黒人捜査官がKKKに潜入捜査をするっていう
白人至上主義者たちの跋扈する「現在」
1953年生まれのロンは、雑多な人々が暮らしていたメキシコ国境の町エル・パソ育ちだったから
ディープ・サウスと違ってそんなに強烈な差別を受けたという記憶はなく、
60年代に盛り上がった「公民権運動」は「テレビで見た」という感じで実感がなかった。
ハイスクールを出た後、大学へ進学するための方便として
19歳の時(1972年11月)、コロラド・スプリングス市(人口約25万)警察の見習い募集に応募。
市の人事部長(黒人)が、警察署に黒人警官が1人もいないという欠陥を憂慮して
「マイノリティ歓迎」としていたこともあって合格となり、
2年後に正式採用となる頃には、本気で警官の仕事を全うしようと思うようになった。
正式採用されてから約10か月後、
かねて希望していた潜入捜査官となり、
初仕事が、ストークリー・カーマイケル(1969年にギニアに移住し「クワメ・ツレ」に改名)
の演説会に紛れ込み、情報を収集することだったが、
学生自治会会長の女の子と知り合ったりは、していない。
まあ、映画はフィクションだからね、いいんだけど。
その4年後、
日常の情報収集の一環で新聞広告に目を通していたロンは、
ある広告に目をとめる。
Ku Klux Klan
For Information Contact
私書箱番号(コロラド・スプリングスの郊外)
この広告が奇妙だと思ったロンは、
パンフレットでも送ってくるんだろうと思い、
白人至上主義者を装って、
手紙を書いたんである。
その手紙に仕事で使っている電話番号を書いておいたら、
いきなり電話がかかってきたんである。
そして電話で話して情報収集していたら
相手が「いつ会える?」と言ってきたんである。
でもって
「どうやって見つけたらいい?」
と言ってきたんである。
だからとっさに
同僚の身長・体重・姿形を言っちゃったんである。
こういう展開なら、わかる。
でも映画では、いきなりこっちから電話をかけちゃってる。
それはいくらなんでもあんまりじゃないかと思うんだが如何。
他にも映画は
KKKのいくらなんでも異常すぎるメンバーとかも
戯画化しすぎでバカすぎて、
全然恐ろしくなくなっちゃったし。
バカにしたいのか恐ろしさを描きたいのか、
どっちつかずの中途半端。
KKKが広告を出した目的も不明だし、
全体的に話の展開の緻密さが足りない。
だから「問題作」ではあっても
「傑作」にはなりきれてないと思わざるを得ず。
残念。