「公務員人気に翳り」は歓迎できないか? | 公務員 島田正樹 〜仕事と私事と志事と〜

公務員 島田正樹 〜仕事と私事と志事と〜

仕事も家族・友人との私事も楽しみながら、魂を燃やして挑む“志事”で社会を変えていきたい! 地方公務員として働きながら、NPO活動、講演、執筆、ワークショップデザイナーなどに取り組む“公務員ポートフォリオワーカー”として活動しています。

6月から企業の採用活動が解禁され、
新卒社会人の就職活動が始まっています。

今年も
どうやら一部でフライング気味に採用活動が行われ、
解禁と同時に内定が出ているケースもあるとか。

いずれにしても、今年も売り手市場気味な傾向は変わらず、
多くの企業が優秀な人材確保に頭を悩ませているようです。



そんな中、人材確保は
私たち公務員の世界でも重要なテーマということで、
以下のような記事が日経新聞に掲載されていました。


6月7日 日経
首都圏の自治体、新卒採用の応募者低調 人材確保に知恵絞る
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO03279650W6A600C1L83000/




この手の記事が出るときにいつも感じるのが、

こういった人材確保の成果指標が
応募者数や倍率でしか表されないことが
採用担当部局を苦しめてるのでは?

という違和感です。




記事には

“埼玉県の申込者は3716人で11%減少。
 倍率は10.2倍で0.4ポイント下がった。”

という一文があります。



ここから推計すると、埼玉県の場合、
今年度と昨年度で下記のような
変化があったことになります。

【今年度】
 (1)申込者 3,716人
 (2)倍率   10.2倍
 (3)採用予定 約360人(筆者推計)

【昨年度】
 (1)申込者  約4,200人(筆者推計)
 (2)倍率    10.6倍
 (3)採用予定 約390人(筆者推計)



確かに申込者数は400人以上減っていますし、
倍率も記事にあるように0.4ポイント減っています。

しかし、それでも倍率は依然として
10倍を超える高倍率です。



採用部門にもマスコミ側にも、
恐らく私たち一般の職員の中にも、

申込者数・倍率が低下すると
優秀な人材を採用しにくくなる

という考えがあるんだと思います。



でも、



それって本当でしょうか?

私は個人的に3点、
議論が必要なポイントがあると思っています。



ポイント① 適切な人材の採用
申込者数が減ると、優秀な人材の採用が
難しくなるという考えには、たくさん受けてくれれば
競争率が高くなって、結果的に優秀な人しか合格しない、
という大学受験的な発想の存在を感じます。

しかし、倍率が高くなることで難易度が上がるのは、
申込者が合格することだけではないのでは?

申込者が多くなることで、
優秀な人を選別して採用することも、
同じように難易度が上がるのではないでしょうか


採用する側は、本当に
申込者が増えた分だけ増えてしまった
たくさんの優秀でない人を排して
優秀な人だけを選別できるのでしょうか?

仮に、採用したいと思えない多くの人の中から、
採用すべき人を選別する技術と能力が採用する側にあれば、
今の10倍という倍率の中から適切に選定することで、
必要な人だけで募集人員を充足することができるのでは?


3700人の中から適切な360人を選べるなら、
3000人の中からでも適切な360人は選べるでしょうし、
5000人から選ばれる360人のレベルもさほど変わらないのでは?


応募者が増えることで、
採用の質を上げることができるかもしれないのは、
今の自治体のように倍率が高いレベルで上下するのではなく、
1.0倍が2.0倍になったとか、
2.0倍が5.0倍になったとかの次元の話ではないでしょうか。


ということで、
応募者の数が増えたことを
採用活動における唯一のプラスの指標として
喜ぶのは、なかなか危ないのではないか?

というのが私の仮説です。




ポイント② 
“優秀”という軸の勘違い
では、自治体のような採用活動をしているところ、
そして、現状のような人気の状況において、

応募者の数を増やすのではないとしたら、
どうするのが
より優秀な人材を確保することに
つながるのでしょうか。


これは、問いを設定しなおすべきだと思います。


“優秀”な人材を確保するという概念に、
限界があると、私は思うのです。


人材に対する“優秀”という評価には、
1次元のモノサシの上に
受験者を整列させて序列を決めるような
そういうイメージがあると思いませんか?


