otherはもともと「他の」「別の」「残りの」という意味の形容詞です。つまり、本来はother oneのように名詞を修飾する限定用法として使う語です。そのことは、下の5つのうち、単体のotherだけが主語にすることができないことから分かります。

 

  other    another    others     the other    the others

 

 言語学では、otherを除いた4つはa-、-s、theという標識があるので有標と言います。それに対してotherには標識が無いので無標と言います。これらの標識は、無標の内容語otherを名詞化していると考えることができます。

 

(ピーターセン2010)には次の記述があります。

さて、theとaの基本論理をどう見ればいいのか、考えましょう。まず、「名詞があって、そこにtheを付けるか、aを付けるか、それとも、何も付けないか、文法にのっとって決定する」というような捉え方をやめましょう。それは英語の現実からかけ離れた、無意味なものなのです。

 話すときも、書くときも、先に出てくるのは冠詞のほうで、そして、その冠詞に名詞が付きます。

マーク・ピーターセン『日本人が誤解する英語』2010

 

 例えば、givenという語はもともとgiveの変化形である過去分詞として使う語です。ところが、a-、-s、theという標識を使ってa givenやthe givensのように、有標にすると、名詞として使うことができます。

 辞書にはgivenは名詞としても載っていますが、もともと名詞だったわけではありません。givenという‘名詞’にa-、-s、theが‘付く’わけではなく、これらの機能語が標識となってgivenという語を名詞化するととらえることができます。

 

 無標のotherはもともと形容詞として働く語です。だから単体では主語として使えないのです。名詞にaやtheが‘付く’のなら、形容詞のotherにこれらの語が‘付く’というのは不自然です。a-、-s、theという語群が「名詞に付く」というとらえかたは止めましょう。

 

 英語は歴史的に古期から中期そして現代にかけて、多くの基本語がかつて豊富だった屈折を失い無標となり品詞という文法性が曖昧になります。単語の品詞が曖昧になった英語は、語順が固定化し機能語を発達させて、語の配列と、機能語という文法標識を新たに語の文法性を示す手段とする言語へと変化します。

 現代英語は、単語自体の語形(屈折)ではなく、語の配列と機能語という文法標識によって単語の品詞を示すのです。機能語a-、-s、theは、無標で品詞が曖昧な内容語に名詞という文法性を与える文法標識という機能を持つととらえることができます。

 

 無標のotherは本来形容詞です。だからother oneのように他の語を修飾する語として働きます。oneは代名詞として使われ主語になりますが、otherは単独では主語としては使われません。

 これに対して有標のanotherother the otherthe othersは主語として使えます。これらの語句はもともと代名詞だったのではなく、文法標識a-、-s、theによって無標のotherに名詞という文法性を与えられた語句の体系としてとらえるのが合理的です。

  otherに関連する語句の使い方を体系的に理解するには、文法標識a-、-s、theの文法機能を明確にすることが有効です。

 

 改めて、これまでには注意されていなかった標識aとtheの文法機能を根本から考察していきます。このように新たな視点から見直しをする場合、従来の見方によれば‘例外’のように見える現象を取り上げ、それを取り込んだ一貫した原理を探すという科学ではよくある手法を使ってみるのもいいでしょう。

 本来は特定されているとされる固有名詞と共起する標識aとtheの用例から、この2語の文法機能を探ります。

 

A Brown wants to meet with you.

 「Brownという人が会いたいそうです」

 

2)Here, there are two Browns.

  Please allow the Brown here to enter first.

 「ここにはBrownさんが2人います。では、こちらのBrownさんからお先に

  どうぞ」

 

3)A "Are there anyone qualified?"

  B "There's Brown."

