「野生児」と呼ばれれば振り向くのは私でございます | 鹿吉の徒然なるままに by Shicayoshi Cake Lab.

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ひとつひとつを丁寧に、食べてくださる方を想って焼き上げる、を信念に掲げた焼き菓子屋の徒然なる日々を綴っております。

すっかり念頭から外れていた予定があってブログの更新が出来なかった鹿吉です。

こんばんは!

 

朝一で母とその日一日の予定を話し合うのが恒例なのですが、昨日もいつものように「今日のご予定は?」と互いで聞きました。

 

「私はひたすら焼く予定」

 

「お母さんはねぇ…えっと片付け……え?????」

 

どうやら予定表を確認していたらしい母の驚く声に私も自分のスマホのカレンダーを確認することにしました。そしてふたりで行かなければならない予定が入っていたことに気付き、急遽出掛けることになったのでございます!

 

予定されていた予定外の約束に時間がなくなり、ブログが書けませんでした。

ごめんなさい!!!

 

さて本日はお転婆と形容して果たして正しいのか、謎な私の小学生のときの話をひとつ。

 

私の住んでいたところは田畑の多い田舎だということは以前にも書いておりますが、実は大きな河川があり、しかも河口に近かったため、海もあったのです。

 

川で遊んだり、海で楽しんだり、というのがとても身近にあった贅沢な土地でした。

 

けれど川遊びも海での遊びも大人がいなければご法度だったのは今も昔も変わりありません。

危ないですし、一歩間違えれば本当に命の危険もあります。

当然、親は「一人で遊んではいけません」と川も海もお遊び禁止区域に指定しておりました。

 

とくに海は近いと言えど「学校区外」でしたから、おいそれと小学生が一人で行っていい場所ではなかったのです。

 

けれど当時の私にそんな大人の常識ルールは通用しません。

 

私が遊びたいと思えば遊ぶのが正しく、私が行きたいと思えば行くのが当然なのです。

 

ですから本当に海にもよく行きました。

学校から帰るなり、玄関でランドセルを背中から落とし、その勢いのまま鉄砲玉のように飛び出しては襟首掴まれておやつだけは手渡され、遊びにへと走りました。

 

海辺で食べるおやつは最高でした。

 

潮風の香りが鼻先を掠め、少し荒いかな、と思うくらいの風が長くもない髪をボサボサに撫でていき、遠くで漁船が海を切るように走っているのが見えるなか、母が私の帰宅になんとか間に合わせて用意してくれた蒸し芋を齧ると、あまり好きではなかった芋が驚くほどの甘露と感じられたものです。

 

逸る気持ちのまま、砂浜に投げ出された自転車。

砂の上に落ちている剝いたばかりの芋の紅い皮。

無造作に投げ出した自分の両足。

その傍を小さな蟹が少しだけ慌てた様子で横に進む姿が、今でも瞼の奥に蘇ってきます。

 

芋でエネルギー補給をした私は空を見上げます。

 

まだ夕日までは遠い太陽を確認した私は靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ捨て、スカートの裾をパンツの中にたくし込んで意気揚々と海へと向かうのです。

 

これが私の日常でした。

 

海でも川でも様々な一人遊びをしましたが、あまり泳ぐことはしませんでした。

川で泳いだものの危うく海に流されかけたとき以外では数回あるかないかにございます。

というのもルール無用の私ですが、ダメなことは理解していたのです。

ダメだということをしてくれば当然叱られる、ということは理解できていたので、子供ながらにバレない程度に遊ぼうと努力をしておりました(笑)

 

努力する方向性がかなり違いますけども。

 

全身濡れ鼠で帰れば泳いできたと怒られますが、少なくとも足元くらいなら然程怒られないだろうと思っていたのでございます。小学生の浅知恵でございます(笑)

一人で海に行った、という事実だけで充分に「叱られ案件」だということには気付いてなかったんですね、おばかさんですから(笑)

 

ですからこの日も泳ぐわけではなく、膝まで海に浸かりながら魚を掴んだり、貝を獲ったりしておりました。

 

魚はなかなか難しく、そのあたりに落ちているもので罠を作ったりしましたが、捕まえるのは本当に大変でした。エビみたいに後ろに跳ねるのが予測できる生き物と違って、魚は前後左右、わりと自由に動けるので。

 

