1132 :定番マイクじゃ無理 ! 「津軽三味線」の野外PA(SR) | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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 この記事は2010年のものです。公開から13年以上経過している点にご留意ください。

2024年1月追記

 

今回仕事、8月6日 音楽と灯ろう流しの地元イベント。

 

今年は東日本大震災で亡くなられた方の灯ろうを見送るつどいでもありました。

 

川面に流れる灯ろうとビッグバンドJAZZのコラボがトリとなるのだが、今回のプログラムでは・・・・・津軽三味線のPAがあると聞き、Shinさんかなりビビッた。

それはかつてのまずい経験をフラッシュバックしてしまったからです。

 

それは30年以上前、初代「高橋竹山」出演の野外PAを手伝ったときの事。

 

津軽三味線、これはロックだ・JAZZだと聞いてはいたが・・・・・TV番組で竹山の演奏を初めて聴いた時、全身が身震いするような感動、「これは一体何だろう・・・・と」しばし放心状態。

レコードを買いに走った。

ShinさんのPA工作室  (実際に買ったのはこれではないと思うが)

 

「それに比べて今日のこの音は何だ?」

津軽三味線は曲によってバチを太鼓に叩きつけるような奏法でもあるためマイク選択が適正でないと想像を絶するイヤな音、自分の頭の中にあるあの津軽三味線の音とは似ても似つかない音。

 

使用マイクはSM-58、「PAの師匠ながら甘く考えているな・・・」とすぐ判ったのだが口出し無用、案の定「ガツガツ・ベチベチ」というアタック異音を伴う、しかし今日の相手は高橋竹山(初代)、マイクの選択が完全に間違っていたはず、ちなみに58は当時6万5千円以上した高級マイクだがそういう問題ではない。

リボンマイクといえばこの会社、RCAのBK‐5B数本があったがウィンドスクリーンはない。

 

その後、あるきっかけで新内の師匠と知り合い、そのPAに携わる機会があった、三味線にはリボンが良いがBベロを立てるのは仰々しい、何のことはない、ECMである23Fを使ってあっさりとOK。

 

歌舞伎から出発したとは思えないあの鼻に抜けるような艶っぽい節回しとイキな三味線、これを流して歩くのが「新内流し」と呼ばれ江戸の粋、花町の音・・・

この両者では奏法がまったく異なっているのがはっきりわかりました。

 

柳腰の叙情的な三味線に対して津軽の生命力を感ずるパワフルな演奏は対照的、

Shinさんは沖縄の「さんしん」を弾くが、「カチャーシー曲」であってもこれほどまでに「ビート・アタック」をキモにした曲はない。

 

今回非常に怖かったのはどうしても竹山のときの失敗PAの音を最悪の手本として、今回演奏する津軽三味線の師匠を伺い演奏を聴かせていただいた。

楽器の各場所、各部分、距離を変えて音を聴かせていただくと、ゾッとするほどわからなくなる。

57や58で何とかなるジャンルではない、これは。

 

悩みに悩んだ末、リボンであるBベロは使えないか真剣に考えた、しかし野外演奏である。

そして師匠用のマイクはゼンハイザーMD-441u(通称 ようかん)しかないと考えた。(音の柔らかさ、スーパーカーディオイドでありベタオンの必要がなく距離に対して音ヤセしないどころかオンマイクとしての距離領域は58の2倍までは延ばせる。

 

一方お弟子さんの演奏は「群」として地面に置いたバウンダリーマイク(BLM)でフォローする。

これはBLM-fet Dualで捉えることにした。

 

【ハプニング】

◎リハが終わったところで「雨」! 凄まじい強雨が襲った、もはや誰もが本番演奏はあきらめてかけたところでしたが突然、スカッと雨雲が何処かに消えた。「ゲリラ豪雨」というやつだろうか1時間弱の出来事だ。

こんなときの雨養生だけは野外ライブの生命線だ、PAブース用小型テント・ゴミ袋・透明シート(ブルーシートの透明版)などが活躍した。

 

卓まわりは守ってもマルチケーブルのジャンクションBOXが濡れたら最後だ、

これで各chごとのレベルがメチャクチャになった事があるので死守した。

(それにしてもBOSE-802は雨にも嵐にも強い!強雨の中の会場MCをまかない、その後の演奏にもビクともせず。

 

スタック分は持参したゴミ袋では無理、雨ざらし経験は何度もあるので、そのままにした。

2対向6台使用、1週間乾燥後大入力テストOK。(エレボイではこうはいかないだろう)

 

雨天後の機材は事後の乾燥とメンテナンスが何より大事、今回死んだ機材はナシ。


 

【結果】

MD-441uはダイナミックマイクではあるがその音はリボン型と酷似、完全に代替成功。

量感とアタック音、それに津軽三味線独特の響きは申し分なく、小気味よいアタックの津軽のリズムに繰り返される「こぶしフレーズ」と・・・・次第に聴衆が酔いしれて行くのを感じた。

もう1つはBLMの使用、これは私のBLM-fet Dual 14φ側を使用、13台のお弟子さんの演奏群を下から狙った。

 

 

ShinさんのPA工作室

(個人情報保護のため顔の一部をモザイク処理しました)

 

師匠(真中)はMD-441u足元に転がっている黒いのがBLM-fet Dualです、

 

この写真の外側にモニターSPがあり、BLMとのハウリングを避けた。

 

バウンダリーマイク BLM-fet Dual は期待を裏切らずお弟子さんの演奏を「群」として捉え、アタック異音など全く感じさせず13台の津軽三味線による演奏をしっかりと決めた。

フォーリーフ UEB-5361 ,なかなかヤルね、これはマジでイイぜ。

 

(リハで個別マイクの音も確認した)

MD-441u

この位置よりわずか棹側を狙ったが 「このマイクだけでもいいか」とさえ思った。

 

BLM-fet Dual

師匠の音はやや薄くなるが全体バランスの整った津軽三味線の合奏として完成した音になる

 

MD-441+BLM

師匠の音にズ太さが加わり、この音で完成とした。


 

 

(キッチンスポンジで作ったウィンドスクリーン )
 

このBLMは「風」に対して無防備なためウィンドスクリーンを作った。

それは食器洗い用の薄手のスポンジををいくつか試して決めた(5枚100円)

墨汁に浸しては洗い、また浸しては洗い乾かしを4回ほど繰り返して黒色化が完璧に完成。(これは8月20日の記事で詳しく説明します)

こうして作ったウィンドスクリーンは反射面にかからないようにして輪ゴムで装着した、写真の通りこの青天井ステージのすぐ後ろは大きな河、絶えず風が吹き通っている場所だ。

 

しかし、これはだれもマイクだとは気が付かない「不審物」、電車の中に置き忘れたら即通報されるだろう。

 

この日の最後はビッグバンドJAZZ演奏80分。

川面を流れ行く灯ろうと熱気を増幅するようなJAZZ演奏は妙にマッチする、この会場の北側に橋があるが地元恒例行事となり、橋の上がベストポジションだ、というj情報が写真家によって流されたこともあり日没以後、橋は見物者で埋め尽くされた。

当日、河原に下りて低い位置から長玉で灯ろうを狙った人もいるらしいが日没後この河原は真っ暗がりとなりとても危険、事故だけは避けたい。


 

 

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