恋愛ホンネ通信vol.5:やつれたあなたの頬を、僕はもう撫でることができない | 【しまうまの庭】@占い館バランガン

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バランガン占い師「いち木しま馬」のブログです。
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恋愛相談♡を得意としています。その「好き」、諦めない限り僕がここにいます。どんな想いでもお話くださいね☘

 

言えないこと、言わないこと、言えていなかったこと

 

 

久しぶりに会ったあなただった。

関係が変わっても、少しも変わらないあなただった。

それが嬉しかったし、それがさみしかった。

 

久しぶりに会ってもいまだに、わがままな僕だった。

そしてそれも、変わらずに受け入れてくれたあなただった。

「なんだよもー…」と、その小声がなつかしかった。

咎めるような横目を送っていただろうけれど、その顔までは見れなかった。

きっと愛おしくなって、苦しくなって、しまっただろうから。

 

久しぶりに入った店だった。

よくあなたと来ていた店だったから。

料理は美味しくて、美味しいのがなぜか悲しかった。

きっと美味しければ美味しいだけ、

「美味しいね」と一緒に食べた記憶が蘇ってくるから。

 

マスクを取ると、あなたは少し面やつれしていた。

「痩せた?」と思わず聞いてしまい、「そう?」と何でもない答え。

きっとわかってるでしょう、自分でも。

顔が少し、白いようなのは気のせいかな。大丈夫かな。

でもそれ以上は、踏み込めなかった。

たぶんきっと、誰のせいだかは、自分が一番よくわかっているから。

 

いつもならあなたのその頬を右手の人差し指と中指の第二関節でそっと撫でていた。

その手が動きそうになって、代わりにグラスを掴んで水を煽った。

 

あなたがご飯を食べる姿を横で見ているのが好きだった。

目が合うと食べづらそうにするから、こっそりと盗み見ていた。

赤ん坊のように無心に食べる、ふとしたあどけなさが愛おしかった。

月が牡羊座の彼女。

それを見ていられるだけで、よかったはずなのに。

 

「なに?」

やっぱり言われた。

「なんでもない」

 

マスク越しでもわかる、別れ際の笑顔もどこか抜けていて好きだった。

本人にはついぞ、言ったことはなかったけれど。

いつものように、あの頃のように角を曲がるまでに3度振り返って手を振る。

 

僕はそれを見送って、一人家路につく。

会えて嬉しかった。

自分に会わせてしまって申し訳なかった。

 

ごめんね。

僕は枯れているよ。僕の中には何もないよ。

涸れた井戸を一生懸命に覗きこんでもらっているようで苦しくなる。

 

「ごめんね」ばかりだった。

そして同じくらい「ありがとう」で、「ありがとう」の方は足りなくて、

渡すあてのない、手紙を一人で書いた。

 

行き場のない「ありがとう」を封に収めて、

代わりに彼女の幸せを祈った。

心から祈った。

僕の幸せと引き換えでかまわないから。

 

キャップをした万年筆さえもが、彼女が残してくれた愛情の形だった。