  A「だれか適任者いる?」

  B「Brownがいます」

 

 Brownという固有名詞に注目します。用例1、2では、いずれも標識a、-s、theを使っているので有標です。これに対して用例3のBrownは無標です。この違いを探る視点は、話し手が聞き手と共有している情報の違いです。

 有標のa Brown、Brwonsthe Brownに共通しているのは、話し手と聞き手の共有情報にもともと複数のBrownがいることを前提としていることです。

 用例1の「ブラウンという(名前の)人」は世の中に何人もいます。だからそのうちの不特定の1人として標識aを使っていると考えられます。

 用例2のtwo Brownsは「ブラウンという(名前の)二人」ですが、同じく何人もいるうちの二人です。The Brown (here)は、2人いるBrownのうちこちらのBrownさんと1人特定しています。もともと複数いるからこちらの方というように特定する必要があると言えます。

 これに対して用例3は無標のBrownを使っています。先ほどの有標の3つと異なるのは、会社の中にBrownさんが一人しかいないとうことです。話し手と聞き手の共有情報が唯一の場合は改めて特定するまでもなく自明なので標識は要らないのです。

 

 決定詞といわれるaやtheなどの使いかたで重要なのは、話し手と聞き手の共有情報です。「みんなで一斉に指させるものにはtheが付く」とか「世の中に唯一のものにtheが付く」というのはどちらも偽の命題です。火星Marsは世の中で唯一の星で、みんなで一斉にさせますが無冠詞です。創造主としての唯一神を信じる人は、Godと無冠詞です。

 一人息子はSonと呼べば特定されるので冠詞やその他の決定詞は要りません。しかし、複数の家族がいてそれぞれに息子がいる場合は「他と区別して」my sonと言います。

 もっとも、一人息子で家庭内であっても特別な感情をこめてmy sonということはあります。それは決定詞myの「他とは違って」というコアから「他とは違って特別」という意味を込めて任意に使っていると考えられます。決定詞は必要があって「単に他と区別する」という場合もあれば、任意に「他と違って特別」という意味で使う場合もあるという点も押さえておきましょう。

 

 決定詞の文法機能として重要なのは、話し手と聞き手との共有情報で初めから唯一と認識されていれば、特定するための標識は不要だということです。標識theは複数あるもの中で「他とは違って」という区別がコアにあることが分かります。

 文法標識a-は複数あるものの中の不特定の1つ、-sは複数あるものの中の不特定の複数であることを示します。theは複数あるものの中で他とは違う特定の1つまたは複数であることを示します。

 

 以上の考察をもとに、以下の語句の用法を見ていきます。

  other    another    others     the other    the others

 基本的に無標のotherは「別の」「他の」「残りの」という形容詞で、oneなど他の語句を修飾することを想定する語です。otherは代名詞として働くことは無いので、今後変化しない限り、単体で主語として使いません。

 another, othersは、それぞれ標識an-、標識-sが持つ内容語を名詞化するという機能により、代名詞として働くことができます。これらは元のotherの「別の」「他の」というコア以外に、標識an--sによって、いくつかある中の特定しない(特定する必要がない)という意味に限定されます。

 the other(s)は、標識theが持つ内容語を名詞化するという機能により、代名詞として働くことができます。元のotherの「別の」「他の」というコア以外に、標識theによって場合に使います。the other(s)は、「その他の残りの1つ(全部)」を意味する場合に使います。このときのtheは結果として残りすべてと特定されるために慣用的に使っていると考えられるので、基本的に特別感はありません。

 

 これらの語の用法で重要なのは、My sonのの例で示したように、規則ではなく文脈によって選択的に使うことがあるという点です。単文の用例を見るより、生きて使われる文脈の中で用法を探るのが実践的であり有用です。

 

 物語『リトルマーメード』(Little Fox)の登場人物に注目して、さらにその用法を掘り下げていきましょう。

 

One princess made her flower bed in the shape of a whale.

    Another princess made her garden in the shape of a shell.

  The sisters filled their gardens with odd things they found in sunken   ships.

     But the little mermaid's garden was simple.

     …

  While her sisters played in their gardens, the Little Mermaid sat   quietly in hers.

