BYD SEAL試乗
BYD SEALに乗ってきましたので感想を。
BYDとはもちろん中国の車。 正式名は比亜迪股份有限公司、略称は比亜迪(ビーヤーディ)またはBYD(ビーワイディー)という。
日本国内への進出は厳しくなる欧米への輸出状況から、中国に極めてやさしい岸田政権のうちに少しでも
地ならししておこうという魂胆か。
思想的に僕は中道保守であり、中国共産党の日本に対する政治的姿勢は許しがたいものがある。
同時に気を許せない存在であるが、車の評価にそう言ったを私情挟まないよう、気を付けたいと思った。
SEALのSpec
全長4,800mm、全幅1,875mm、全高1,460㎜、ホイールベース2,920mm
車両重量, 2,100kg
モーター出力, 230kW(約310PS)、 360Nm
EV航続距離, 640.0km
528万円也。
乗った車はRRで、リアモーター、リア駆動だった。
意外に大きく、クラスはDセグ。電池を床に並べているのに全高が低い。
BEVのわりに低価格なのは共産党の補助金のおかげか。
SEALとはアザラシの意味らしく、車に"アザラシ"と名付ける感覚は分からない。
まあ、日産も大昔Sunnyをメキシコで"Tsuru"(鶴の意)と名付けて売っていたので、
おかしい事でもないのかな?
見てみて
スタイリングは特に見新しいものはない。
とりあえず、格好よく、無難にまとめた感じ。
ノーズが短く、キャビンが大きいところはBEVらしいが、スタイリングでキャビンを小さく見せている。
フロントにくの字に光るLEDのデイライトが特徴的。これはアザラシの髭を意識?
Aピラーが寝ているが、常識的な範囲。
フロントフェンダーホイールアーチの後ろにエアダクトっぽい意匠のものが張り付いている。
これを起点としてサイドのキャラクターラインが伸びるが、リアフェンダーの辺りで急激にドロップする。
通常は勢い、伸びやかさを表現するためにリアに伸ばすが、この処理は意外。
サイド下にはえぐりを入れて車の厚みを低減させる、シックスライトのキャビンだが、形自体特に特徴はない。
綺麗に流れるような造形。
こうしてみると少しうるさく、中国車らしい。引き締まった印象があり、大きく見せないところは良い。
リア周りは絞り込んでおり、リアガラスが寝て、トランクは短い。
SEDANと言うよりはファストバックのような形だ。
リアコンビは最近流行の一文字で導光LEDは綺麗に光っている。結構お金をかけている。
Detailのうるささはやはり中華の車。これ見よがしのリア下のディフューザー形状はちょっとカッコ悪い。
サイドの袴の形状もしつこい。
気になる外板の仕上がりは、パネル同士のパーティングラインは綺麗にそろっている。
樹脂製バンパーと鉄板の継ぎ目も国産車と同様だ。
ぱっと見て僕のG330iよりは綺麗な仕上がりだ。
但し、パネルの平滑さは微妙でフロントドアなどは少し波打っている。
この辺は鉄板の問題だと思うが、日産NOTEレベルの出来具合だ。
フロントボンネットとAピラーの交差する仕上がりなど、妥協した感じはあるが、概ね中国製であることの
ネガは見つからない。
矢印の部分。こういった処理はあまりやらないと言うか絶対にやらない。デザイン上(2次元では)成立したのだろうが、
ボンネットを開ける要件を消化できなかったのだろう。
Dセグとして見ると、少しばかり仕上がりは他の車より劣る気もするが、特に気になることはない。
なお、日本での輸入に際してPDI(Pre Delivery Inspection)を入念に何回も
行っているとのことで、それが功を奏しているのは間違いない。
ちなみにBody外板の金型はLuxusの金型を作っていた”オギハラ”の館林工場を買収して作らせている。
Lexusと同等の仕上がりとでも言いたかったかもしれないが、いくら何でもLexusに失礼だと思う。
比較するものではない。
なおスタイリングはAlfaとかBMWに在籍していたと言われるウォルフガング・エッガーが担当。
この日、3人の担当者からこの名前をそれぞれ聞いた。
しっかり営業Manualを熟読していると感心した。
触れてみて
ドアノブは最近流行のみょっと出てくる奴。
握ると剛性感低く、なにも良いことはない。
こんなものただのギミックに過ぎず、意味はない。空気抵抗低減かな?
