明るい旅情 | 南西読書

明るい旅情

池澤 夏樹
明るい旅情
池澤 夏樹 のエッセイや紀行には、科学的な視点で自然地理や気象などを多く取り上げたもの(「南鳥島特別航路 」「ハワイイ紀行 」など)と、もう少し軽やかにその土地の楽しい話や美味しい食べ物、雰囲気を感じられるもの(「インパラは転ばない 」「むくどり通信 」など)があります。
今回取り上げる本、『明るい旅情 』は後者の方。
旅心誘われ、どんな土地でも自然体ですいすいと色々なものを見ているような気になれる本。愉快な旅。この本の中では、3篇、沖縄が取り上げられています。


*「今なら間にあうヤンバル探検隊」
9月1日から5日まで沖縄に旅行してました。58号線を那覇から北上し、宜野湾あたりは基地の街、「アメリカー」な雰囲気。風景は移り変わり、恩納村を越えたあたりで、どんどん緑が深くなって行きます。名護から本部に行き、そこから北には行かずに高速で那覇に戻ったのですが、沖縄中北部あたりでもこのエッセイに描かれた「ヤンバル(山原)」の雰囲気を味わう事ができました。

*「与那国は世界の中心」
非常に心を惹かれたのが、「夕方になるのを待って、ナンタ浜に出て水浴びをする。(中略)夕方の斜めに射す日で見る方が風景だってずっと綺麗なのだ。その光に照らされて、ゆっくりと水をくぐる。」という描写。北海道民にしてみれば、夕方に海に入れるのが羨ましくてならない。夕暮れの海がとろりとしたシロップのように、体に心地よくまとわりつく光景が目に浮かびます。

*「沖縄人のための越境のすすめ」

国境でも、県境でもそうですが、飛行機で空から越境するのと、海や陸から越境するのとではドキドキ感が違います。違う土地に来たんだという実感が、後者の方が強い。いつか沖縄から、フェリーで台湾に渡りたい。


沖縄だけでなく、北から南まで世界旅行の気分が味わえます。


池澤 夏樹の本
旅に役立つ100冊