                   『The little Mermaid』Little Fox

 

   「ある王女は、自分の花壇を鯨の形に作りました。

    もう一人の王女は、自分の庭を貝の形に作りました。

     姉妹たちは、沈没した船から見つけた奇妙な物で庭を埋め尽くしました。

     しかし、リトルマーメイドの庭はシンプルでした。

     …

       姉妹たちが庭で遊んでいる間、リトルマーメイドは静かに自分の庭で座っていま 

       した。」

 

 人魚姫は6姉妹で、主役のリトルマーメイドは末っ子です。上の用例にあるone princess、another princess、the sisters、her sistersはいずれもリトルマーメードの姉たちのことを言っています。

 これらの表現に共通しているのは、一人ひとりについては特定していないことです。物語の中では脇役だからです。one、anotherは特定できないから使うのではなく、あえて特定しない表現として選択して使っていると考えられます。

 

 物語の筋の中で、一人ひとりに焦点を当てることが必要なら、特定する表現を使います。

 

5)As each mermaid princess reached her fifteenth birthday, she was   allowed to swim to the Upper World. Before her journey each sister 

  promised to tell the others what she saw the next day.

  When the eldest princess turned 15, she spent her time close to   shore.

   “I lay on a sandbar in the moonlight and gazed at a distant town,”

    she told to her sisters.

    “The houses' lights twinkled like stars. Bells rang from a large

      house  with a tall tower.”

     The nest year the second sister came up to the surface at sunset.

     “The sky and the water glowed gold and red,” she said. …

                                                          『The little Mermaid』Little Fox

 人魚姫は15歳の誕生日を迎えると、地上界に泳いでいくことを許されました。

 旅立つ前、姉妹たちはお互いに見てきたことを次の日に伝えることを約束しまし

 た。

 最も年上の姉妹の王女が15歳になったとき、彼女は海岸に近い場所で時間を過ご

 しました。

 「私は月明かりの中で砂浜に寝そべり、遠くの町を見つめたの」と彼女は妹たちに

  話しました。

 「家々の明かりは星のようにきらめいていたわ。高い塔のある大きな家からは鐘の

  音が鳴り響いていたの」。

  その翌年、2番目の姉妹も夕焼け時に水面に上がってきました。

 「空と水が金色と赤色に輝いていたの」と彼女は言いました。……

 

 この用例にあるthe othersは、15歳の誕生日を迎えて地上界を見てきた1人を除く他の残りの姉妹みんなを表しています。このtheは、用例4でリトルマーメード以外の姉妹をthe sisters、her sistersと表現していたのと同じです。用例4ではthe、herはリトルマーメードを受けています。

 同じように用例5のtheはeach sisterを受けていると分かります。6姉妹は年に一人ずつ地上階に行くことになるので、残っている5人は都度変わります。the other(s)は「残りみんな」を表します。その他の人という慣用で使うてぇ

 一番目、二番目と年ごとに地上界へ行く人魚姫は、それぞれthe eldest princess、the second sisterという表現で一人ずつ特定して紹介し、それぞれが見てきた地上界の様子を描写していきます。用例4でone princess、another princessとしていたのと比べると、その表現の仕方が異なります。

 one、anotherのように特定しないのかthe eldest、the secondのように特定するかは任意であることが分かります。特定できるかできないかという規則ではなく、文脈に応じて一人一人に焦点をあてるかあてないのかによって表現を選択しているのです。

 

 次の用例はリトルマーメードが地上界に行って、船上にいる王子様を見つける場面です。

 

6)“Oh, how handsome,”she thought.

     Her eyes followed him as everyone went up on deck.

   “We remember when you were born, dear Princes, 16 years ago,”

 said a woman with a blue feather in her hair.

   “He is a prince!”exclaimed the Little Mermaid.

 Another guest said,“With your kind heart, you'll be a great king 

 some day!”

                    『The little Mermaid』Little Fox

 「ああ、なんてハンサムなのかしら」と彼女は思った。

  皆が甲板に上がっていく中、彼女の目は彼だけを追っていた。

 「私たちは、16年前にあなたが生まれた時を覚えているわ、親愛なる王子様」と、

  髪に青い羽飾りをつけた女性が言った。

 「彼は王子様なの!」と人魚は叫んだ。

  別の乗船客が言った。「あなたのような優しい心を持っていれば、きっと立派な

  王になられますよ!」

 

 ここに登場する王子様に話しかける二人の女性は、それぞれa woman、another guestと表現されています。この場面はリトルマーメードが王子様をはじめて見つける場面なので、二人の女性には焦点をあてていません。

 ただし、a womanと表現された女性は青い羽根飾りをしていると描写されています。これは後で出てくる伏線になっています。

 

 次の用例は、王子様が乗った客船が嵐に遇って沈んでいく場面です。 

 

7)Some of them were thrown into the sea.

