ポケットに入れた子猫のこと | よきかなのブログ

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もう、18年も前になります。

 

夫のガンが再発した頃。

 

同居していた義母も体調を崩し病人を二人抱えて、途方に暮れていた40代最後の年の梅雨の頃。

 

勤めていた会社の建ものの階段脇で、小さな猫が必死の鳴き声を上げていました。強い雨がしぶいて、体が濡れていました。耐え難い空腹の為か、濡れるのもいとわずに、通りかかった私の足に縋りつきました。とても大きな声で鳴きながら。

 

もともと、この建物の内庭には、数匹の猫が住み着いていました。その中のどれかが生んだ子供でしょう。

 

余りにも必死な鳴き声だったし、冷たい雨に濡れそぼっている子猫がとても哀れになって、置き去りにする事が出来ず、気が付いたらコートのポケットに入れていました。そして、雨の中、自転車を飛ばして家に帰りました。

 

元々家にいた猫の白ちゃんは、私が子猫をポケットから取り出すと、「シャー」をして、逃げて行き隣の部屋の押し入れの奥に隠れました。

 

濡れている子猫を拭いてやると、子猫はずんずん私の体を上ってきて、ついには私の顔に到り、懸命に私の頬を舐め始めました。私は泣いていたのです。子猫は私の涙を舐めてくれました。

 

缶詰をあげるとすごい勢いで食べて。その空腹がどれほどのものだったかだったが偲ばれ、胸が痛みました。

 

少し落ち着くと、子猫は私の膝に登って、毛づくろいを始めました。私も落ち着いてきたのですが、それに従って、後悔の嵐が襲ってきました。

 

うちの白ちゃんが子猫を受け入れない場合、どうするつもりなの??

 

そして、シロちゃんは、子猫を受け入れませんでした。もっと時間をかけて、順々に馴らして行けば、上手く行ったのかもしれません。私にその余裕がありませんでした。

 

困り果てた私を見かねて、友人が養子先を見つけてくれました。

数日後、その友人が子猫を引き取りに来ました。

 

10日間くらいしか家にいなかったのですが、人懐こい、元気いっぱいな子猫でした。友人の家を設計した建築士さん(訳あって独身)に引き取られたと聞きました。

 

数か月後に、大きくなった猫さんの写真を貰いました。建築士さんが付けた名前は「とらきち」君。おくち周りの「泥棒柄」と、きつめのアイラインが特徴です。友人は「面白い顔をしている」と言って笑っていました。

 

 

その写真が出てきました。多分、とらきち君も、白ちゃんと同様、虹の橋を渡っただろうと思います。

 

そして、今一緒に暮らしている クゥーちゃんは、その友人から引き取ったのです。あの時の恩返しの意味もあります。