日産 AURA MC

日産 AURAがMCした。 カタログには下記の文言が躍る。

「針葉樹が美しい南ドイツの森からインスピレーションを受けた新ボディカラー「フォレストグリーン」。ベースは深い森のような落ち着いたグリーンで、光があたった部分は青みがかって輝き、木漏れ日がさすがさす森のように心地よい雰囲気を醸し出します」

まあ、カタログの文言はいつ見ても滑稽なものが多いが、ライターも大変だろう。

カラーを作成した担当者の言葉をそのまま、奇麗に仕上げた感じだが、大したもんだ。

が、MCの売り文句がこれでは、今回の改善点は知れたものであろう。

 

恐れていた日産AURAのMCが実施された。

NOTEが見るも無残なデザインを施されてしまい、その影響が懸念していたが、まあ、大体似たような

ところに落ち着いてしまった。

基本的に自動車のデザインとはPackagingを包み込んだ外皮である。

Miniなんて小さくまとめたPUに最大限の居住空間を持たせながらコンパクトにまとめた結果、

あのスタイリングになった。

M・M思想(Man-Maximum、Mecha-Minimum)で考えられたPackagingに与えられたスタイリングは決して

可愛さや愛嬌を狙ったものではなく、小ささと、制約あるCostの中から生まれたものだ。

開発者のアレック・イシゴニスによる効率化と実用性を優先した結果の工業的デザインと言える。

 

現在の自動車のスタイリングはMiniやBeetleのようなPackagingを優先された結果生まれたものではない。

スタイリングこそ売れる要素の大きな一つだからだ。

内包するメカニズムを覆う表皮3センチくらいでデザイナー達は勝負を挑む。

それはそれで大した作業だと思うのだが、そのデザインの多くは機能とは関係ない事が昨今特に多い。

その自動車の本質的な性能とは関係が無いのだ。

大変失礼な言い方だが、単にお絵かきであるとも言える。

僕自身、スタイリングの好き嫌いはあるが、それで車を選んだことは一度もない。

スタイリング以上に優先事項がたくさんあるからだ。

 

やっとAURAの話。

MCに際して外観に関する制約がいくつかある。

ヘッドライト、ボンネットは変更できない。ボンネット下のガーニッシュも変更できなかった。

フロントフェンダーも変更不可。

リアはバックドア変更不可、バンパーのみ変更可能。

そして一番大きな制約はデジタル Vモーションの採用が必須であったこと。

NOTEの方は縦に伸びるVモーションの意匠を廃止し、セレナっぽい方向にシフトした。

凹みとモールをくっつけてそれを表現した。

バンパー下のエアインテークを横方向に広げて広がり感、安定感を出し、特徴的な縦スリットを廃止した。

さて、AURAの方は下まで伸びるVモーションはそのまま残し、ヘッドライトの下にVモーションの意匠を設定した。

その形状は何ら必然性が無く、先述したお絵かきの範疇である。

セレナのデジタルVモーションがヘッドライトとグリルの融合という、デザイン的必然性を感じさせるため、

違和感は無いが、AURAはそれをイメージさせる形を置いてみただけだ。

それ故、何も説得力がなく、無駄なものが張り付いていると言う印象しか受けない。

申し訳ないが、車会社のデザイナーの仕事と、小学生のお絵かき位のレベルの差がある。

グリル同様、その意匠は左右対称であるが、一つとして形が同じではなく、面を変えて光の当たり方で微妙に

表情が変わるようにしている。そうしないと何とものっぺりと見えてしまうから。

グリル面積が大きくなり、MC前の引き締まった印象が薄れてしまった。

日産のデザインコンセプトはTimeless Japanese featurismと言われているが、何も水引きや

組子細工を採用するだけではない。

日本文化特有の美学意識である”侘び寂び”を取り入れる事でもあると思う。

まさにARIAはその方向でデザインされ、同様にNOTEも意識されたが、この装飾グリルはそういったコンセプトを

忘れしまったようだ。

またNOTE同様にバンパーの縦スリットが消失したため、オーバーハングの長さを誤魔化すために

バンパーにえぐりを入れて変化を与えてその解消を狙っている。

何故縦スリットを辞めたのだろうか?

