南西読書

5日に沖縄から帰ってきました。奇跡的に台風をすり抜け、良い天気の中いい旅行ができました。

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南海血風録

「南海」の言葉に引かれ、購入。
想像以上の面白さです!

江戸時代初期、日本が鎖国する少し前。

長崎から、御朱印船で台湾へ貿易で渡った商人、淡水(もとは武士という設定が、にくい!)が、日本人とオランダ人のハーフ、六道と出会います。こいつが中国拳法の使い手で、滅法強い。純粋で子供みたいで、モテちゃうんだ。これがまた。母親の故郷である長崎へ行きたいと、淡水に付きまといます。



日本と台湾の関係だけでなく、台湾に「ゼーランジャ城」を築いたオランダとの丁々発止のやり取りが面白いんだ。


フィクションである、ヒーローの六道や淡水の活躍と、史実であるゼーランジャ城事件。これがなんとも良い塩梅に混ざりあい、胸わき踊る物語になっています。


ストーリーの面白さは勿論なのですが、航海のシーンがまた興味深いです。

長崎から台湾へ貿易に向かう船が、五島列島を通過し、妻島を越えると、後は八重山諸島の他に陸地の目標はない・・・この時代、八重山に漂着して住み着いてしまった人もいるんだろうな。貿易の中継地点として、栄えていたんだろうか。イメージが膨らみます。


高橋 義夫
南海血風録

時代劇にはいい男

表紙の格好良さに惹かれて衝動買いし、積読していた「手習重兵衛 闇討ち斬 」、やっと読み始めました。下駄を持って素足で走る浪人、格好良い~。


表紙のイメージ通り、主人公は良い男。行き倒れの浪人、重兵衛。訳ありで国許を出奔したのですが、手習い師匠の宗太夫に拾われて、寺子屋を手伝いはじめます。



影がある良い男と、村の子供らの取り合わせがほのぼのしていて良い感じ。


そしてもう一人、誰かを探しているらしい若いお侍、左馬助が江戸にやってきます。たった一人で盗賊を追い払うぐらいの剣豪。重兵衛を探しに来たのかしら?と思わせますが、どうやら違うみたい。。。


これから左馬助と重兵衛がどう出会うのか(まさか出会わないとか?)、お話はどう進んでいくのか、楽しみでございます。


鈴木 英治

手習重兵衛 闇討ち斬

月館の殺人

綾辻 行人, 佐々木 倫子
月館の殺人 上 (1)

動物のお医者さん 』『おたんこナース 』の佐々木 倫子 の最新作です。


この人の漫画、妙な間の取り方が面白くて特にレストランを舞台にした『Heaven?―ご苦楽レストラン 』なんて大笑い。ツボにはまると大爆笑間違いなし。



お話は沖縄・那覇からはじまります。主人公・空美は電車が嫌いな母親のせいで、一度も電車や鉄道に乗った事がない。もちろん「ゆいレール」にも乗った事がない(笑)


その母親もなくなり、まだ見ぬ祖父に会うために、いきなり北海道へ行ってしまいます。内地を通り越して、突然北海道。いいな、この唐突感。

祖父に会うため夜行列車の乗り込みますが、乗り合わせた乗客は鉄道マニアばかり。そして、空美が好感を持った青年が鉄道の中で殺されてしまう・・・


どうも、那覇の風景や、主人公・空美に沖縄の空気を感じないのですが、北海道の雪景色はさすが。特に雪が降る風景なんて、妖怪じみている。怖い。

やっぱり道産子。北海道が舞台だと嬉しい。そこの沖縄がからむとより嬉しい。


まだお話には乗り切れないのですが、「にやっ」っと笑える部分も多く、次巻に期待します。


佐々木 倫子
動物のお医者さん
おたんこナース
Heaven?―ご苦楽レストラン

「用心棒日月抄」読み終わる

8月末から読み始めた『用心棒日月抄』シリーズ 、ようやく読み終わりました。


藤沢 周平
用心棒日月抄

一作目の『用心棒日月抄 』では、婚約者の父親を斬ってしまい、脱藩した青江 又八郎が江戸で用心棒稼業をしながら「忠臣蔵」事件に関わり、国に戻るまで。用心棒仲間の細谷や、口入れ屋の親父、吉蔵がいい味だしています。


