現行の学校文法では、Aren’t you…は教えるけれど、Are you not…はほとんど扱わない。しかしNgramではAre you not…の方が使用率が高くなっている。その理由を生成AIに尋ねてみる。
【生成AIの回答】
結論から言うと、Are you not の方が Ngram で多く見えるのは、「話し言葉の実態」ではなく「書き言葉の歴史」が強く反映されているから。
Ngram が使っているのは、書籍(本)、論文、公文書、文学作品、古典・宗教文書などで日常会話・口語表現はほぼ入っていない。ネイティブが日常で何を言うかではなく「印刷された英文で何が使われてきたか」を見ている。
18〜19世紀の英語では、縮約形(aren’t, isn’t, don’t)が「くだけすぎ」「低俗」扱い正式な文では Are you not / Is it not が標準。
Ngramは縮約形を不利に扱う。縮約形には、アポストロフィがある、OCR(文字認識)で誤認識されやすい、版によって表記が揺れる(aren’t / arent)という弱点がある。aren’t you が実際より少なくカウントされる。
――ChatGPT
Google Ngram Viewerでは‘Aren’t you’と短縮形を入力すると‘Are not you’に変換するので使用率は実態を反映しているとは言えない。そうはいってもAre you not…?という型の文は使用されている。
この2つの型の使い分けを生成AIに尋ねてみる。
【生成AIの回答】
Aren’t you … ? はくだけている会話では圧倒的によく使う。
Aren’t you tired?
疲れてるんじゃないの?(=たぶん疲れてるよね)
Aren’t you coming with us?
一緒に来るんじゃなかったっけ?
話し手は「Yes(そうだ)」を期待してることが多い。
Are you not … ?はフォーマルで書き言葉寄り。
Are you not responsible for this?
これは君の責任ではないのか?(=責任あるよね?と圧をかけてる)
Are you not aware of the risks?
リスクを理解していないのですか?
日常会話で使うと冷たい・怒ってる・皮肉に聞こえやすい。
――ChatGPT
現代の「学校文法」では否定疑問は短縮形を使ったAren’t you…を教えるが、Are you not…は扱わない。しかし、19世紀のEnglish Grammarでは、短縮形は不適切な表現として矯正の対象になっていた。
当時の教科書HARVEY1870の記述には、Isn't she beautiful?を訂正するよう求めていた。その項目の注意を以下に引用。
Caution IV. — Avoid all improper contractions; as, it's for it …isn't or aint for is not…
『Harvey's English grammar』1870
注意事項4 ― 不適切な短縮形はすべて避けなさい。たとえば、it's を it is とする、is notをisn'tやaintとすることなど(しんじ訳)
つまり、短縮形は避け、Is she not beautiful?とするのが正用と教えていた。現代でも短縮形を使用しない否定疑問文は使われている。子供が対象のアニメの用例。
Gazelle“Did you not get some money for the bits and bobs”
――Peppa Pig The children's fete
ガゼル先生:「小物雑貨を売って、お金をもらわなかったの?」
学参では、「否定疑問文」は短縮形を使った表現しか教えない。『真・英文法大全』2023では、633~635頁取り上げているのはDon’t you…?、Aren’t the cat…?、Didn't you…?という短縮を使った型だけ。Did you not…?の型については言及はない。
Ngarmでの使用率は以下の通り。
2つの型の文の使い分けを生成AIに尋ねてみた。
【生成AIの回答】
Didn’t you … ?
カジュアル/会話的/感情が乗りやすい
話し手が「そうだったよね?」「〜したはずじゃない?」
とある程度そうだと期待して聞いている感じ。
例
Didn’t you say you were busy?
(忙しいって言ってなかった?)
Didn’t you go to Tokyo last week?
(先週東京行ったんじゃなかったっけ?)
軽い確認・驚き・ちょっとしたツッコミに使われやすい
口語ではこっちが圧倒的に多い
Did you not … ?
フォーマル/書き言葉寄り/論理的・強調
「あなたは〜しなかったのですか?」と事実確認を強めたいとき
書類、討論、皮肉、強い詰問などで使われることが多い
例
Did you not read the instructions?
(説明書を読まなかったのですか?)
Did you not promise to help?
(手伝うと約束しませんでしたか?)
責め・皮肉・強調が含まれることが多く、日常会話で使うとちょっとキツく聞こえることも。
――ChatGPT
「英文法」にはたった1つの正しい答えを示す規範の発想が色濃く残っている。新旧表現に対して「英文法」は、新表現の勃興期は「旧表現を正用、新表現を誤用」とする傾向があり、新旧交代が進むと「旧表現は古風、新表現が普通」と記述を変える。要するに、標準語の規範はみんなが同じ表現を使うことを志向するからどちらか一方を正用とすればいい。「正しい規則とその例外」というフォーマットは、世代や地域や使う場によって変化するありのままの言語の有り様を描くのには向かない。
「伝わる仕組み」から見ると、新旧表現の違いは一般に文体の違い。どちらか一方が正しいのではなく、場面によって相応しい表現を選んで使う。
旧表現は文語的で堅い表現。新表現は口語的でくだけた表現。Are you not…?は旧表現でAren’t you…?は新表現だから文体の違いと見ることができる。もう一つの観点は、「客観的事実を示す」表現が「主観的想い(意向・判断・配慮)」へ変化するという法則。同じAreで始まる疑問文でも、旧表現Are you not…?は「~ではなかった」という事実を確認する表現で、一方で新表現Aren’t you…?は配慮を示す表現。

