わが下関弁が最も丁寧な方言だった | 日本の歴史と日本人のルーツ

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著者は下関の北浦海岸沿いに生まれ育ち、上京して就職した。丁寧な言葉使いになるように気をつけていたが、実は生まれ育った下関が最も丁寧語や敬語が多様であったことを今頃気づいた。同僚たちは著者の方言を奇異に思っていたかも知れないと、たった今気づいた。

子供の頃、友達と話すとき丁寧語を使わなかったら、「キナッちょる」「エバッちょる」と嫌われた。もちろん下関弁にも丁寧では無い普通の話し方もある。しかし、横柄でケンカをしているような話し方として認識される。著者が最近、会話した友人達の中で横柄と感じた話者の出身は人も疎らな山間部の住人であったり、荒海でもまれた漁師であったり、他地域からの転入者であった。彼らは彼らなりにほぼ完璧に下関弁を喋っていたのであるが、個人的性格にもよるが丁寧語や敬語の使い方までは身につけていなかった。

下関と言えば、地理的に古代から多くの人たちが渡って来たルートと考えられ、歴史教科書の図では必ず下関あたりを渡来することになっている。例え北九州に上陸しても下関は必ず通過する。現在、他地域の人々と言えば、中国人観光客が通り過ぎるのを目にする程度で、我々が直接対応することは無くてピンと来ない。しかし、かつては古代から色んな人々が下関に上陸し、そして通過または定着したはずである。

すなわち、密入国などの招かざるお客さんも含め、多くの高貴なお客さんへのもてなしとして、当時の最も丁寧な言葉を選んで、進化して行ったのであろう。


雑談
山口県の方言「おいでませ」という丁寧な言葉は、古い言い方にあった(参考)。しかし、下関では違和感がある。下関弁で同じニュアンスの言葉は「おいでーね」(いらして下さい)、または「よう来られちゃった」「ようおいでになった」(いらっしゃいませ)となる。


参考

① 山口方言の敬語(wikiより)

丁寧表現

山口方言の丁寧表現の代表が「-でります」である。太字の「あ」にアクセントを置く。この「アリマス言葉」は、明治初期に共通語や軍隊用語の丁寧表現に導入されたと言われている。ほぼ県全域で盛んに使用されるが、豊関方言や宇部方言ではあまり使用されない。(注: 豊関とは、かつての下関・豊浦の略で現在の下関全域を指す)

また、過去形の「した」に丁寧表現の「です」を付け「したです」(標準語で言う「しました」)など、普通表現に「です」を加えた丁寧語が用いられる。

敬意・尊敬表現

軽い敬意を表す助動詞に「-やる」「-やーる」がある。室町末期以降の古語「-あり」の連体形「-ある」が変化したもので、軽い敬意・親愛を示す。山口方言独自の敬意助動詞である。「来-やーる(来なさる)」などと用いられる。

もう少し高い敬意を表す助動詞が「-なさる」で、長門方言では「-さんす」となる。行きなさる、行きさんす(いずれも「お行きになる」の意)。命令形は、「-なさる」が「-なされ・-んされ・-んはれ」となり、「-さんす」が「-さんせ・-しゃんせ・-さん・-さい」であり、丁寧な依頼表現となる。

岩国市を中心に、敬意・尊敬表現として「お-る」が用いられる。接頭語「お」と「る」の間に動詞の連用形が入る。「お-やり-る(おやりになる)」「お-食べ-る(お食べになる、召し上がる)」。打ち消しは、「お-やり-ん」「お-食べ-ん」。

接続助詞「-て」は、動詞の連用形の後ろに接続すると尊敬表現となる。ナ行・マ行・ガ行・バ行の五段活用動詞の後ろに接続する時は、「-で」と濁音になる。日常生活で非常に多用されている表現である。

・[用例] 部長が来-て-ですよ(部長が来られますよ)、ビールを飲ん-で-ですか(ビールは飲まれますか)。

-ちゃった」も頻繁に使用される尊敬語である。尊敬の接続助詞「-て」と敬意の助動詞「-やる」の過去形「-やった」が融合して「-ちゃった」表現が成立したとされており、常に過去・完了の形をとる。ナ行・マ行・ガ行・バ行の五段活用動詞の後ろに接続する時は、「-じゃった」と濁音になる。しばしば「-してしまった」の意味で誤解される。

・[用例] 部長が来-ちゃった(部長が来られました)、ビールを飲んじゃった(ビールをお飲みになった)。


②  茨城、栃木、福島あたりに敬語は無いが、これに対して山口や北九州に最も多い敬語表現があった(参考)。

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(拡大)


③ 謝罪の方言

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福島県: ボットナー、茨城県: スンマセン、栃木県: イヤーワリーネー、山口県: ゴブレイシマシタ

下関弁なら「スイマセン」「メンタシ」「ゴメン」「ゴメンナサンセイ」とも言う。


④ 「幸せます」考

山口県下関市小月 観音寺
清浄山観音寺 住職によるブログです(参考)

平成25 915

七年前、この山口県に来て関心を抱いたのが山口方言と山口弁でした。山口県の方言には古語に由来しているものが多いようですし、「~ちょる」言葉のように、語尾が拗音化することが多い山口弁には時代をタイムスリップしたような不思議な感覚を覚えてなりませんでした。「難波の葦は伊勢の浜荻」ではありませんが、所変われば品変わる、ですね。

山口方言の中で特に感心したのが表題の「幸せます」です。注意していると、この言葉は大人はむろん、小学生も若い女性もごく自然に使っていること知りましたが、興味を抱いたのはその語源です。幸せを名詞とするなら、幸せますではなく幸せです、になるのでしょうが、「ます」になっているということは「しあわせ」が動詞ということになります。

調べているうちに分かりました。物事をうまくやるとか物と物がきちんと合うようにするという意味の「為合しあはす」と動詞がありますが、これならば「為合しあはせます」という用法が成り立ちます。「為合しあはす」が名詞化した「仕合せ→幸せ」は巡りあわせ、幸運という意味になり、この山口には「しあわせる」という言葉もあるということですから語源はこれなのでしょう。

この語源からすると、「幸せます」は丁寧語もしくは謙譲語と言えます。事実、この言葉を使う方の多くは「有難い」「嬉しく思う」という意味でお使いだと思います。文語的に言えば「そうして頂ければ幸いに存じます」ですね。ですから、この言葉の背景にはへりくだった優しさがあります。聴く人をほっとさせるのはその心ではないでしょうか。

ところへ、神奈川のKさんが新聞の切り抜きを送ってくれました。防府市出身の田中さんという74歳の男性が朝日新聞の投書に「幸せます」という言葉に、親や奥さんがよく言ってくれた「行ってお帰り」と同じようなやさしさを感じると書いておいででした。「行ってお帰り」という言葉が人をやさしくする力を持っているように「幸せます」にもそれがあるのでしょう。

この「幸せます」は、今では「幸せ」という意味により重点が置かれていると思いますが、それにつけても言葉の持つ力の大きさを思わざるを得ません。優しい言葉、思いやりのある言葉がどんなにかお互いを和ませ、勇気と希望をもたらすか知れません。改めて心したいと思います。

愛語よく廻天の力あることを学すべきなり。
~道元禅師~