ようやく手術(カテーテルアブレーション)が終わる

尿道カテーテルが正確に装着されていないことに気づいてから、40分くらい経っただろうか。地獄の我慢大会は、医師の一言で幕を閉じた。「もうそれ以上やったら危ないから、終わろう」。手術の痛みの他に、腹部の痛みと尿意の我慢の限界を考えると、本当にほっとした瞬間だったが、医師の一言は私に充分な不安を与えた。やり切った感がない。しかたなく終わるのだ。

 

アブレーション終了後、すぐに看護師が尿道カテーテルを装着しなおした。スーッと腹部の痛み、重みが消え、尿意もなくなった。まさに地獄から天国。看護師は「大丈夫ですか?」と心配そうに気の毒そうに言った。その様子を見ると、尿道カテーテル装着を失敗される患者は滅多にいないのだろうと思った。

 

 病室で

病室に運ばれた。指示がでるまで、絶対安静で動いてはいけない。両足の鼠径部に硬い何かがしっかりと固定されている。酸素吸入をされた記憶がある。とにかく終わったのだ。深い安堵に包まれた。結局、手術時間は3時間半以上だった。

 

発作性上室性頻拍を発症してから、いずれカテーテルアブレーションを受けなければいけないと思っていた。しかし、決心がつかず、発症から3年が経った。やらねばならぬことをやり遂げた達成感のようなものさえ感じた。

 

2時間後、看護師が鼠径部に出血がないかを確認し、寝返りをするよう体を動かしてくれた。問題ないようだ。手の届くところにスマホがあったので、一応家族に、無事であることをラインで伝えた。手術前の説明では、コロナ禍で患者以外は一切、病院に入れないので、終了したら、医師から家族に電話がいくことになっていたのだが、実際はなかったようだ。

 

家族は手術は1時間から2時間で終わると思い、医師からの連絡を待っていたが、5時間が経過した時点で、ありえない、何か緊急事態が起こり、開胸手術になったのではと、病院に電話をしたそうだ。受付では、手術終了後、医師から電話がいくと繰り返すばかりで、家族の不安は高まり、高齢の母は具合が悪くなったようだった。私はそんなことになっているとは知らず、一応連絡しただけっだったが、家族は安堵の大騒ぎになったらしい。

 

その後、さらに時間が経過し、食事が運ばれてきた。食事も問題なく食べることができた。尿道カテーテルを抜いた後、少し歩くことになった。記憶が定かではないが、鼠径部に激しい痛みはなかったと思う。おそるおそる足を動かし、ゆっくり歩いた。

 

 医師の説明

医師が説明にきたのは、絶対安静の時間だったか、寝返りができるようになった後か、食事の後だったか記憶は定かではない。しかし、メモをとったりできず、目だけ動かしていた記憶があるので、食事の前だったかと思う。

 

医師は手術の内容を説明した。私は疲弊していて、集中力がそんなになかったように思う。ただ、話を聞いていて、あまり明るくないと感じた。私は医師が一通り説明した後、聞いた。「先生のお話を聞いていると、私は、その残念な3%に入るかもしれないですね」(私の場合のカテーテルアブレーション成功率は97%と言われていた)

医師は、「(そう)でしょー」と言った。いささか軽いノリではあるが、私は嫌いではない。医師は私よりずっと若いし。医師もおそらく成功だろうと思いつつも、もしかしたらダメかもしれないという気持ちが少しあったのだろう。そこに私の発言で、上述したような言葉が思わず出たのだと思う。

 

予想はついていた。アブレーション終了時の言葉が物語っていたから。それに、私は理解している。入院前、かかりつけの循環器内科の医師に、カテーテルアブレーションについて色々聞いた。その中で医師が、焼きたい部分が心臓の正常回路に非常に近かった場合は、無理にできないと話していた。一か八かやってしまえとはならない。下手をするとペースメーカーになってしまう人もいるそうだ。だから、医師が慎重にこれ以上は進めないという判断をしたのなら仕方ないと思う。

 

手術が終わり、ほっとしたけれど、今後どうなるかわからない不安はあった。97%の成功率なのだから、大丈夫な可能性だってある。手術前と同じく、もし、ダメだったとしても、必要以上に落ち込まないように自分に言い聞かせた。

 

その夜、テレビのニュースでは、いよいよロシアがウクライナへ侵攻かと盛んに伝えていた。2022年2月22日の夜だ。せっかく私は手術を終え、安堵したのに、まさかと思っていたけれど、ロシアは本当にやるのかと何ともやりきれない気持ちになったのを覚えている。(その後、ロシアは24日に侵攻を開始した)

 

この時は、ウクライナで沢山の民間の死傷者がでて、2年以上経っても終わらない戦いになるなんて思ってもみなかったし、2か月後には、また発作が起きるなんて思ってもみなかった。

 

次回へ続く。

退院【発作性上室性頻拍⑪】

 

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手術(カテーテルアブレーション)当日<前編>【発作性上室性頻拍⑨】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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