単一指向性マイクは方式を超えてマイクロホン共通の着地点といえます。
【クリスタルマイク】
音創り研究会(アマチュア無線団体)が8月のハムフェアにおいて半世紀ぶりに作りこんだ同会オリジナルの国産クリスタルマイクの販売がおこなわれ、予定数はあっという間に消えていった。
無線ジャンルでは待ち望まれていた出来事であっただけに当日は「抽選販売」、倍率5倍という凄まじいニーズに開発・仕掛け人としては度肝を抜いた。
音創りメンバーによるコスト度外視、ピカピカの絶品マイクにお客様は感激しきり。
音を聴けば「これでもクリスタルマイク?」といわれるほど現代的な音作りだが3~5KHZのピーク帯域をほど良く生かし、後日の無線運用においても絶好音声の情報が次々と伝わってくる。
ティアドロップ(砲弾)型という歴史的な形状、単一指向性マイクが一般化する以前(1950年台)無指向性マイクの極められたデザイン、この完全再現が大いに受けた、「周回遅れ」はもはや「レトロ」などではない。
【単一指向性を求めて】
ある日くだんのクリスタルマイクエレメント、これは煮ても焼いても「無指向性」であるが、「もしかして」と私は暴挙に及んだ。
それは、かつてWM-61Aでも試した事のある究極の荒ワザ。
エレメントの裏側に「穴」をブチ開けることです。
場所は選んだもののドリルでは無理、ミニリューターで切りカスの侵入に注意してやってみた。(C-35が扱いやすい)
結果は見事に「単一指向性」のクリスタルマイクが実現した。
しかし、予想通り400HZあたり以下はまったく出ない「シャラシャラ」のマイクとなってお蔵入りとなっていた。
これにもう1個のエレメントを加え、位相関係を変えたりしながら再度挑戦してみた。位相を合わせて並べてやると一応単一指向性を示すがややブロードである、それにデカイ。
無指向性エレメントを加えると減衰した低域の救済だけでなく、2つのエレメントの向きによって大きく指向性も変わることが判明、さらに配置次第でダイナミックやコンデンサ型と遜色ない特性も確認できた。
WE-639A(B)(鉄仮面)
ところで 1930年台、ベル研究所(Western Erectric)はRCAのパテントを踏まずにリボンマイクで単一指向性を主にした可変指向性の実現方法を探った、悩みに悩んだ結果は下図(写真)の通りRCAのパテントに一切触れずに双指向性リボンと無指向性ダイナミック型ユニットとの合成で単一指向性を主にした「可変指向性」を実現してしまったのです。(可変範囲において「単一指向性」の音は今聴いても絶品である)
このマイクはその後ALTEC社に製造移管され、年代の新しい個体は「ALTEC」ロゴに変わっている。
指向性切り替えが639Aは3ポジション、639Bは6ポジションとなっている。
(US ELECTRONICS誌1940年9月号広告ページ)
(WE-639A(B)単一指向性形成構造)
もとい、これに比べたらたやすい事、とクリスタルエレメントをひねくりまわした。無指向性エレメントと穴あきエレメントとの物理的な位置関係(位相関係)によって音質と指向性がコロコロと変わる。
そしてたどり着いたのがこれです。
Two Reaf-Cardioid型と名付けます。(2018年9月1日)
ほぼ無指向性と変わらない音色で単一指向性クリスタルマイクが実現しました、前例はないと思っています。(2018年9月1日)
開き角は広いほど指向性はブロードに、狭いほどシャープになります。
以上
(お知らせ)
fetⅡ、fetⅡi、fet3、fetⅡ‐bright など、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください (いまや貴重品、秋月のパナソニック WM-61Aとオリジナル・パーツで製作)
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