製作難易度 ★★★★★++
昨年3月に試作紹介した「フリーバウンダリーX-Yステレオマイク」 はその後、各種シチュエーションの中で興味ある能力を示した。
試作品での不足部分や要改善点をクリアーさせてピアノ用マイクとして再デビューさせます。
カプセルの縦軸上交差配置、超低インピーダンス出力が今回の条件である。
当初、バウンダリーマイクの一形態としてX‐Yステレオと組み合わせたものはどうだろう・・・と最低限のシールドを施してテストした。
オフマイクにもオンマイクにも対応できる高品位なステレオマイクとなる事、そして先輩によるテストの結果ピアノ収音(ピアノ仕込)に大変適していることが判明したのがこのスタイルの始まりです。
【製作】
このマイク独特のフォルムから手作り開始、メッシュが筐体という世にも珍しいマイクの製作やいかに。
(1.銅メッシュ加工)これがこのマイクの重要ポイントになる。
理屈抜きに美しいですね Shinさん、しばし見とれていました。
金属なのに柔らかさと優しさを感じます。(・・・・ここまでは)
細網メッシュと太網メッシュの中心部を「同一絞り加工」した2枚重ねで強度の確保をおこなった。
内側:0.25φ銅線メッシュ 外側:0.45φ銅線メッシュ
・当初はこれ1枚でやろうと思ったのですが、さすがにたよりないので太いメッシュとの二重構造とすることにした。
《前作マイク》
※ピアノに仕込んだ前回の試作マイク(2011 北東北音響技術カンファレンスでのデモ)
前作では100円ショップの銅網の茶漉し?(実際は流しのゴミ受け)を使用したところ偶然にもピアノの内部塗装色や音孔形状とマッチする、ただ周囲がステンレスのため、今回は全銅製・(銅色)で挑んでいる。
(2.銅メッシュ絞り加工法)
これは必要に迫られて始めた「ひょうたんから駒」の加工技術?
絞り加工によって圧倒的な強度の確保ができることが分かり、二重にすれば市販マイクのウィンドスクリーン程度になる。
その向こうに見える銅メッシュ材にこのように力を加えていくと綺麗な放物線を描いていく。
注)ムダを覚悟で出来るだけ大きな材料から絞りださないと見た目の「網み模様」にストッキングのデンセンのようなホツレ線が入る。
(3.この治具の詳細)
100円ショップのキッチン用品コーナーで買ったもの。
打ち抜き作業台として前から使っていたが何のための穴なのか不明、(卵立て・・・・? 不明。)
現在同じものがあるかどうかは全く不明なので形状・サイズを表す。
穴内径43mm 穴外形53mm、形状はこの通りです。
丸穴の周囲から両手を使って平均に丸く放物線を描かせ、絞り出して行く。
(4.メッシュハウジングとして)
銅リングへのメッシュの取り付けを行い(内側:細メッシュ、外側:太メッシュ)半田付け、小さなコテでは全くムリだが100Wなど大きすぎるコテでは半田の吸い上がりが目立つようになる。
Shinさんの場合60Wのコテで丹念に作業した、この程度がちょうどイイ
その結果起こる困った問題
《銅メッシュへの半田吸い上がりはどうする》
半田吸い上がりはごく部分的であり、「ブロンズ色塗料」 の補修で十分イケる。
(ちなみに今回の記事中上から2番目の黒バックのメッシュ写真はステンレスリングにこの塗料で塗装を施したモノです)
《熱変色はどうする》
半田付けの熱による紫っぽい「変色」です。
この写真では変色は見えませんが、それは一晩「酢」に漬け置きして修復したからです。これはレモン汁でもキレイに還元修復できます。
※酢は凝った「醸造酢」や高級品ではなく最低品質のモノが適しています。
工作中、なんとなく光沢が落ちてきましたがアルコール洗浄後、汁を絞ったあとの皮付きレモンで銅網を擦ったらピッカピカに、
「酢」では小筆に良く浸みさせてメッシュをムラなくリフレッシュしていく。
このあと十分に水洗いを行い、特にメッシュに入り込んだレモンカスは完全に取り去ります。
《完成後の変色(酸化・ロクショウ)はどうする》
銅製品に塗布または浸漬させ、乾燥後は金属表面と反応し吸着被膜を形成します。このため銅の光沢を持続させ、酸化・緑青の発生を防ぎます。
製品名:「サビーヌ・プラス」
(銅・真ちゅうの防錆剤)良い時代になったものです。
1編はここまでとします、次編に続く
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