ドアを開けるが妙に重い。
こんな重いドアは初めてかもしれない。理由は不明のだとのこと。
さて乗り込む。
フロントシートは合皮と革。
少しサイズが小さいように思えたが、取り付け剛性が悪くない感じ。
少しばかりシート座面のクッションが心許ない印象。
ステアはD型。
ポジションを合わせる。
意外に悪くなく、すんなり決まるが、床に電池が並んでいることもあり、シートがあまり低くならない。
そのため少しばかり視線が高い。
インパネは大きな縦にも横になるLCD。空調など多くの操作をここで行う。
ため息。
コンソールに申し訳なさそうにシフトノブやハザードなどが並ぶが、使い勝手は極悪い。
インパネにはアルカンターラが貼られ、ステッチ入りで質感は低くない。
ただプラスティックはさっと塗装しただけで、かなり安っぽい。
またドアノブは操作感、ノブそのものの質感が低く、とてもじゃないが、許せるものではない。
軽自動車を思わせるような出来。
風が直接当たるので操作しようと思ったがルーバーにノブがない。
これもLCDで操作するようだ。
全く最近の車は。。。
ルーフには全面に大きなガラスがはまっている。
いくら低重心と言われてもこんなに大きな長大なガラスを屋根に乗っけてどうすんの?
重心から離れれば離れるほど慣性モーメントが大きくなるので、これは必要ない。
写真は質感高いが、部品によって質感に差があり、統一感が無い。アルカンターラのありがたみがあまりないのは何で?
ドアノブ、Speakerのパンチンググリルはとても安っぽかった。
建付けはどれも良く、感心した。
リアに乗る。
重いドアを開けて乗り込む。
シート自体は座面の大きさ、シートバックの高さはOK。
ただフロアが高く、シート座面の角度が後方に傾いているため、膝裏が浮き、腹の圧迫感が強い。
これは背が低い車故に頭上空間創出のための苦肉の策だろう。
前席同様、座面のクッションは少し心許ない作りだ。
当然頭上空間見ミニマムで、側頭部の空間もぎりぎり。
フロントシートの下につま先が入らず、後席の居住空間はDセグとして見るとあまり褒められない。
トランクは横、深さが足りず、また開口部が狭い。
ファストバックのようなスタイリングの影響。使い勝手は良くない。
スタイリング優先の弊害はこのようにいくつか感じられた。
座面が後方に傾き、あまり心地良くない。クッションは薄いし。
革についてはBMWの5 Seriesよりも上等。
ドアのデザインもなんだか。。もうちょい落ち着いたデザインはできないもんかね。
走ってみる
さて、公道へ。
意外とハンドルが切れない。最小回転半径 5.9mだそうで、これではFF時代のAlfaのようだ。
タイア切れ角まで考慮できなかったか。
流石BEVだけあって静か。スッと車が動く。
ブレーキはドリルドローターの4ポッド対抗ピストンキャリパー。ちょっと奢りすぎ。
タイアはコンチで、235-45-19。そのおかげもあって、当りは優しい。
50メートルインプレでは、「お、普通だ。悪くない。」と言う印象。
スムーズさはBEVであれば当然で、それに慣れた今は特に感心することはない。
BYDはBEVのジャーク感を抑えて、ICEからの乗り換えに違和感がないように制御しているとのこと。
普通に走っている分には剛性感も高く、変なピッチングもないし、低重心をにわかに感じる。
床に電池を敷くと横剛性も捩じり剛性も上がる。
営業が”電池を下に敷いているので、バネ下重量が軽く、乗り心地が良いです!”と盛んに
言っていたが、それ、間違っています。
少しアクセルを踏むと、音も無く、振動なく加速する。
これがBEVの良いところだ。
この静かさと加速感に慣れるとICEの車がうるさくて仕方がなくなる。
Normal Modeになっていたので、Sportsに変更。
電圧を増やすだけで、特にステア、足回りはNormalと変わらないとか。
踏み込む。
中々の加速感だが、僕の車より少し劣るぐらいか。
速度を上げると心許ないのはブレーキ。
