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2024年1月追記
先日、フリーバウンダリーXYステレオマイク で採用した金網による静電シールド(ファラデーシールド)に疑問を感じた方もおられるのではないでしょうか。
こんな穴だらけでシールドになるの?という読者の方からご質問がありました。
なぜ「大丈夫」なのか?きょうはこの不思議メカニズムを考えて見ましょう。
静電シールドについては多くの場合 「オバケが怖い」
と云う子が布団を頭からかぶって隠れてしまう姿にも似ているところがあります。
普通には、対象物全体を金属または良導体で覆ってグラウンドに落とす方法が採られ、万全を期す構造が主流ではあります、しかし一方「どこまでなら手を抜いても問題がないか」をしっかり把握するとこれまた別世界が開けるのも電気の基礎理論の面白い部分でもあるわけです。
【目の粗い金網1つで「静電シールドが万全」なんてなぜ云えるのか】
ShinのフリーバウンダリーXYステレオマイクでは上部が1.5mm角、底部は1.0mm角程度の穴の金網構造です。
この程度の金網密度での静電シールド能力は20MHZで80~100dB程度になります。
一般的に波長に対して十分小さな穴であればそこから電波(オバケ)は侵入する事は出来ません。
穴の最大値は対象周波数1波長の1/10000以下が推奨されています。
そうするとあのXYステレオマイクの場合、この周波数はきつく考えて20MHZとなります。(電波の周波数としては結構低いですが)
携帯電話は800~900MHZ ・1.5GHZ ・ 2GHZ 、無線LANでは2.4GHZ付近。
つまりそれらの1波長分、125mm~375mmは1/10000では約0.01mm~0.038mmですから、これらはかなり通り抜ける、まあ微弱なものはあまり関係ないが。
カットオフ周波数と穴の大きさとの関係はそんなところですので、穴だらけでも案外多くの電波を遮断するが、VHF帯や携帯などのUHF帯の高周波にはあまりその効果はない。
※※何に対してシールドするかといえば主に電源周波数である50/60HZ及びその高調波の遮蔽を目的にしますのでまったく十分です。
(照明ノイズなど実際的な影響はケーブルなど別プロセスでの対策が適切です)
このプロセスは車でトンネル
の中に入るとAMラジオはすぐ聞こえなくなりFM放送はトンネルの奥まで案外聞こえ、携帯電話はさらに奥まで通じる現象と同じ。開口部(トンネルの入り口・出口)の大きさ由来の現象です。
また
「静電シールド」と僅か異なるプロセスではありますが、その昔、NHK第2送信所(当時690キロサイクル)が埼玉県鳩ヶ谷市にあったころ送信所を案内され、アンテナまでの給電線を見てドギモを抜いたことがあります。
何とそれは碍子に支えられたズ太いワーヤーロープが1本、そしてそれを大きく取り巻くように下図のような構造。
説明を聞くとやはりそれは「同軸ケーブル」だとのこと、その巨大さとおおら過ぎる程の「外皮構造」=いわばシールド構造に関心した。
つまり隙間の方が多い外皮の同軸ケーブルでアンテナまで給電し、普通にラジオ送信を行っていたのです。
つまりこの外皮にあたるスリーブ部分のシールド密度は「波長由来」の性質を持つという事なので、これで万全なのです。
ちょっと横道へ
(当時のNHK東京第二放送鳩ヶ谷送信所)
1965年、その時の写真が出てきました(古い写真なので貼り跡が付いてます)残念ながら給電線は写っていませんが頂冠アンテナと中継回線(965MHZ)のパラボラアンテナが見えています。当時この程度(ちょっと見上げる位)の高さでも放送会館~川口(鳩ヶ谷)まで約20km障害物なく見通せたわけです。
電源室では青白く光る幾つもの大型水銀整流器が放送音(変調音)そのままに唸っていました。
また、給電線近くでは持参したポケットラジオがAGCの抑圧か全く聞こえない事には驚きました。
おまけにひとこと
【「静電シールド」の誤解について】
「アルミホイルとかでグルグル巻きにすれば万全」というのが一般的誤解として有ります。
静電シールドにはセオリーがあり、それを無視すればシールドでも何でもなくなります。
その一方、理論の成り立たない方法でシールドに似た事を行って「やらないよりはマシでしょ」と、お茶を濁す「専門家」も少なからず存在しますが話になりません。
(「やらないよりマシ」といういい加減なものは「やると余計にひどくなる」か「とんでもない副作用が出る」と読み替えて理解してください。)
ピュアオーディオの「こだわり記事」などでも時々見られる誤りです。
「音像・定位がハッキリした」「ひずみ感が改善された」等マニアの意見は根拠ナシ、まさに錯覚です。
それらに多くみられる誤ったシールド法の2種類を図解しました。
結局、自分の頭で考えないとダマされても何が何だかサッパリわからない事も多いものです。
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