放射能汚染の情報開示が少ないまま助け合いムードに流されて良いのだろうか。全国自治体の首長の使命はその地域住民の生命を守ることだ。




[18日 日本経済新聞]がれき埋め立て、8000ベクレル以下に 環境省が基準


環境省は17日までに、東日本大震災で生じたがれきの処理について、環境省告示に定める安全基準や確認方法の詳細を明らかにした。焼却灰と不燃物の埋め立ての場合は、放射性セシウム濃度が1キログラム8000ベクレル以下、再生利用の場合は製品として同100ベクレル以下なら安全に処理できるとする。




環境省はこれまでも「広域処理推進ガイドライン」などで安全基準やモニタリング方法を示してきた。今回、首相による都道府県への協力要請の文書送付に併せ、告示レベルで改めて示し、周知徹底する。告示は手続きが整い次第出す。




広域処理の受け入れ側のモニタリング方法としては、可燃物の焼却処理・埋め立ての場合、焼却灰や排ガス中の放射性セシウム濃度を月1回、処理場の敷地境界の空間線量率を週1回測る。再生利用する場合は再生利用の前と製品のそれぞれについて月1回はかる。



そもそもこれまでがれき処理が進まなかった原因は何処にあるのだろうか。野田政権を含め菅前政権からの東北の復興・復旧の政策の失態だろう。




しかし、野田総理は自らの失態は棚に上げて下記の発言をしている。




「災害廃棄物の処理は現地では処理能力が大幅に不足している、広域処理の緊要性を踏まえ私も積極的な協力を要請する」




本来、がれき処理が進まない現状を「申し訳ない」と誤るのが当然だろう。




そして、細野環境大臣も然りだ。環境省は、地球環境保全・公害の防止・自然環境の保護及び整備その他の環境の保全を図ることを任務としている。




しかも発足が延びている原子力規制庁も環境省の外局である。言うなれば、原子力の安全・抑止に努めるべき役割を担わなければならないのだ。




にも関わらず、がれき処理の促進のため住民向け説明会やがれき放射線量測定に国負担で行うなどの文書を送るとはどういう了見なのだろう。




福島原発事故では原子力の促進と規制が一緒であったことがこの惨事を生んだ原因となったため、原子力規制庁を分離する運びになったはずだ。




原子力の規制や安全を確保するための最終責任者が放射能の拡散に、環境の保全と保護するための最終責任者が環境汚染に加担するのと同義だ。




さらに、いの一番にがれき受け入れを表明した東京都の石原都知事も「センチ」という表現で鼓舞しているが、数値的な検証が全くない。




「原子力の活用を一度の事故で否定するのは、一見理念的なことに見えるが実はひ弱なセンチメントに駆られた野蛮な行為でしかありはしない」




しかも国ありきの考えで東京都民の生命の安全よりも東北で被災した住民の生命に重きを置いていることが、自治体の首長の領分を越えている。




先日、下記の東京都で原発住民投票実施の署名が約25万人分に達し必要な法定数の約21万4000人分を超えたことにどう応えていくのだろう。




参考記事:原発住民投票の署名が大阪市に続き東京都でも法定数超え、全国に波及で脱原発と電力自由化となるか




なぜこれほどの署名が集まっているのかと言えば、政府並びにマスコミが流す原発事故以降の情報に国民が信頼することができないからだ。




既存メディアから流れるデータが断片的で不明であることや海外からネットで入手するデータとの誤差が激しいことなどが不審を生んでいるのだ。




そして政府が脱原発を宣言しておきながら、電力不足を理由に原発稼動を行おうという言動の不一致がさらに拍車をかけているのだ。




さらに原発の最終処理もままならない状況も明らかになり、国民の不審が行動に変わり去る3月11日に全国規模で歴史的なデモが行われたのだ。




参考記事:日本や世界で「脱原発」を訴えるデモや集会が歴史的な動員数に、なぜ既存メディアは大きく報じないのか




この既存メディアが大きな脱原発運動を全く報じないという横並び体質が、今後既存メディアの存在すら危ぶまれる結果をもたらすことになろう。




一方、これまでもそうだが、今回のがれき処理について環境省が出している安全基準やモニタリング方法についても懐疑的になる部分が多い。




今回も焼却灰と不燃物の埋め立ての場合、セシウム濃度が1キログラム8000ベクレル以下は安全としているが、何万トンから何十万トンものがれきの処理を行えばこのセシウム濃度は一体どうなるのか。




単純計算でセシウム濃度が800万からベクレル8000万ベクレルにもなるが、雨が降ったり沈殿すれば環境への影響はどうなるのか。




政府は、助け合いという感情論ではなく、がれき処理受け入れに対してあらゆる想定されるデータを出して国民に説明義務があるはずだ。




そして現在も大気や海に流出している福島原発の放射能のデータを誰しもが確認できるようネットでリアルタイムで開示すべきだ。さらに福島県民にも自己防衛を促すため放射線測定器を配布しても良いくらいだ。




政府やマスコミが原発で信頼性を取り戻すための唯一の手段は、開示できるデータはその良し悪しに関わらず全てオープンにすることだけだ。




そして信頼性を取り戻して尚且つ、がれき処理による生命の安全がデータで証明されて初めてがれきを受け入れる準備ができるというものだ。