    Others jumped from flaming decks.

   “Help! Help!”they screamed as they fell into the water.

    The Little Mermaid saw the woman who wore the blue feather 

    holding onto a table leg.

    A man was trying to swim to shore.

   “Save me!”cried one guest.

   “I don't want to die,”cried another.

                                                           『The little Mermaid』Little Fox

 中には海に投げ出された人々もいました。

 炎上する甲板から飛び降りた人々もいました。

 彼らは海に落ちると、「助けて! 助けて!」と叫びました。

 人魚は青い羽飾りを身につけた女性がテーブルの脚にしがみついているのを見ま

 した。

 一人の男性が岸に向かって泳ごうとしていました。

 「助けて!」と1人の客が叫びました。

 「死にたくない!」と別の人が叫びました。

 

 some、othersは「~する人もいれば…する人もいる」というような訳として、文法書の例文にもよく出ます。some of themという表現からも分かるように複数の人の中の不特定な人々を表しています。

 この場面では単数複数の別はありますが、one、some、another、othersはいずれも複数いる人たちのだれかであって特定しない表現です。これらは沈みゆく船での人々の様子を描写することが第一なので、個人には焦点を当てないように表現を選んでいます。

 ただ一人だけ、リトルマーメードが目撃する女性をthe womanと特定しています。王子様と話をしていた青い羽根飾りをつけた女性です。王子様の身にも同じようなことが起こっていることを想起させるために一緒にいた女性が遭難している様を描いています。王子様は登場しませんが、the womanと表現して、この女性に焦点をあてるのには意図があるわけです。物語を書く上での技巧として表現を選んでいることが分かります。

 

 次の用例は王子様に会いたいリトルマーメイドが、地上の王宮への行き方を知っている人魚を探し出して訪ねる場面です。

 

8)“Please take me there,”begged the Little Mermaid.

  “We have no legs to walk to his door, ”the other mermaid said.

                   『The little Mermaid』Little Fox

  「お願い、私をそこへ連れて行ってください」と、リトルマーメードは懇願し

  ました。

  「私たちは足がないので、彼のドアまで歩くことができません」と、その人魚が

  言いました。

 

 この用例は二人で話しています。the other mermaidは話を聞きに行った相手の人魚を指しています。この人魚は主要キャストではないので、(リトルマーメードではない)他の人魚という表現を使っています。二人の場合に、それぞれをone、the otherと表現することはよくありますが、それは規則ではありません。the otherは「他に残りがいない」ことを示す言葉で、oneに限らず特定の人がいて、「その他の人」というように使うこともできることが分かります。

 

 この時、theに注目します。the little mermaidに使っているtheは「他とは違って」という意味合いが強く、特別に焦点をあてる表現として使っている考えられます。ところが、the other mermaidの方のtheは慣用的に使われているだけです。つつまりanotherは「他にまだ残りがある」場合でthe otherは「他に残りがない」という場合に使うという慣用による使い分けです。

 例えば、willにもI’ll show you.のように慣用で決まりきった言い方をするだけの場合もあれば、I will always be with you.のように強い意志を表す場合があります。同じようにtheにもthe sea、the skyのように慣用で使う場合もあれば、the womanというように個に焦点をあてる意図で使う場合もあるということです。

 

 次の用例はLittle Mermaidが慕う王子様が遭難し、彼女が助けて海岸へ運んだ後の場面です。そこへ4人の人間の娘たちがやってきたので、気を失ったままの王子様を残して彼女は岩陰に隠れて様子を見ます。ポイントになるところだけを抜き出して引用しています。

 

9)Out of the large doors came a group of young girls.

  ……

 “Look!”shouted one girl to her friends.

  Although she was dressed like the others, she was more beautiful. She had big green eyes and long, dark lashes.

 ……“

10)Oh, Maiden, what have you found?”called one girl.

 ……

 “Come inside to get warm,”said Maiden. She led him toward the church. 

 The others followed and then disappeared through the big doors.

