こんにちは!

 

2024年の初観劇は「ひばり」でした。

昨年12月24日初日に続いて、今期2回目の観劇記録です。


門松が嬉しい自由劇場。

創立70周年記念の節目の年に約11年ぶりの上演、フランスの劇作家ジャン・アヌイの戯曲で、1957年の初演以来、周年記念などの折に大切に上演されてきた劇団四季の珠玉のストレートプレイ。

 

1回目の記録は👇

 

 

Wキャストのシャルル7世は、この日も田邊真也さんでした。

 

【この日のキャスト】

ジャンヌ  五所真理子

コーション 道口瑞之

宗教裁判所大審問官 味方隆司

主任検事 飯村和也

ラヴニュ 鈴本務

ウォーリック伯  阿久津陽一郎

シャルル七世  田邊真也

王妃 小林由希子

アニエス 宮田 愛

ヨランド王太后 中野今日子

ランス大司教 星野元信

ラトレムイ 福島武臣

ライール  金久烈

ボードリクール 勅使瓦武志 

ブードウス 正木棟馬

ジャンヌの父親  林和男 

ジャンヌの母親 大橋伸予

ジャンヌの兄 戸高圭介

死刑執行人 木内和真

シャルルの小姓 近藤合歓

 

男性アンサンブル

 香取直矢 鈴木貴雅 橋岡未浪

女性アンサンブル

 秋山知子 佐和由梨 徳山稚子 中川奈々美  柳 葉奈 山崎遥香

 

あくまで個人の感想です、間違いや勘違いが多々あると思います、よろしくお願いいたします。

 

入場すると既にシンプルなセットが舞台に設えられています。
この日は6列目サイドからの観劇、オペラを使わなくてもキャストの表情が良く見える席です。
 
1431年、イギリスとの百年戦争真っ只中、フランス・ルーアンにて、ジャンヌ・ダルクの宗教裁判が始まります。
神の声を聞いて軍を率いイギリス軍と戦い、結果大きな敗北を負い、宗教的に異端の嫌疑をかけられた19歳の少女ジャンヌ。
 この物語はその裁判の最中に彼女の生涯が演じられる、という劇中劇の形を取っており、誰もいない舞台に三々五々登場人物が現れ、所定の位置に着きます。
 
ピンマイクの着用なし、2階席奥にも声が届くように、恐らく舞台上に集音マイクはあると思います。
確かに後ろ向きの時は声がこもり、こちらを向いている時ははっきりと聞こえる、小劇場でのストレートプレイならではの臨場感です。
この日の席は6列目サイド、前方席でしたので、ほとんど地声で台詞を拾うことができました。
 
私は野村玲子さんの「ひばり」を何回も見ていたので、今期、初日は玲子さんのジャンヌが浮かんでしまう中での五所真理子さんのジャンヌでした。
小柄という部分を除いてはまったくタイプの違う五所真理子さんのジャンヌが大好きになり、五所さんのジャンヌをもう一度早く見たい!という気持ちを抱えて臨んだ今回の「ひばり」。
初日より確実に様々な表情を吸収し、ジャンヌとして生きている五所さんにさらに魅せられました。
 
故郷ドンレミ村での兄との戯れの無邪気なこと、天啓を受けた時の大天使との会話の厳かな声色使い。
ラ・イールとの回想では受ける金久さんのお芝居が見事なこともあり、まるで二人の周りに朝の光と匂いたつ緑が見えるようでした。
勅使瓦さんボードリクール、田邊さんシャルルの説得と煽動の緩急交えた躍動感は、五所さんジャンヌと気持ちを合わせ、こちらも沸き立つ感覚に。
初日より会話がテンポ良く感じたのは、目の間で展開されているからなのか、それともキャストのこなれによるものなのか。
両方だと思います、とにかく過去一番、会話にのめりこむことが出来ました。
 
裁判での道口さんコーション司教との丁々発止のやり取りでの緊迫の中、初日同様止めどなく流れる目から鼻からの涙、でも台詞は全く乱れない。
飯村さん主任検事の俗物そのものな追及や挑発にはたじろぎもしないジャンヌ、赤いスポットライトを使った主任検事の内面の滾りの表現が見事。
飯村さんの見せ場、盛り上がるシーンです。
 
また阿久津さんウォーリックと道口さんコーションの会話のシーンでは光と影のような絶妙な佇まいの違いにときめきました。
声質も佇まいもフランス陣と一線を画す、阿久津さんの俳優としての持ち味がウォーリックとして十二分に発揮されます。
登場時のライトな雰囲気もしかり、物語がクールダウン、空気が変わります。
彼との会話の後、覚醒し「改宗はしない!」と衛兵を探しに行く五所さんの毅然とした姿、これから待つ悲劇を知っていても溜飲が下がる思い。
火刑台のシーンでは、少しだけ眉を寄せて目と十字架を握りしめた手で覚悟を表す五所さんジャンヌと、苦悶の表情をこちらに向ける道口さんコーションを同時に確認、この二人のある意味闘いのケリが確認出来て心震えました。
 
自分の出番までただただ中央の芝居を注視するキャストも、脇の皇太子席であれこれ反応するシャルルと取り巻き、わずか3回ほどの台詞のないアンサンブルの登場シーンも、大いに意味のある舞台上の重要なファクター、全て一同にチェック可能な視野を確保された前方席での観劇は、やはり没入度が違いました。

星野元信さんランス大司教の慌て顔静止画の1幕ラストと2幕始まりのリプライズ、福島武臣さんラ・トレムイとの凸凹コンビぶり、愉快な爪痕残してくださいました。
登場時から目を引かれる全身赤タイツ姿の死刑執行人は木内和真さん、「オペラ座」アンサンブルの時は気づかなかったけれど、意外にもガタイがよいのに驚き、マスクの下から見える大きな瞳と押し殺した不気味さが美味しい役どころ。
旗持ちなどでたびたび登場する衛兵の中に神永東吾さんがいる!と思ったら、やっぱり鈴木貴雅さんでした、似ています。
 
かって、ここまで注意深く、様々なシーンで思いを馳せながら「ひばり」を見たことがなく、今回のキャストの芝居と存在感に惹きつけられている自分を思いきり感じることが出来たこの日。
 
ほぼ10年に一度しか上演されない、劇団のシンボル的この作品の舞台に立っていること自体が四季の俳優として誇らしいことであることは間違いなく、カテコでのキャストの晴やかにして厳かな表情を見てまた感慨に浸るのでした。
五所さん、シャルルのマントの裾を踏まないように、べっちさんの前に捌けるようになったのね。
よかったです。
 
さあ、今度の観劇日には笠松哲朗さんのシャルルが見られるかな?
この日は早々とアナウンスが入り、スタンディングオベーションにはなりませんでしたが、連日いかがなのでしょうか、ちょっと気になります。