二作目の『孤剣―用心棒日月抄 』では、今度は藩の密命を受けてまたもや脱藩。ところが脱藩を命じた藩の偉いさんは、貧乏暮らしをした事がないものだから、ろくな生活費もよこさない。藩の危機を救う為の脱藩なのに、またもや用心棒稼業で糊口をしのぎ、人探しをしたり公儀隠密と戦ったり。この巻では、藩の忍のような存在の、佐知という女性が出てきます。強くて、つつましい。又八郎と、はじめは同士のような感覚で一緒に戦うんだけど、そのうちお互いに好意を持ち合います。でも、又八郎は既に妻のいる身。最後の別れのシーンはジンときました。





三作目は『刺客―用心棒日月抄 』。またもや密命を受けて脱藩する青江 又八郎(笑)今度は、前作で心通い合った佐知(さち)が、女頭領を務める「嗅足組」(かぎあしぐみ)と、お家乗っ取りの危機を救う為に戦います。お話は、細谷に仕官の口を紹介したのに断られるところからはじまります。江戸に戻り細谷に再会すると、やっぱりあの話は惜しかったなどと言われ、憤慨したり。



少し残念だな~っと思ったのが、またもや佐知と関係してしまうところ。一回だったらせつない関係で終わりだけど、二回続いてしまうと美しくないなぁ~。しかも、ストイックなはずの佐知さんが「江戸の現地妻にして欲しい」みたいな事言うし。なんだかなぁ。


さて、4作目『凶刃―用心棒日月抄 』は最終巻です。前作の16年後。又八郎も、四十代半ば。さすがに脱藩して用心棒・・・って話の流れにはなりませんが、佐知が所属する「嗅足組」の解散の為、密命を受けて江戸に下ります。

佐知と16年ぶりの再会。16年ぶりなのに、古女房のような感じ・・・そして、前作の最後で見事旗本に仕官したはずの細谷が、相変わらずの用心棒に身をやつし、しかも幸福ではなさそうな。陽気で豪快な細谷が、うらぶれた姿を見せるのは、読んでいる方も辛い。




前三作が痛快で、後味が良い分、最後の一冊は16年の時間の流れが寂しく感じられました。もう又八郎も若くないんだ、みんな年を取るんだ・・・


一作目、二作目は間違いなく楽しい娯楽時代小説です。疲れた時に、パラパラと読みたくなりそう。四作目は、読むとどうもしんみりしてしまう。話がつながっている訳ではないので、痛快に楽しみたい方は1~3冊目だけ読んで、4冊目を読むのか後回しにしてもいいかもしれません。


藤沢 周平
『用心棒日月抄』シリーズ

明るい旅情

池澤 夏樹
明るい旅情
池澤 夏樹 のエッセイや紀行には、科学的な視点で自然地理や気象などを多く取り上げたもの(「南鳥島特別航路 」「ハワイイ紀行 」など)と、もう少し軽やかにその土地の楽しい話や美味しい食べ物、雰囲気を感じられるもの(「インパラは転ばない 」「むくどり通信 」など)があります。
今回取り上げる本、『明るい旅情 』は後者の方。
旅心誘われ、どんな土地でも自然体ですいすいと色々なものを見ているような気になれる本。愉快な旅。この本の中では、3篇、沖縄が取り上げられています。


*「今なら間にあうヤンバル探検隊」
9月1日から5日まで沖縄に旅行してました。58号線を那覇から北上し、宜野湾あたりは基地の街、「アメリカー」な雰囲気。風景は移り変わり、恩納村を越えたあたりで、どんどん緑が深くなって行きます。名護から本部に行き、そこから北には行かずに高速で那覇に戻ったのですが、沖縄中北部あたりでもこのエッセイに描かれた「ヤンバル(山原)」の雰囲気を味わう事ができました。

*「与那国は世界の中心」
非常に心を惹かれたのが、「夕方になるのを待って、ナンタ浜に出て水浴びをする。(中略)夕方の斜めに射す日で見る方が風景だってずっと綺麗なのだ。その光に照らされて、ゆっくりと水をくぐる。」という描写。北海道民にしてみれば、夕方に海に入れるのが羨ましくてならない。夕暮れの海がとろりとしたシロップのように、体に心地よくまとわりつく光景が目に浮かびます。

*「沖縄人のための越境のすすめ」

国境でも、県境でもそうですが、飛行機で空から越境するのと、海や陸から越境するのとではドキドキ感が違います。違う土地に来たんだという実感が、後者の方が強い。いつか沖縄から、フェリーで台湾に渡りたい。


沖縄だけでなく、北から南まで世界旅行の気分が味わえます。


池澤 夏樹の本
旅に役立つ100冊


沖縄に行ってきます!