どちらかと言えばストロークで管理するタイプで、初期制動、剛性感が頼りない。
昔のTOYOTAの車みたいだ。
もちろん、ブレーキ バイ ワイアーであり、これは制御・設定の問題だろうが、あまり感心しない。
高速からのブレーキのコントロール性が難しいのは減点だ。
ドリルドローター、対向ピストンキャリパーのありがたみは無い。
そしてステアフィール。
低速では重さも程よくあり、変な制御もないのは好感。
但しステア剛性、シャープさ、正確性はもう少し。
もうすこし前輪を感じさせたほうが良い。これだと高速域でのステアは心許ない。
これはBMWに長く乗っていた弊害でもあり、好みの問題かもしれないが。
良くなかったのは強い路面の凹凸ではステアへのキックバックが大きく入るところ。
久しぶりの感覚に驚いたくらいだった。この辺ステア周りの剛性はイマイチと言わざるを得ない。
車の動きがクイックじゃないのはセッティングとやはり重さの影響だろう。
乗り心地の良さは重量の影響が大きいが、やはり2100kgは高速移動体として許容範囲外だと思う。
短い試乗だったが、シートの座面の底付き感を感じてしまった。
昔のセルシオを思い出す感覚で、シートに空調を仕込んだのと、全高を低くした影響がこの辺に
出ているのだろう。
降りてみて
全体的にNegativeな印象は受けなかった。
指摘できる部分は多々あるが、ここまで仕上がっていたことには感心した。
ドイツ御三家と比較すればその劣勢はぬぐえないが、国産車と比較して、そう劣るものはない。
先述した気になる部分以外、国産車と肩を並べるぐらいだと思う。
中国車のレベルは相当に高い。
となると、商品力としてどうか、と言う問題になる。
大きな特徴はスタイリングだけで、その乗り味に大きな新鮮味がなく、洗練されているわけでもなく、
高級感があるわけでもない。
普通の車だからだ。
はったりでも良いから何か刺激や飛び道具が足りないような気がする。
また、試乗中、左の拳にエアコンの風が当たり、気になって仕方がなかった。
LCDで”人に向けない”と調整したのだが、ほとんど変わらなかった。
これは一つの象徴的なもので、車全体的にみて作り込みが足りないように思う。
何となく統一感がなく、車の性格が微妙な感じがある。
中国車とはいえ、日本人から見ては外国車である。
外国車に求めるものは国産車との違いであり、現時点ではそれが足りず、例えば、ここは駄目だけど、
あそこは素晴らしい、と言わせるような特徴や魅力がない。
全方位的の良い得点を取ろうとしている様は正に国産車と一緒である。
そうなると敢えてBYDの車を選択する必要はなくなる。
はっきり言って、故障などは未知数であり、耐久性に関しても同様だ。
BEVは日本では原発稼働状態を考えればまだ低公害車でも何でもないし、敢えてBEVの中国車を
選択する必要なない。
営業が”寒い朝、暖房を入れておくと、奥様が喜んでくれるそうで、忘れると怒られちゃうんだ
よ、とお客様が言ってました”と喜んで話していたが、そんなもの本来の車の魅力とは関係ない。
(一部であることは認める)
そんな事を良い車のエピソードとして語ることが、この車の現在の立ち位置を示している。
敢えて日本でディーラーを展開させ、まじめに売ろうとしている姿勢はヒュンデよりはよっぽど
良いと思う。
どうせならPHEVを日本で展開すればよいと思うのだが、エンジンを扱うとサービス工場の施設、
認証など、多くのお金がかかることからBEV一本でいくらしい。
日本市場ではイバラの道だと思うが、腰を据えてやって欲しいと思う。
もう少し魅力を感じさせる車、BYDとはこういう車、という性格付けがこれからのマーケットに
は重要だと思う。
これには時間がかかるのだが。
おまけ 1
ATTO 3を見てみて
街に埋没しそうなスタイリングだ。
乗ってみると例のうねったインパネは落ち着くことなく、質感もそれなり。
車のインパネとはどうあるべきか何も考えていない。
ギターをモチーフって、いったい何?