でも、そのモノサシの端っこの方の人を
せっせとたくさん集めることが、
本当に住民サービスを向上させることに
つながるのでしょうか?

だから筆記試験だけではなくて
面接をすることで、人物も見ている?


ナルホド。


でも、それって、

筆記試験のモノサシの端っこの人を選別して、
その人たちを面接して、今度は、
面接試験のモノサシの端っこの人を集めるだけ

になっていないでしょうか?


今の採用の仕方で、
モノサシ的には決して優秀ではないけれど、
地域のために価値を生み出せる人材
を、
果たして採用できるのか、少々不安です。





ポイント③ 
数より質の受験倍率
優秀如何ではない軸で
採用する人を決めるとした場合に、
考えたいなと思うのが、

どんな気持ち、目的で公務員になろうとするのか



これまで多くの採用試験受験者がそうであったように、
安定志向、終身雇用、9時5時、福利厚生・・・
そういったキーワードで集まる人を採り続けるのか。


そうして、そういったキーワードで志して、入庁し、
必ずしもイメージどおりではない現実にギャップを感じて、
やる気を失ったり、病気になってしまったり・・・・・・



それであれば、地方公務員という仕事が、

どれくらい 残業することがあるのか、
どれくらいの給料で働いているのか、
どれくらい 住民や議員から罵倒されることがあるのか、
どれくらい 転職市場で戦闘力が低いのか、
どれくらい つぶしがきかないのか

その職業のやりがいと同時に伝えて、

それでもなりたいという人には挑戦してもらい、
それなら、辞めておこうかという人には・・・・・・。

それで結果的に採用試験の受験者数が減っても、
受験者全体がより筋肉質に、質的に高まれば、

結果的に、

採用する360人の質的向上につながるのではないでしょうか。


         


採用活動の目的は、
地域に貢献できる公務員を増やし、
役所組織が地域のために活動できるよう
その機能を維持、または向上させること。


採用試験の倍率が高いことも、
申込者が増えても減っても、

それで1ミクロンだって
地域がよくなるわけではありません。


上記でお示ししたような、3つのポイント。

①採用試験の受験者数によらず
 適切な人材を選別できる技術・能力が必要

②“優秀”という軸はもはや捨てて
 地域のための人材を採用することが必要

③数を減らしてでも、必要な人材に目指してもらえるよう
 公務員のリアルを伝えることが必要


こういったことを、
業界の人間も、そうでない人も一緒に
議論することが大切なのかもしれませんね。


   
      


そんな問題意識で活動しているのが、
私たち「公務員キャリアデザインスタジオ」。

大学で学生さんに公務員のリアルを伝える講義をしたり、
若手~中堅公務員向けの勉強会・イベントを企画したり。

活動していますので、
よろしければHPも覗いていただけるとうれしいです。

公務員キャリアデザインスタジオHP
http://kcds.jimdo.com/





お知らせ

現在、参加者募集中です!

第2回
公務員のためのキャリアデザイン学習会 in 埼玉

どのような場所に置かれても、めげず腐らず、
自分のチカラで自分のモチベーションを整えられる職員になる!

をキーワードに、大好評だった昨年に続き、第2回を開催します。

「公務員として働くということ」に、
少しでもモヤモヤするものをお持ちなら

参加してみてください。
昨年も9割の方に「モチベーションの向上」
実感していただけたプログラムです。

 【日 時】6月25日(土)10時~17時
 【場 所】 大宮工房館(埼玉県さいたま市大宮区堀の内町1-577-3)
 【申込み】こくちーずからお申込ください。
 【定 員】32名
 【参加費】2,500円(講師謝金・会場費・資料印刷代として)
 【講 師】柴田朋子氏(JUNO代表、キャリアカウンセラー)

Facebookイベントページ
https://www.facebook.com/events/1597085550602098/

こくちーず(参加申込用)
http://kokucheese.com/event/index/398880/

5月27日ブログ記事「1年ぶりに帰ってきます、アノ企画が」
http://ameblo.jp/shimada10708/entry-12164482549.htm