下関の歴史を調べていると、古地名に「〜〜浴(えき)」を目にする。水が流れる谷(谷間、谷あい)の地名と言う。
普通、浴は音読み(ヨク)、訓読み(あびる)であり、エキと読む訓は極めて珍しい。山口県から広島県、島根県の限られた地域で使われた漢字と訓読みとのことである。
さらに、遠く離れて大坂、千葉あたりにも同じ訓読みであるが異形の字が見出された。字の成り立ちと地域分布からすると、浴の訓読み「えき」とその意味の方が正統で古い用法であるかも知れない。
ところで、同様な意味を持つ漢字で沢(さわ)や谷(たに)があるが、東日本では沢が多く見られ、西日本では谷が多く見られる。
参考
① 下関の方言 え…の部
ええころ
いいかげん
あまり信用のない人
ええこたあ
いいですとも。
ええやっと
ようやく。かろうじて。
ええやらやっと
ようやく。かろうじて。
ええわあ
まあいいわ。
まあいいや。
ええわーや
よかったね。
いいじゃないか。
仕方がない。
えがむ
ゆがむ。曲がる。反る。
えがる
思い切り大声で叫ぶ。
喉が痛がゆい。
よがる。
えき
谷あい。
えぐい
喉がはじがゆい。
付き合いにくいひと。頑固なひと。
えだり
よだれ。
いざり。乞食。
(冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より)(彦島のけしきより)
② 漢字の﨏または浴と、その読み「エキ」について
③ 谷の字の成り立ち(OK辞典より)
④ 浴の字の成り立ち(OK辞典より)