「短小・軸方向単一指向性」のマイクロホン、fet-u1 やfet-uⅢ などの、あのケース製作の詳しいレシピを説明してほしいという要望を頂いております。
今回はかなり手のかかるこのマイク筐体の金属加工レシピを初公開いたします。
「買ったほうが安い?」、でもそのマイク、満足・納得の録音ができますか?、
またfet-u1 のようにビシッとPAに使えるマイクですか?,
あるいはfet-uⅢ で 「オムニカーディオイド」という指向性にこだわったように美味しい魅力ポイントのあるマイクでしょうか。
fet-u1 (UEB-5361使用)、fet-uⅢ (OEB-1451使用)、これらはMadein東北・山形のフォーリーフ社 の単一指向性ECMカプセル群からShinが実際に使って選び出したものです。
これらを手にして自分の音を得た歓びははかり知れないものがあります。
昨年、この焼き付け塗装については特集しましたがこの銅筒の料理法は軽く説明しただけですのでわかりずらかったと思います。
http://ameblo.jp/shin-aiai/entry-11472137425.html
【工作の要所】
このケース製作にはいくつかの要所があり、一つ一つに根気がいります。
この手間ヒマを楽しみながら自分だけの優れたマイクに価値を見出すことができる方を対象にしています。
1.2個の銅管をロウ付け連結する。
2.XLRコネクタとの勘合溝の彫刻。
3.8個の揃った穴あけ。
4.黒色焼き付け塗装。
5.ステンレスメッシュの絞り加工。
6.パイプのデッドニング・基板鳴き防止・管共鳴の制御チューニング。
①銅管ソケット2個を段差なくクランパに挟み仮固定する。
(材料はサンドペーパーで細かいキズを無数に入れ、アルコールなどで良く脱脂する。
洗剤入りのクレンザーやアルコールの代わりに台所洗剤を使用しても良いが、いずれも十分水洗いして水気を切る・乾燥させる)
②ガス直火で材料を熱し連結部に半田を流し込む。
(材料が十分熱せられたあと火から外し、0.6φなどの細めの半田を当てるだけで溶けて連結部はふさがる。)
この写真の上と下の2か所から流し込めば毛細管現象のように溝に沿って半田がまわり、ハミ出しは最少でロウ付け出来る。
(過分なハミ出し、下側へのタレは半田の多すぎです)
③ロウ付けが完了したらクランパに挟んだまま自然冷却する。
(レシピ2)
ここでは連結部をサンドペーパーで周囲と同じ高さにそろえる、手でさわって周囲と同じになるまで凸部を平らにする。
(レシピ3)
ここではXLRコネクタとの勘合部を形成します。
さらにスイッチクラフト、無名メーカー品なども含めて勘合できれば万全です。
(お助けメニュー)
・「ガイド溝」形成時の失敗は救済出来ませんが長さ方向途中の円周くぼみ部分は多少ブチ抜いても塗装である程度のカバーできます。
・「ロック凹をブチ抜いた場合は「完全な楕円穴」にしてしまうことをお勧めします。これは何の違和感もありませんので最初からそれでも結構です(下写真)
ただしシェル先端部と穴の端間1mm幅程度残しますがここを失敗したら救済はできません。
(レシピ4)
これは指向性マイクでは必ず必要な速度成分取り込み穴をあける準備作業です。
読者のかたをふくめた製作例で、単一指向性カプセルを使用されているにも関わらずこの穴のない事例が散見されます、その場合残念ながら指向性マイクにはなりません。
注意! オート・センターポンチは工場用の危険な業務工具です、強力なスプリングを強くちぢませた状態で誤って先端をすべらせた場合、手指すら貫通するほどの威力です。くれぐれも緩めた状態でケガのないようご注意ください。
◎無理せず、ハンマーと普通のセンターポンチならずっと安全です。
(レシピ5)
2mm程度の下穴をあける(Shinはボール盤などないので手で押さえて充電ドライバー・ドリルで、低速でケガしないように穴あけしました)
このあと3mmドリルで穴を広げます。
この穴あけは低速で行うのがコツです、ミニ・ルーターは避けてください。
(レシピ6)
8mm~10mm程度のドリル刃で今あけた3φ穴をザグってバリを綺麗に取り除く。
(「面とり」または「皿モミ」と呼ばれる作業です)
銅管内側のバリは半丸ヤスリを使って丁寧に処理する。
以上で銅管の加工は終了です。
いかがですか、結構手間と根気の作業だと思います。
(お知らせ)
fet V、fetⅡ、fetⅡi、fet3など、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください (オリジナル・パーツで製作) (Shin)
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