たまに掌に飛び込んでくるような間抜けな魚を両手で捕まえると、興奮で鼻血を噴くかと思うほど嬉しかったものにございます。

 

確実に獲れるのはやはり貝でした。

それもアサリやハマグリ、ときどきミル貝みたいなものも獲れました。

獲った喜びはあれど、達成感の少ない貝はあまり好みではありませんでしたが、魚が捕まらないときは必ず貝を獲って気分転換しておりました。

 

楽しかったのです。

その単純な遊びがとても楽しかったのです。

 

気付けば太陽が大きく傾き、空を焼く真っ赤な夕日へと転じておりました。

その空を飛ぶカラスが一声、「カァッ」と鳴きました。

 

カラスが鳴いたら帰りなさい、という母の声が頭に響き、私は収穫物を一切海に置いて帰りました。持って帰れば海に行ったのがバレると思ったからです。

 

ただいま!と元気よく玄関を開ければ、いつもよりも遅くなった私を待っていた母が仁王立ちしておりました。

カラスが鳴いたら帰るルールは近場だから成り立つもので、さすがに学区外に行けばいつもよりも遅くなります。それはそれは母も心配したことかと推察します。

 

「どこに行ってきたの?」

 

腰に拳を当てたまま母が問えば、私は「その辺…」と答えます。

けれど私の全身からは太陽と潮の香りが立ち昇るように香っていました。

 

「ウソつきなさい!!!」

 

臭いに敏感な母の鼻を誤魔化すことは不可能で、すぐに海に行ったことはバレました。

 

「どこに行ってきたの?!」

 

先程よりも強い口調で問質され、私は「海…」とだけ呟きます。

そこからは海には行ってはいけないとどれほど言えばわかるのか、とどれほど危ない場所なのか、と散々の小言と説教が続きました。

「ごめんなさい」と口にしながら、すべての説教を右から左へスルーしていた私はただひたすら俯いておりました。

 

すると聞いていないと判断したらしい母がため息一つ吐いたあと、

 

「なにをしてきたの?」

 

と質問してきました。

私はやっと説教が終わったのかと、顔を挙げて

 

「貝を獲ったの!」

 

と正々堂々と宣言しました。

母は手ぶらの私の両手を視線だけで確認してから

 

「獲ってきた貝はどうしたの?」

 

と渋面のまま続けました。

持って帰ってくれば海に行ったのがバレると思ったから置いてきた、と答えた私に母はさらに眉を顰めて言いました。

 

「バカね!持って帰ってくればお味噌汁くらいにはなったのに!!」

 

…あ、食べてくれるんだ……

 

なんとなく釈然としない気分になった私は今日も元気に焼いております。

アメリカンクッキーのチョコレートにございます。

クルミと自家製レモンピールが苦味の強いチョコレートとの相性が良く、珈琲のおともにしたら際限なく食べてしまう焼菓子にございます~♪

是非一度ご賞味くださいませ~

 

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皆様のご来店を心からお待ちしております♪

 

ちなみにこの「収穫物は持ち帰れば食べられる」ということを知った私は時折川でシジミを獲っては持ち帰るようになりました。

自分で獲ったものですから美味しく頂いておりましたが、どうやら大人的には美味しいものではなかった模様で、ある日、川のどこで獲っているのかを聞かれました。

場所を説明するなり、母の顔が曇りました。

 

そこは浄水場の真横の川で、当時普通に浄水場からの汚水が川に流れ込んでいるような状態だったそうです。

 

その付近での遊びは禁止で、その上流もしくはかなり下流なら目溢ししようということを言われた記憶がございます。

 

以来、その下流でシジミを獲るようになりました。

 

子供の、それはそれは自慢そうに獲ってきたシジミを無下に扱うことも出来ず、かといって食べるには少々抵抗のあった母はこっそりスーパーでシジミを買っては私の獲ってきたシジミとすり替えて食べさせてくれてました。

 

優し過ぎるッ!!!!!!

 

川遊びを禁止しても無駄な子供にシジミを獲ってくるなと言ってもダメだろう、という母の諦めと、それでも収穫したものを頂く尊さを教えたい母の優しさが滲む行為だったと思います。

 

もっともそれに気付いたのはずっと大人になってからでしたけども。

 

当時はただただ「私のシジミ、美味しいなぁ!」と暢気に思っておりました(笑)

 

本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

毎日、来てくださって本当に嬉しく思っております!

また明日も宜しくお願いいたします♪