前回の続きです。
前回を読んでいらっしゃらない方は
下記からまず(1)をお読み下さい。
前回は↓
別ウィンドウでは↓
で、今回は答えを発表する番です。
結論から申しますと、普通に
所有権抹消登記を
申請してよいようです。
こちらから不動産登記
記録例が見られます(PDF)。
https://shihoshoshi.com/touki2030/wp-content/uploads/2020/02/h280608m2_386_Redacted.pdf
このp.95(PDFとしてはp.96)
に出ております。
この記録例というのは、
登記記録はこのようにせよ、
という、見本みたいなものです。
なお、上記サイトは、大津市の
長谷川先生の運営のサイトのようです。
法務省サイトには出ていないようで
助かります。感謝。
(強引にコピペ)
3 分筆転写により順位1番となった
所有権の移転の登記の抹消 252
権 利 部 (甲区)(所有権に関する事項)
順位番号 登記の目的
受付年月日・受付番号
権利者その他の事 項
1 所有権移転
平成何年何月何日 第何号
原因 平成何年何月何日売買
所有者 何市何町何番地 何某(E)
順位5番の登記を転写
平成何年何月何日受付 第何号
2 1番所有権抹消
平成何年何月何日 第何号
原因 錯誤(合意解除)
3 所有権移転
平成何年何月何日 第何号
原因 平成何年何月何日売買
所有者 何市何町何番地 何某(D)
2番の登記をしたので
順位4番の登記を転写
平成何年何月何日受付 第何号
※ 赤字部分は、前回の事例に
合わせた表記です。
黒字が元の記録例の表記です。
つまり、Eの登記を消すと、
所有者不在となってしまうので、
法務局の方で(=職権で)、新たに
Dの所有権登記を入れてくれるのです。
まあ、知ってしまえば
何でもないのですが、
超レア案件なので、
ほとんどの司法書士は
いきなり聞かれると絶句すると思います。
というか、所有権抹消登記自体が
あまり見ないレア案件ですね。
(贈与税を知らずに贈与しちゃったとか?)
登記自体、実費(登録免許税等)+
司法書士費用で、結構お金がかかります。
ですから、基本的に慎重にやりますので、
後日抹消というのは特殊な事例です。
それと、これが難しく感じられる
もう1つの理由は本件は、
一応司法書士分野でしょうが、
司法書士と土地家屋調査士の
境界に位置する問題で、
それで難度が上がってしまう気がします。
(余談ですが、医師と歯科医師との狭間の
口腔外科なども同様の問題があるようです。)
実は、分筆登記は司法書士はできません。
(合筆や分筆抹消も同様です。)
土地家屋調査士という別の資格が
あって、そちらの業務になります。
なぜかというと、あらたにできた
土地部分(12番56)につき、
境界杭を入れて、隣地との確認もして、
測量をして図面を作るわけで、
測量系の知識や技術が
必要となるからです。
(そして昔の測量は誤差が多いので、
元の12番34の部分も、
再度測量するのが原則です。
そうしないと、狭くなった元の土地に
誤差部分が集積していってしまいます。)
その他、地目の変更(山林⇒宅地など)、
建物の新築・増築・取り毀し、
種類の変更(店舗⇒居宅など)も
土地家屋調査士が担当します。
(ざっと言えば、不動産の
物理的部分の登記ですね。)
なお、最後にちょっと難しい話を
しますと、私見では、記録例につき、
実体的には少々疑問があります。
分筆は処分行為ではないかと思うわけで
(保存・管理行為ではないので、
一部共有者からはできないと思います)、
そうであれば、記録例の事案では、
錯誤抹消ですから、結果的に
無権利者が処分行為たる分筆をした、
ということであり、従って、
無効登記たる分筆登記自体を抹消すべき、
とも考えられるからです。
ただまあ、記録例では
錯誤抹消の事例であっても
この扱いを認めているので、
実務上は問題ない、とは思います。