明日(もう今日かぁ~)から、沖縄旅行に行ってきます!1泊は那覇、残り3泊が石垣と竹富。5日間の旅です。

さて、石垣島といえは、『風車祭』

この小説、読み終わった後に、「ああ、私は正にこの雰囲気を味わいたいがために、八重山に旅行しているんだ。」と気づかされました。

今回の旅行でも、この『風車祭』の空気にたっぷり触れてこようと思います。行ってきます!


池上 永一
風車祭(カジマヤー)

骨は珊瑚、眼は真珠

池澤 夏樹 の短編集、『骨は珊瑚、眼は真珠 』のご紹介です。


池澤 夏樹は『スティル・ライフ 』という中篇をはじめて読み、それから旅にまつわるエッセイ集を読んでファンになりました。

この短編集は、9つのお話が掲載されていて、そのうち2つが沖縄に関連するもの。



*「眠る女」というお話では、夫の海外赴任でアメリカで生活する主婦が、突然に襲われる深い眠りの中で沖縄の神事に巫女として参加する自分を発見します。これは、沖縄久高島で1978年に最後に行われた神事、イザイホー。まったく、感情的ではなく淡々と、アメリカで夫が仕事中にベットで眠る女が見る夢で、神事に参加しているという不思議を描く筆に、失われつつ神事に対する哀しみが描かれていると思いました。

タイトルでもある、*「骨は珊瑚、眼は真珠」では、亡くなった夫の骨を、迷いながらも遺言にしたがい珊瑚の海に撒く女性の姿を、最後、海に拡散されていく夫が語るという不思議なお話。池澤 夏樹 の真骨頂でもある「俯瞰する」イメージに満ち溢れています。

沖縄からは外れるのですが、*「アステロイド観測隊」という、数十年前に小惑星の観測の為に南の国に行った教授の昔語りに出てくる国は、マシアス・ギリの失脚 に出てくる、ナビダート民主共和国を思わせ、ファンには楽しかったりします。

池澤 夏樹 の、特に短編に多く見られるイメージは、違う世界に一歩踏み出してしまった友人なり知人を、羨ましく思いつつもその一歩を踏み出せない主人等、とう図式なのですが、この短編では、その図式もありつつプラス、圧倒的な淋しさを感じます。 しかし、この淋しさは決して負のイメージではなく、自由には付き物の孤独感なのだと思え、非常に心地よい、これは自分だけの淋しさなのだと思える読後感です。

それにしても、池澤 夏樹 が描く珊瑚礁の海は、本当にキラキラしていて、私も眠る時にはここで・・・と思わされるぐらいです。まだまだ先の話にしたいですけどねっ!

旅に役立つ100冊

旅に出たくなる本

沖縄に行きたくなる本

島めぐり~Island Journey~

今年のGWに沖縄本島~宮古~石垣へ11泊12日の一人旅をしたのですが、一番ディープで印象深かったのが八重山、黒島です。


毎晩、お庭で宴会。三線にあわせて歌い、踊り、楽しい時間を過ごしました。泊まり合わせた八重山ファンの方から、お勧めされたのがビギンの島唄 ~オモトタケオ~ の、1と2(「オジー自慢のオリオンビール」が最高!!)。それと、大島 保克



大島 保克 は石垣島出身で、BEGINの同級生。まったく予備知識なく、ネットで顔写真を見た時の印象は「ほんこん(蔵野 孝洋)」お笑い芸人に似てるなぁ~なんて・・・


八重山の匂いが恋しくなった頃、タワーレコードをうろうろしていてジャケ買いしたのが、大島保克の「島めぐり~Island Journey~ 」。

予備知識全くなしで、さっそく聴いてみると、まるで枯れた老人のような、はたまた若々しい青年のような、不思議な声。とっても、品が良く、上品。「民謡」と聞いて思い浮かべるような、土臭さ、泥臭さがなく、まるで川の清流のような感じ。心地よい。


それでも、10曲目の「国頭サバクイ」という歌では、お囃子の女性の声が凄いドスが聞いていて「おっ、なんか感じが違うぞ?このお囃子の女性の声、気に入った!CD出していたら買おう」と思って、リーフレットを見てみたら、なんとUA でした。(んんん~、ちょっと複雑。昔、UA 好きだったんだけど、NHKの歌番組で浮世離れした姿を見て、ちょっと引いていたんですよね・・・それでも、この曲のお囃子は、ほんと好き!)


