このサイトから世に送り出した「ファンタム式パナ改マイク」はセパレート型のFetⅡ 系と一体型のFet3 があり、第一級音質の業務用ハンドメイドマイクとして多くの支持を集めるに至っております。
製作の可否はXLRコネクタ収納の問題により、基板作りにかかっていることがお分かりいただけたと思います、ちなみに現状、基板製作難易度がさらに高いFet3 の製作はまったく見かけません。
ここではもっとも製作例の多い、また皆さんがいろいろな点で苦労されている「FetⅡ」 の基板作りと、パーツ選びのノウハウについてご説明します。
使用部品が違います。
心構えいただきたいこと
「超小型電子回路」の自作は普通の自作意識では無理なことは前編でご説明した通りです、まずそれを意識しないかぎりfetⅡの製作はできません。
つまり「小さく作る意識」はまずパーツ選びから異なりますのでそのノウハウからご案内します。
とにかく小さく 小さく 小さく 小さく 小さく
次の2つは2019年10月現在、もっとも推奨できる回路です。
2つの回路の違いはECM電源のデカップリングコンデンサ有り無しだけです。
2つの回路の違いはECM電源のデカップリングコンデンサの有無だけですが3dB程度の感度差と高域の表情が変わります。
コンデンサの追加でわずかゲインが上がり高域がやや伸びます、またその表情も変わります。
これは好みの問題で、どちらを選んでも良いでしょう、ちなみに筆者はファットな前者を好みます。
どちらを選んでも高品位なFetⅡの音ですので、回路1で製作して、ケミコンを仮付けで付けたり外したりしてどちらが良いか決めるのが良いと思いますが、それが適正に入るかも課題です。
このあたりがマイクロホン回路は決して理屈や物理特性の良しあしでは決まらない所以だと理解しています。
仮に回路理論と物理特性の理想を追及した結果のみで作ったマイクロホンがあるならば、それは実につまらないものになることは古今東西、内外で実証されてきた通りです。
これこそが脳の働きによる「音響心理」と「音楽脳」の真骨頂でしょう。
「物理特性」は単なるプロフィールであり、一聴した結果とは説得力が全然違うことだけは肝に銘じたい.。
実は これまで、また今でも皆さんの作例をずっとネット上で見せていただいております。
また、ご質問もいただきますがみなさん、かなり苦労されているようです。
この他愛のない回路ですが「XLRコネクタ内に入り切らない」、またはギリギリ押し込んだが「とても他人に見せられない」というものが圧倒的に多いのです。
特に適切な抵抗を使用されている例は見たことがありません。
「いつも買う店に無い」ということが大きな原因だと、今回記事を書くうちに私自身はじめてわかりました。
中にはXLRコネクタに収めることをあきらめてしまった方もおられますが、このマイクの特徴と価値はXLRコネクタ収納そのものにあるといって過言でありません。
したがって「別箱」に基板を入れるなど本末転倒だと理解しています。
たとえ手製であっても、出来あがったマイクは公平に他人が説明なしに使えることこそが最低スペックではないでしょうか。
私の部品と同じものを、いっさいアレンジすることなしにそのまま作れば間違いなく成功します。アレンジすることが敗退の原因のようです。
2010年当時から比べるとかなり整理されているものの、基本は変わりません。それでも部品点数から考えると結構な物量になります。
XLRコネクタに収まらない原因は実に単純明快ですのでこの記事を参考に改善にお役立てください。
特に基本機能が完成していないまま、自分流カスタマイズは厳禁です。
(みなさまの作品の要改善点)
1.特に抵抗のデカさが何より致命的です。
2.リード線 (圧倒的に太い)手持ち線材を使うと失敗する。
3.基板が立派で分厚い(分厚いガラエポで苦労するなら片面紙ベーク基板で十分)
4.ノイトリック(NC3 MXX or MXX-B)以外の代用コネクタの使用。
5.耐圧(Vdss)の低いFET、またはサイズの大きいFETの使用。
6.背丈を低くすることに注力してほしい、めいっぱい低くする。
7.私の配置を踏襲することなく別な配置で頑張っておられる。
しかしそれで4穴×5穴or6穴に楽々おさまりますか?