空力的に優れていると思うし、何よりも日産車の新しい特徴になりうる処理だっただけに残念である。

思ったほど空力的に効果がなかった、穴を開け、空気の流れをControlするための開発Costの削減等が

その理由だろうか?(バンパーの形状が変われば見直しが生じる。穴開きよりも無しの方が空気の流れの

可視化は容易だし、Controlもし易い)

いずれにしろ、NOTE、AURAにあった緊張感や、コンセプトがフロントから失せてしまった。

残念である。

何とも残念な顔立ちになった。洗練もされていないし、格好良くもない。 デジタルVモーションに感化され過ぎ。

何か"デジタル"なのか不明だし。

 

リアの変更点はバンパーだけ? 軽快さが失せ、重くなった印象。

やはりこちらが良いですよね。精悍だし、緊張感あるし、無駄なく、洗練されていたと思います。

 

インテリアは使い勝手の向上と、質感向上が主眼。

まあ、金掛けない際の常套手段である。

 

PUに関しては特にAnnounceが無く、走りに関連する変更は行われていないようだ。

通常乗り心地の改善、PU制御の見直し、燃費改善など盛り込まれても良いと思うが、日産のこの姿勢は

相変わらず表面的な薄っぺらいものだ。

金をかけないことに関してはゴーン体制の悪しき慣例が残っている。

 

総じてやらなくても良い事をやったと言う印象。

MCだって金がかかるのだし、こんなになるぐらいならもっと消極的なMCでも良かった。

おそらく見えない所でCost Cutが激しく行われているはずなので、もし在庫車があればそちらを狙った方が

良いと思う。値引きもするし。

一点良い所がある。

Bodyサイドの面が鉄板の影響か、塗装の影響か分からぬが、そこに映る景色・陰影がもやもやしており、

どうにもスッキリしなかった。

ところがMC後のサイドはようやくそれらが普通に写り込むようになっていた。これはNOTEも同様。

(まだMAZDA 2に追い付いていない)

日産も何も言わないし、こんなことどこにも書いていないが、少なくともCostをかけて改善した部分だ。

ここだけはようやく通常のレベルになった印象だ。

日産のHP見てもカタログを見ても修正されていて全く分からないけど、実車を観察した結果、

改善傾向にはある。似たような面を持つアリアには到底及ばないが。

NOTEだけどサイドの映り込みが酷い。この波の出方は一体何が原因なのか?

若干波打ってますが、一応ラインが出るようになった。少しはまともになったようだ。

実車を見ても目を覆うようなものではなくなった。

 

フロントプロジェクションイルミネーション

“離れたところからでもインテリジェントキーのボタンを押してドアをアンロックすると、シグネチャーランプに連動して車両前方をライトアップ。AURAの印象的なグリルをデザインした光のアートを路面に映し出してお迎えし、ドライバーの所有感をくすぐります。”

およそ6万円也。Optionです。

こんなのが投影されたら恥ずかしくなるのが普通の感覚だと思う。

もう少しセンス良いものを照らしておくれ。

 

恥ずかしながら僕の車にも付いています。

ウェルカム・ライト・カーペット:クルマのドア周辺を白い光で照らし、乗員をエレガントに迎え入れます。

エレガントに迎えてもらっているらしい。こんなモノ3回見て飽きた。

 

 

新意匠のホイール

水引きの表現なのか知らんが、デザイナーの陳腐な発想がこんなホイールを生む。

アルミにするのは軽量化が主な理由だが、全く軽量化の方向でデザインされていない。

またリムに向かってスポークを細くするのが物理的見地からの常識だが、そんなことは一切考慮されていない。

リム付近のスポークが太く、重ければ、バネ下重量重く、慣性の法則によってドタバタする。

機能美が一切感じられず、単に性能を落とし、デザイナーの意思を優先させたこのデザインは

最低の部類に入る。

車を置物や飾り物と考えているのだろう。

敢えて良い所を探せばホイールがフラット気味なので、空力的に有利?

 

駄目駄目ホイールの例

外に向かって太くなっています。手足の末端が太いのはのんびり歩く生き物だけ。

俊敏な動物の末端は皆細くなっている。

 

理想的なホイール

さすが!これぞ機能美!