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2024年1月追記
単一指向性高品位コンデンサマイクのハンドクラフトはこれまで絶望的なジャンルでした。
しかし卓越したECMカプセルを持つ国内専業メーカーとの出会いによって完全に現実的となり、そのエポックは想像以上に大きなものです。
【fet-uⅡの誕生】
先日は、AKG-C451Bと酷似した音のfet-uⅠを発表させていただきましたが、
今回は同時入手させていただいたECMカプセル=UEB-5261(㈱ フォーリーフ製) 使用のマイクロホンを製作いたしました。
fet-u1 で使用したUEB-5361(13.7φ)ではプレゼンスピークを持つハギレ良さが特徴的ですが、今回使用のUEB-5261(10φ)カプセルは全域フラットなのが特徴、比較の為に準備したAKG C-391Bに酷似しております。
ちなみにC-391BというマイクロホンはC-451EBの製造中止後、現在のC-451Bとして復刻発売されるまでの間、C-451の代替機としてつとめて来たAKGのマイクロホンです。
今回のfet-uⅡでも、やはりプレゼンスピークを与えたいと思い、音響回路側の処理(非電気的処理)によって高域にアクセントをつけてC-451BとC-391Bとの中間的な音作りを行ないました。
マイクロホンの内容はShinさんオリジナルの「ファンタム式パナ改マイク」をベースにした高品位単一指向性マイクとなっております。
fet-uⅡ
全長は65mm (シャチハタとは無関係ですよ・・・^^)
【製作】
ハウジングに使ったのはANPHENOLのXLRコネクタと水道配管に使う「M150銅管ソケット 12.7」=内径11.7φ、外径12.7φのものです。
ハウジング中間及びフロント部に赤のラインを加え、アクセントを付けました。
このANPHENOL(アンフェノール)のXLRコネクタ・・・AC3MMBはあまり見かけませんが、成田の音屋さんでは340円、実はこのコネクタ、素材が違うのです。
ノイトリック・タイプのXLRコネクタで、他メーカーはすべてアルミダイキャスト製でありますが、AMPHENOL製の外筐は亜鉛ダイキャスト、つまり必要に応じ半田付けが出来る決定的なメリットがあります。
(筐体のEMC設計上、先端側金属と電気的に接続する必要があるからです)
AMPHENOLのXLRコネクタ(AC3MMB)
http://www.soundhouse.co.jp/shop/ProductDetail.asp?Item=119%5EAC3MMB
スッキリしたデザイン、特に金属部はロゴ位置も場所を選んでいますので、邪魔になりません。
電極部は白銀色のメッキですが、気になる場合はノイトリックやそのサードパーティ品の金メッキ電極部をプラスチック構造のちょっとした凸を削るだけで互換使用が可能となります。
【結果・仕上がり】・・・(しばらくのあいだアップデイトする場合があります)
fet-uⅡのサウンドはfet-uⅠ(C-451B似)と傾向はにているが、こちらの方はややおとなし目の明るい音、楽器収音全般向きの音質。
UEB-5261のECMカプセル単体ではC-391Bに酷似したフラットな音ですが、チューニングの中で若干のプレゼンスピークを与え、C-451BとC-391Bの中間的な明るいサウンドに仕上げました。
※このfet-uⅡは比較用のリファレンスとしてAKGのC-391BおよびC-451B両方を卓にセットし、音質比較しながら音作りいたしました。
最近始めた「さんしん」=(琉球三味線)のPAを試みた限りではクリップオンのC-419よりもはるかに撥弦音がしなやか、C-391BともC-451Bともやや異なり、UEB-5261の個性であるのか、この楽器には非常にフィットしていると感じます。
9月26日、2本のfet-uⅠをドラムのオーバーヘッドに試用した際、fet-uⅡを1本のみですが音質比較テストを行ってみました。
fet-uⅠに比べ、こちらfet-uⅡは金物系がおとなしく収音出来る傾向です、キャラクタの違いはあるがどちらのマイクもOverHead用として十分な能力を持ちます。
(主な仕様)
使用カプセル:UEB-5261(単一指向性ECM=フォーリーフ社製)・・・10φ
サイズ:65×14.5φ(先端部)、19.0φ(本体・コネクタ部)
重量 :38g
ファンタム電源電圧 :18V~50V
動作電流 :2mA(48V時)
適応WS :AKG W-92またはW-32
(ご注意)非業務用のマイクアンプやオーディオI/F、格安卓など低品質のファンタム環境での動作は保障できません。
【考察】
①ECMカプセルを使ったハンドクラフトマイクのジャンルに「高品位の単一指向性マイク」を加えることが出来たのは、世界品質のカプセル製造メーカーであるフォーリーフ社のご好意によるところが決定的であります。
②無指向性とは異なり、単一指向性ECM は、これまでアキバ などでイマイチな有り合せの安物カプセルを手にするか、またはデジキーなど海外輸入を頑張っても結局ガッカリするような低次元品しか入手不可能でした。
ところが、これで一気に次元の異なる世界品質のホンモノと向き合うことが可能となりました。
③いままでの「ファンタム式パナ改マイク」 の延長線上にある内容の為、不平衡/平衡変換AMPも抵抗値を一部変更するだけで同一基板を採用することが出来た。
「ファンタム式AMP回路」として実績と定評のある基板をそのまま採用、新たな開発は不要であった。
④ハウジングの手作りは、一番の課題ですがこれまで蓄積してきたすべての要素を投入してこのfet-uⅡおよびfet-uⅠの姿になりました。
マイクロホンクラフトの世界がまた1歩前進した事は間違いないようです。
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