エアコンルーンルーバーの動きと言ったら単にプラの抵抗だけで動かしている感じで、驚いた。
インナードアノブの動的質感は低く、これもNG。
シートは座面のウレタンの質が悪いのか、これも底付感が酷い。
リアシートはポジション適切で、BEVにはやはりSUVがお似合い。
ただこれもシート座面が酷く、長く乗ることはできないシートだった。
国籍不明。
変化のための変化、差別化のための差別化。 これでは説得力ない。
ギターを模した物入れに3本の赤いゴム紐。弦を表すならせめて4本に。三味線じゃねっての。
ドルフィンを見て
インテリアの質感は軽自動車より劣る。叩いても触っても酷いものだった。
手に触れる部分全てが低品質で、インパネ中央のダイアルみたいに並ぶスイッチの操作感は
35年以上前に初めて乗った軽自動車のセルボのスイッチを思い出させるくらいだった。
ある意味驚愕。
インパネを叩くとどこも共振し、これで走れば変な低吸音が室内を満たすことでしょう。
(SEALはその点良かった)
これまたシートが凄かった。前後共に座面は昇天しているかと思ったくらい。
大げさに言うと15年乗ったトラックのシートの座面みたいなクッションだった。
ちょっと酷い仕上げで、スタイリングだけで絶対買ってはいけない見本のような車。
車を統括して評価できる人間がこの車に関してBYDにはいなかったと、言わざるを得ない。
手軽なBEVが欲しい方はSAKURAに乗ってからこちらに見に来て欲しい。
強烈でした。
あくまでも個人の感想だけど、2024年現在販売されている車と言う観点から、こう評価するし
かない。
どこもハードプラは仕方ないにしても、動的質感が低いのも厳しい。SEALのような車作りができるのだから、
もう少し使う事を前提に設計して欲しい。見た目で気を引けばよいと思っていてはダメだ。
今時珍しい質感の低さだった。
おまけ2
中国共産党の下で生まれた車だけあり、色々懸念はある。
今の車は"繋がっている"ため、登録した内容、行動記録が全て吸い取られる。
中国産の監視カメラをある大学教授がTestしたところ、定期的に勝手にDataをServerにUpしていた
という。Serverはもちろん中国に置かれている。
ある意味、中華製品は必ずバックドアが仕掛けられていると言っても良い。
BYD JapanではServerは日本国内にあるので、中国にDataは渡りませんと言っているようだが、
そんなものは全く信用できない。
BYDの車が増えて、街中を走った時に一斉に”停止”の指令を出されたら稼働不動となる。
ある意味、意図的にインフラへの影響を起こすことができるのだ。
そのような事を起こす危険性がある国で作られた車であることは意識した方が良いとは思う。
性善説では語ってはいけないのだ。(まあ、どの国も一緒か。。)
なお、BMWももはや繋がってる車であり、同じことができる。
が、資本主義のドイツの一会社と専横独裁の中国共産党の支配下で経営される会社を同列で
語る事に意味がない事は自明だ。
BYDは2003年に国営自動車メーカーを買収してから車を製造しているだけあり、国営企業の顔を持つと
言ってもおかしいことは何もないのである。