8.「これでいいや」が失敗の元になっている。
①この配置はShinが10年間、究極行き着いた結果ですので踏襲する
のが早道です。
パーツの足同士をパターンにして、ジャンパー線はGNDの1本の
みです。
②回路図~現物間を見たままに読み替え互換を可能にしています。
これらがクリアされないないまま、夢を膨らませさらにカスタマイズの結果、ますますデカくなった基板の収納に苦しんでおられる。
それは当然です。
使用部品の決定的な違いを見比べてください。
左は皆さんの作例に出てくる抵抗と線材です。右はShinが繰り返して記事でご紹介してきた抵抗と線材の実物です。
おわかりになりますね、これほど違うのです、まず抵抗がデカイ。
まずまともにXLRコネクタに入るはずがないですよね。
だって、4穴×5穴or6穴で完結させることが最低条件ですから。
写真の通り、基板の赤い線から右は空き地にします(ケーブル固定やハード拡張エリア、つまり「夢のスペース」として残しています)。
どちらも47kΩ 1/4W 1% 、同一スペックの金属皮膜抵抗です。
大きいことはよくないことだ、なぜならば、「可能」を「不可能」にしてくれる。
(パーツ入手情報)
抵抗:普通の1/4Wの金属皮膜抵抗ではありません。
千石電商または秋月電子の超小型(ミニサイズ)1/4W型をピンポイント入手しなければなりません。
(ヘタにチップ抵抗を使うより小さくなります)
通販で買うとき 千石電商: 「 金属被膜抵抗器(小型品) 1/4W 」 という品名です。
秋月電商: 「 1/4W小型金属皮膜抵抗 」 という品名です。
共立 : 該当品ナシ
マルツ : 該当品ナシ
aitendo : 該当品ナシ
購入先は上記で選んでください! 「これでいいや」では作れません、迷わないでください!。
いずれも外形はきわめて小さく、写真の通り 1/8Wサイズです。
1本あたり千石:3円 秋月:2円です。(いずれもバラ売りは割高となります)
(2019.10.10 現在)
FET:オリジナルは2SK330-GRですがすでに入手は困難でしょう。
2SK330(Y)が時折入手できたりしましたが、その後完全互換可能なイサハヤの2SK-2880と2881が普通に販売され、助かっています。
ミニサイズFET(東芝 外観「70A」)、Vdss-50V以上の2SK-184や2SK-365などもそのまま使えます。
汎用の定番、2SK30などを無理して使うのは失敗のもとです。
線材:「買い物ついでにテキトーなものを買う」から進化すべきです。
AWG-32(AWG-28位迄ならOK)、皆さんの製作例を拝見するとだいたいAWG-22~AWG-24クラスのかなり太いものが使用されています、それはプリアンプやエフェクター自作用途の定番ですので違います。
リード線サイズへのこだわりを持ってください。
これは取り扱い上のメリットだけでなくカプセルへのハンダ付け難易度の点でも圧倒的メリットとなります。
通販で買うとき AMAZONのAWG表示は経験上まったくあてになりません、失敗します。
必要なのはAWG-28~32の極細のビニール撚り線であることですので「耐熱性・難燃性・架橋ポリエチレン」など高性能表示は無視、何の性能もいりません、必要なのは極細ビニール撚り線であることのみです。(高級指向につられると、これまた失敗が待っています)
40円/m程度以下のはずです、「これでいいや」は絶対だめ、なければ他を探す。
※SQ(スクエアー)表示との読み替えも間違いの元ですので、AWG表示のないモノはパス。
基板:厚さ1.2mmです、1.6mmになるとXLR実装は苦しい。
両面、片面どちらでもかまいません、高級品である必要もありません。
多少大きな適価品(1枚300円以下)をアクリルカッターで穴4列に細切り切断して使います。(基板写真参照)
コネクタ:ノイトリック「NC3 MXX-B」限定です。(NC3-MXXは金メッキではない)
「 ITT-CANON」、「Switchcraft」、「FURUTEC」、「無名旧ノイトリック似」、「AMAZON特価品」と、いろいろ使って見てきましたが、そもそもそれらのコネクターの使用を考えていません。目移りすると「失敗」だけが待っています。
おすすめはこちらです。https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/56125/
理由は「絶対に間違いようがない」、「アキバ価格の2/3である」
このようにパーツ選びにノウハウがあります。半世紀以上秋葉原に通い続けてきた筆者は現物を手にして選べますがネット通販に頼らざるを得ない皆様にはくれぐれもパーツ選びで「冒険」は禁物です。
(関西での部品事情は「共立」程度しか分かりませんが、気をつけるポイントは同じです)
【基板マウントの実例】 (回路1の実装状況)
その結果このように楽々とXLRコネクタ収納ができます。
(特に抵抗の大きさに注目してください)
