血の系譜(逃亡)
三木助を継いで貰う必要ないとわかった結婚だったが『じゃあ』と帰るわけにもいかない。
夫なる人の同期や下にあたる前座さんが毎日10人以上新居にたむろする。
麻雀したり酒飲んだりポーカーしたり8畳に6畳に6畳のキッチンそこで合宿みたいな生活だった。
あまり夫なる人はいなかった。
彼は酒が好きで外で酒を飲んではその後ソープへ通っていたらしい。
楽しかったがこんな生活で良いのだろうか?
私はずっと矛盾と戦った。
結婚して半年ちょっとたった1月2日は小さんの叔父の誕生日で弟子一同はもちろん孫弟子も集まる。
夫たる人はもちろん孫弟子だ。
その日帰ってきた夫は4~5人の仲間を連れて帰ってきた。
彼の当時の欠点は酒癖が悪かった。
帰るなり私に絡み出した途端私は一気に日頃の悩みが爆発した。
家に帰ろう!しかし出口は1ヶ所玄関のみのマンションだった。
そこは悪暗漂う二人の様子にしっかり連れられて来た仲間にガードされていた。
私は奥の部屋に押し込められた。
ネグリジェにガウンでベランダを見た私は雪の降る3階の窓から地上がすぐ近くに思えた。
子供の頃八幡様で飛び降りて遊んだことを思い出した。
中学生で5段階で体育2、高校でも10段階で体育は2だった過去はすっかり忘れベランダの洗濯機から私は『家に帰ろう』と飛び降りた。
しかし気が付くと誰かが何か言っている
『自分で飛び降りたんですか?誰かに突き落とされたんですか』
『いえ自分で家に帰ろうと思って…いたたたた~痛い』
どうやら失敗したらしい。
救急車に乗せられているようだ。
私は両足の骨折と骨盤損傷で病院に運ばれた。
それは昭和53年1月3日の事だった。
平成13年1月3日弟が亡くなる33年前の出来事だった。