                   『The little Mermaid』Little Fox                            

 大きな扉から一団の若い女の子たちが出てきました。

 ……

 「見て!」と一人の女の子が友達に向かって叫びました。

 彼女は他の子たちと同じような服装をしていましたが、他の子たちより美しかった 

 のです。彼女は大きな緑色の目をしていて、長くて黒いまつげでした。

 ……

 「おや、Maiden、何を見つけたの?」と一人の女の子が呼びました。

 ……

 「中に入って暖まりなさい」とメイデンが言いました。彼女は彼を教会の方へ案内しま

 した。他の子たちは続いて、そして大きな扉をくぐって消えました。

 

 用例9では、海岸へやってきた4人のうち、最初に王子様を見つけた少女はone girlとして登場します。そのあと、他の少女たちをthe othersと表現する一方で、彼女の際立った容姿が説明されています。この少女はこのあと(用例10)でMaidenという固有名詞で呼ばれます。リトルマーメードの恋敵になる重要人物なのです。

 

 用例10では、Maidenに話しかけた少女もone girlとして登場します。しかし、この少女はこのあともMaiden以外の人the othersの中の一人です。この場面以外には登場しないので、特定するような表現を使っていません。

 

 ここで注目したいのは、同じone girlでもそれぞれの意図は異なるということです。王子様を見つけた少女one girlの方は、初登場の人物は不特定のaやoneを使うという慣用によるものです。物語の冒頭で「昔々あるところに少女が住んでいました」というときは、主役であってもa girlのように表現されるのが普通です。Maidenは主要キャストですが、one girlとして登場するのは、慣用に従った自然な表現です。これに対して、あとで登場するMaidenに話かける少女は、あくまでも他の少女たちの不特定の一人という意図でone girlと表現されています。

 

 以上みてきたように、一般に、one、another、others、the other(s)は物語ではいずれも脇役に使う言葉です。初登場のときの自然な表現として使うこともありますが、基本的には、大勢いる中の誰か一人、他の誰か一人、その他大勢、その他残りの一人、その他残りみんなという焦点をあてる必要がないものに使うと考えましょう。

 特に焦点をあてたい人物は、Maidenのような固有名やthe woman、the LIttle Mermaidのように他と区別して特定する意図でtheなどの決定詞を使って表現します。それら慣用的に使う場合は別として、話の筋の中で個に焦点をあてたい人物には、その表現の1つとして標識theを選択的に使うことが分かります。ただし、the otherのtheには特に焦点をあてるという意図はなく「残りがいない」ということを示すために慣用で使っているだけです。

 

 これを一般化すると、複数のものを紹介するときには、個に焦点をあてない場合と、個のそれぞれに焦点をあてる場合があるということです。

 主に個に焦点をあてないとき、one、another、the otherなどを使う

 主に個に焦点をあてたいとき、the first、the second、the lastなどを使う

 

 この使い分けは原則であって、必ずこのように使い分けるというわけではありません。紹介の仕方は一様ではないということです。

 other、another、others、the other、 the othersは、一定の規則に基づいて使いますが、根本的には決定詞という体系の中の表現として一貫した原理をもとに見ることが良いのではないでしょうか。

 

 最後、この物語のEndingで出てくる、The Maidenという表現を紹介します。

  

 Maidenは物語の中の主要キャストの一人で他にはいません。物語の中では基本的に他と区別する必要はないのでMaidenと無冠詞です。このtheは、一人息子を家庭内で呼ぶときあえてmay sonというのと同じで、とくに焦点を当てる意図をもって使っていると言えます。この物語のendingではすべての主要キャストにtheを使って紹介しているのです。

 

 言葉は、規則に従って使うものではなく、事実や想いを伝えるものです。従来の文法説明はこの視点が不十分であるように感じます。このブログでは、文法は規則ではなく、適切な表現を選択するために参照するものとしてとらえています。

 少なくとも、これまでとは異なる観点から文法を見なおすと、従来とは違う発見があるものです。今回取り上げた、特定、不特定が問題になるような表現は、慣用などで決まる場合もありますが、意図をもって選択的に表現を使うという見方をすることも大切だと思います。