まず基板、ここでは片面、厚みさえ1.2mmならあとは何のこだわりもいらない。
共通ソース~GNDの1.5KΩなどFETのソースと一緒に挿すなど穴数の消費回避を徹底。
XLRコネクタ 3番の下に大きなスキマがあるのでECM +~GND間にデカップリングの2.2μF~10μF Nichikon MW電解なら脚を上に向けて入り、安定固定できます、Gainと高域が上昇します。こういうのは決して平面的に考えちゃダメ、周囲に触れず、擦らず、基板穴を消費せず。
しかしこんな基板の半田不良がわかりますか?。手持ちルーペを備えてください。
ダイソーの100円くらいのでは2~3倍しかありませんので無いよりまし。倍率が問題になりますので、5倍~8倍程度が経験上使いやすいです。
(またここで15倍、30倍などを選ぶと役に立ちません)
ECM電源+は赤いWIMAの隣に47KΩx2、10KΩの片足づつをハンダで盛り上げて端子を作製、XLRコネクタのGND端子はラジペンで少し丸めて抵抗とのショートを防止した。
ゲートリーク1MΩx2やマイク入力の10KΩ抵抗はこのように裏付け、GND黒線はAWG32使用、抵抗は特に絶縁チューブを使うことも必要ないですが熱収縮チューブを使用する場合は1.5mmではなく1mmです。
(回路2 の場合の実装状況)
ここでもパーツを厳選しています。(Nichicon MW 16V 2.2μF)使用・・・径4mm、高さ5mmのきわめて小さなオーディオ用ケミコンです。別なコンデンサを持ってきても入りません。
低頭のコンデンサの入手がもはや困難な場合は空き地に置くか、または「標準回路1」で十分です。
Fet3 の場合の基板例
回路部はここまで小さくしなければ「Fet3」のケースには入りません、
さすがにここまでやらないと収納できません。
(マイクハウジング)
(参考)
ShinのFetⅡ用、このハウジングにメッシュ加工したフロントグリルを装備して仕上げています。
これだけは門外不出にしていますので申し訳ありません、ご説明はできませんが職人のワザで出来上がっていることはまちがいありません。
この10年間にお一人だけ、北陸の方でこれと完全同一物を自作された例があります。
(フロントメッシュのアリ・ナシ) こんなに見栄えが違います。
(ステンレスメッシュ#60を絞り加工)・・・「メッシュ開口率」の関係によりこれより細かいメッシュは100メッシュまで。加工のしやすさと見た目で60メッシュはジャストだと思います。200メッシュでは音質変化を起こします。
(参考) 1714 :自作マイクロホンのフロントメッシュ絞り加工
【マイクハウジングについて】
①質量を大きくすることで手擦れ音やショックノイズが減ります。
②手で触れたときハムが出たり、触れてないとハムが止まらない、などはシールドGNDを含めたハウジングのEMC設計不良です。
③絶縁された複数の金属ケース構造はEMC理論上必ずハムります。
④私のFetⅡではこのケースフロント部を金属メッシュでデザインしてあります。
⑤ケーブルがよじれてもハウジング内によじれが伝わらない、ねじ切れない工夫された構造が必要です。
⑥専用のタイピンホルダーなどアクセサリーは必須。
さらに小さくするすることはできるけど
回路的にはまだやれるでしょう。
①WIMAのカップリングコンを1個にできる
②ひねればFETも1個になる
③WIMAをやめ、積層セラミック(チップコン)やタンタルコンの道もある。
④Dual-FET の使用例もありました。
また、XLRコネクタ内実装が目的なのでそこまで小さくしてもあまり意味はないと思いますがコストダウンは可能でしょう。
コストダウン、モデファイの鉄則はオリジナルをクリアしてからの話、これは何においても「鉄則」です。
特報
パナソニック WM-61Aをどうしても使いたい方に、Shinさん在庫の「秋月オリジナルパッケージ品」を2個(1袋)限定で安価にて1回のみお分けします。(期限:2019年12月末まで)
◎転売目的と判断できる場合はお断りします。
メールにてご相談ください。
以上ご参考ください。
(お知らせ)
fetⅡ、fetⅡi、fet3、fetⅡ‐bright など、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください (いまや貴重品、秋月のパナソニック WM-61Aとオリジナル・パーツで製作)
モノ作り日本もっと元気出せ!
【おことわり】
★ここで公開している回路・写真・説明文などは音響家の方、アマチュアの方でハンドメイドまたは試験評価なさる場合の参考として考えております。
★製作物・加工物の性能・機能・安全性などはあくまでも製作される方の責任に帰し、当方(Shin)ではその一切を負いかねます。
★第三者に対する販売等の営利目的としてこのサイトの記事を窃用する事は堅くお断り致します。
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