2曲目の「黒島口説」では、にわか黒島ファンの私でも分かる地名が出てきて、軽やかで楽しい感じ。

13曲目の「イラヨイ月夜浜」は「ビギンの島唄 ~オモトタケオ~ 」ではじめて聴いて、ああ、いい歌だなぁと思っていたのでうすが、大島 保克バージョンはもっと伸びやかで、心が解放されます。作詞しているだけあって、歌いやすいのかな?


「癒し」というよりも、「浄化」といいますか、心をジャブジャブ洗いたい時にお勧めです。


大島 保克

島めぐり~Island Journey~

青江 又八郎、かっちょいい

『用心棒日月抄』 読み終わりました!いやー、面白かった。

全四巻なので、最終巻ぐらいで「忠臣蔵」の決着が付くかと思いきや、一巻で討ち入りのエピソードは終了。主人公は、事件の周辺でうろうろしてただけで、思っていたより深くは浅野浪人たちに関わらなかったな。身元を隠して又八郎を雇った浅野浪人が、意外と金にせこい交渉をしていたり、ニヤリとする場面も沢山。



一巻の最後で、国に一先ずは帰った又八郎ですが、見送りに来た細谷や吉蔵との会話でまだまだ、彼らとのつながりは切れんだろうな、と思わせられほっとします。

さて、次に読むのはシリーズの二巻目、『孤剣―用心棒日月抄 』です。2~3ページだけ読んでみましたが、江戸での用心棒家業で、いい感じにスレている又八郎が、やっぱりかっちょいい!明日から続きを読むのが楽しみです。

あー、もう。3日ぐらい仕事休んで、温泉にでも泊まってゆっく~り、時代小説三昧したいなぁ。。。

海のアリア

萩尾 望都 さん、大好きな漫画家です。

代表作は「ポーの一族 」(70年代の名作!今も色あせない)や「残酷な神が支配する 」「イグアナの娘 」(菅野美穂主演でドラマ化してたなぁ)


萩尾 望都
ポーの一族 (1)

他にも沢山、思い入れのある作品があるのですが、私が読んだ事のある萩尾望都の漫画で(「ポーの一族 」以降は全部読んでいるハズ!)南の国を題材にした作品はないんだなぁ。。。70~80年代は、だいたい舞台はヨーロッパかSF。90年代に入って「イグアナの娘 」や「あぶない丘の家 」やその他の短編で日本が舞台だったりするんだけど、南の国はまずない。はず。誰か他に知ってたら教えてけれ~。



その中でも、この『海のアリア 』(1989連載開始)はとっても珍しく沖縄が出てきます。


鎌倉沖で遭難した、後に主人公になるアベルが、沖縄で発見されるという。記憶を失った主人公を保護してくれたのは、沖縄中部のリゾートホテルの歌手マリサ。「アメリカー」な、リゾート色を前面にだした沖縄の描き方でした。「ん?」と思う部分もあったけれども(主人公アベルの友人の親戚が、石垣島から小さなヨットで沖縄本島に気軽にやってきたり。遠いよ。)、風景の描かれ方は、見事にきれい。特に夕日の風景。


萩尾 望都
バルバラ異界 1 (1)

沖縄は最初に1~2話ぐらいしか出てこず、あとの舞台は鎌倉。家族、兄弟の葛藤のお話かと思いきや、話はどんどんスケールが大きなSFになっていきます。沖縄の海も、鎌倉の海も、宇宙の海も描かれ方がとても怖くて、きれい。

連載中の「バルバラ異界 」も相当キレてる近未来SFで、道産子の私には北海道が出てくるから嬉しかったりする。いつか、萩尾先生に、南国を舞台にした漫画を書いて欲しいなぁ。


萩尾 望都
海のアリア (1)