前回は、身近な単3形電池の話をしました。
■単3形電池の話
https://ameblo.jp/shimashima0703/entry-12604031907.html
今回はそれ以外の、なんとなく気になりつつもよくわからないや…となっていた人も多いであろう、電池のあれこれを取り上げてみます。
●なんで「乾電池」って呼ぶの?
「乾」と書くからには乾いているの?じゃあ湿電池もあるの?となるのが普通でしょう。乾電池は英語でも「Dry Battery」と書きます。
電池は化学反応で電気を発生させます。最も簡単な例は、塩水に銅板と亜鉛板を浸して豆電球を点灯させてみよう!と理科の実験でやりませんでしたかね?
あれで言えば「塩水」を電解液と呼びます。その電解液を液体のまま扱うのが湿電池、固体に吸わせて扱いやすく加工したものが乾電池と呼ばれます。
車のバッテリーは、中に液体がそのまま入っていますから、湿電池の仲間ですね。
●なんで1.5Vなの?
乾電池の電圧は1.5Vです。みなさん知っていると思います。
大きい単1形でも、小さい単4形でも、電圧は1.5Vで同じです。大きい方が電圧が高くてもよさそうなのに何故なのでしょうか。
それは、電池の素材と構造に起因しているからなのです。
乾電池は電解液が水溶液のため、高い電圧がかかると水が電気分解を起こしてしまうことから、1.5Vとなっています。つまり構造上1.5V以上にはできないのです。
ニッケル水素充電池やニカド電池も同じで、素材の関係上1.2Vにしかできないのです。
リチウムボタン電池は3V、リチウムイオン充電池は3.6~3.7Vあるのはなぜかと言うと、電解液が水ではない(水溶液ではない)から実現できているのです。
●アルカリ乾電池とニッケル水素充電池、どっちがパワーあるの?
実はこれは機器によって異なるのです。
乾電池は最初1.6~1.7Vくらい電圧があり、負荷をかけると1.5Vくらいに落ち、なだらかに電圧が下がっていき、寿命(終止電圧)は0.9Vとされていますので、機器を設計する時にはその曲線を考慮して設計されます。
いっぽう、ニッケル水素充電池は、最初1.5Vくらい電圧があり、負荷をかけると1.2Vくらいに落ち、その後電圧はずっとキープしたまま、空になると突然電圧が下がります。
使う機器が「あまり消費電力が大きくなく、電圧で状態を監視するようなタイプの機器」の場合は、ニッケル水素充電池を使うと最初から1.2Vと低めに出るので、残量が正常に表示されなかったり、動作がおかしくなる場合もあるので、マンガン乾電池やアルカリ乾電池が適しています。
逆に「消費電力が大きく、電池の内部抵抗の値が直結するような機器」の場合は、わずか0.3V程度の電圧差は関係がなく、たくさん電流を流せるニッケル水素充電池が有利となります。
悩ましいのはモーターで動く小型家電製品や玩具で、電子制御が入っているものはニッケル水素充電池の方が適していますが、単純にモーターを回すだけのもの(毛玉取り器やミニ扇風機など)は、乾電池の方が元気よく動くこともあります。
ボクはどっちの電池の方が速い??
●カメラのストロボに使う電池は何が良いの?
カメラ用ストロボは、単3形電池を使う機器の中でも最もパワーが必要なもののひとつです。
さらに電池の持ちの良さ・チャージの速さなども求められます。
「電圧が高い方がチャージ速度が速くなるはずだから、必ずアルカリ乾電池を使う」という人がいます。
しかし実際は、アルカリ乾電池は内部抵抗が高く、大電流を引き出す用途には向きません。そもそもストロボ発光部は300V以上の電圧がかかりますから、昇圧回路の前の数ボルト程度の電圧の違いは誤差でしかありません。
乾電池を使うと、電圧は徐々に低下していきますから、それに伴ってチャージタイムも徐々に長くなっていきます。それよりも、構造的に内部抵抗が低く大電流を取り出しやすく、最後まで電圧が一定であるニッケル水素充電池の方が、よりストロボには向いていると言えます。
また、「エネループよりエネループプロの方が容量が大きいから、チャージ速度も速いはずだ」と言う人もいますが、この容量というのはあくまで「どれだけ電池が長持ちするか」という違いでしかなく、どれだけ大電流を引き出せるかとは関係がありません。
エネループでフル発光200回発光できたものが、エネループプロになると250回発光できるようになる…その違いだけです。
●なぜ単3電池互換のリチウムイオン充電池は見かけないの?
上述の通り、電池は構造によって発生できる電圧が決まっています。リチウムイオン充電池は3.6~3.7Vです。いっぽう乾電池は1.5Vですから、乾電池型にする場合は降圧する必要があります。
乾電池互換サイズの14500リチウムイオン充電池で、最大容量はおよそ1000mAhです。ここに保護回路と降圧回路を入れると、当然ながら単3サイズには収まりませんから、さらに一回り小さい電池を使って、各種回路を入れたケースに収める必要があります。そうなると、容量はさらに減ってしまいます。
安全回路を入れると必要な容量が確保できない点と、組電池を基本としていて単体セルでの使用は想定されていないので危険なので、日本のメーカーとしては販売をしていないものと思われます。
●特にリチウムイオン充電池で、安いのに大容量を謳っている互換品があるけど大丈夫?
結論から言えば、やめておきましょう。
リチウムイオン充電池のカギは、保護回路にあると言っても過言ではありません。安価なものは保護回路が入っていないか、もしくは簡易的な構造の粗悪なものであり、いざと言う時に守ってくれません。
スマホ用のモバイルバッテリーが発火する事件が時々起きていますが、その理由もここにあります。
容量に関しても、測定時の放電条件まで見ないとわからないことが多数あります。
例えば、3000mAhと書かれた充電池があったとします。測定時は「消費電力100mAで30時間動作した」としても、それが「6000mAの機器で30分間動作する」かと言われれば、取り出せる電流量のスペックが不明なのでOKとは言えませんよね。
実際の機器に入れて使用した時を想定してスペックを公表していないと、容量詐称と言われる現象が発生するのです。数字だけに安易に踊らされないよう注意が必要です。
●やっぱり単3電池は日本製がいいの?
マンガン乾電池は、すでに日本では製造していません。
ニッケル水素充電池は、FDKトワイセルという会社だけが日本製です。eneloopをつくっている会社ですね。逆に言えばニッケル水素充電池で「MADE IN JAPAN」と書いてあれば、例外なくeneloopの兄弟製品とも言えます。
リチウムイオン充電池は、ソニー・パナソニック・東芝など日本製も多いですが、近年は中国製も増えてきました。
日本製のものは、上述のような容量詐称・寿命が極端に短い・粗悪な保護回路という例はほぼありません。それゆえ、価格の割に容量が少なく表示されている感はあります。
海外(主に中国製)では、きちんとした品質のものと、得体の知れない粗悪品とが混じっていますから、価格や容量の数字だけを見て安易に手を出さない方が良いです。
2800mAh・繰り返し充電1200回と書いてあるけど…本当?
電池はハイパワーになればなるほど、安全性に重きを置く必要が出てきます。過度に容量ばかりを強調するような製品は、信頼しない方が良いと言えます。
適切な電池選びで、機器が快適に使える手助けをしてあげましょう!