結節に用いられる場合にみられる。見逃されやすいのは、(17b)におけるmightの用法は、仮定法におけるmightの用法ではない。

  例えば、Hofmann(1976,P・94)は、He may have come yesterday. などの例を挙げたすぐ後で、mightやeouldの形は、「事実に反する仮定」(counterfactual subjunctive)のためにとっておかれる(are reserved for‥.)と述べ、(17b)における、極めて普通の用法を無視しているのは、明らかな見落としである。」

        安井 稔『法助動詞における時制』1978

 

 「きわめて普通の用法を無視し、明らかな見落とし」しているという指摘は、そのまま今日の学校文法の法助動詞の記述に当てはまります。willを「未来を表す表現」の1つと位置づけ、[will+完了]を未来完了と呼びます。しかし実際には、[will+完了]が過去についてのべることがあります。その用法は、伝統文法を基づく3時制モデルを広めたNesfieldさえ用例を挙げるほど普通の用法ですが、学校文法は無視するかあるいは明らかに見落としています。

  学校文法はラテン語を理想とした標準語の言葉使いの規則をもとに学習文法に転用したものです。「時制」というラテン語の動詞を説明するための概念を現代英語にあてはめて、述語動詞の型をtenseとみなし時間timeと1対1で対応するように直線上に並べたNesfieldモデルを採用しています。[will+完了]が未来のことを述べる用法を「時制」という単元でとりあげ、[would+完了]が過去の事実に反することを述べる用法を「仮定法」という別の単元でとりあげます。使用実態に反して、[will+完了]を未来時に対応させ、[would+完了]を過去時に対応させているわけです。

 

 科学的文法は、述語動詞の型が実際に使われる用法を観察して分析し、英語本来の言葉が伝わる仕組みを説明する体系を示します。[will+完了]と[would+完了]では、wouldがwillよりも現実からの距離が遠いことを示しているだけで、述べる出来事時に違いはありません。その本質な違いはwillが「確実性」を示し、wouldは確実性が下がることを示します。この2語の関係は安井1978が指摘するmayとmightの関係と同じです。

 英語の述語動詞の型は、時間を表示するという単機能ではありません。遠近の距離の置き方の違い、静と動の動き方の違い等を示す機能語を組み合わせて、のべることがらに対する話者のとらえ方を表現するようにできています。空間的に捉えれば現実から非現実までを表すことになり、時間的に捉えれば瞬間的なことから永続的なことまでを示すことになります。

 

 直線上に過去時、現在時、未来時と配置するNesfieldの一次元3時制モデルは、「法」、「法助動詞」を切り離して、直説法だけに限定すれば一見分かりやすいので学習文法に受け入れらてきました。しかし述語動詞の型をひとつながりの体系としてみると矛盾が生じます。

 PEU では[will/would/may/might/should/ought to+完了]について、過去時・現在時・未来時を問わす述べることを示しています。序文には「標準英語の書き言葉として正用とされる表現」を取り上げる旨を述べているので、特に非標準という注釈が無く紹介されているこれら[法助動詞+完了]は標準として容認されていることになります。

 述語動詞に型と出来事時は1対1では対応しないので、それぞれを別の軸とすると二次元の平面になります。「時制」「法」「法助動詞」としてバラバラに示された[法助動詞+完了]の型を、集めて体系化したモデル図で示します。今回紹介したwill、would、may、might、shouldについて、各用例を述べている出来事時ごとにその番号を書き入れます。青字で示している用例は綿貫2014が取り上げた用例です。

 

【述語動詞の型】  過去  現在  未来 (出来事時)

will+完了     (2)        (3)      (1)

would+完了         (12)      (11)  (13)

 

may+完了            (4)        (7)      (8)

might+完了          (5)       (7)      (8)

 

should+完了        (6)      (11)     (10)

 

 (注)用例11は[would+完了]をby nowともに使用した例ですが、綿貫2014では「仮定法」の帰結節でwouldとshouldの互換性を認めているので、[should+完了]もby nowと共に用いることを示していると解せます。

用例(7)は [may+完了]を現在時に、(8)は[might+完了]を未来時使用した例ですが、PEUではこの2語はどちらもpresent、futureのことを述べると説明しているので、それぞれ互換できます。

 用例(10)は[ough to+完了]を未来時に使用した例ですが、PEUではshouldとought toはどちらもby now または at a future timeを述べると説明しているので、shouldと互換できます。

 

 このように二次元のパラダイムで見ると、[法助動詞+完了]の型は、特定の出来事時を示すのではないことが分かります。[will+完了]と[may+完了]の違いは、willは確実「きっと」を意味しmayは不確実「起こるかもしれないし起こらないかもしれない」を意味するという話者の確信度の違いです。

 使用頻度として[will+完了]は未来標識としての使用が高く、その他の[法助動詞+完了]は今より以前のことを述べる用法の使用頻度が高いことは確かです。頻度が低いからといって実際に使われている用法を体系から排除して、一次元3時制モデルで説明するのに都合がいい用例だけを取り上げるのは学習者の利益にかなうとは思えません。

 述べる時間を基本として体系化しようとする試みは、多くの例外を生み、それらを排除して章立てをバラバラにして説明するという結果になっています。その体系化とは程遠い現状が、[法助動詞+完了]の扱いに象徴的に現れています。

 

 認識的用法の法助動詞は一般に、ことがらが起こる(起こった)かどうかの確信度の違いを示すために使い分けることを基本とします。現代英語の述語動詞の型を体系的にとらえるには二次元モデルが適しています。学校文法で取り上げている用例に、そこから排除されている用例を集めれば生きた用例にあたるための地図になります。二次元モデルをもとに実際に使われる用例を集めれば、それらは一つながり、ワンピースであることが分かるでしょう。