始めにお断りしておきますが私はパンク防止剤の功罪論争に加わるつもりは有りません。

 

アメリカのスライム社製パンク防止剤が入ったタイヤのパンク修理の際に、英式バルブのプランジャーが腐食して短くなってしまっていることが有ります。下の写真がその実例です。

右の三本が腐食品。一番左は正常品。

 

以下に原因について私が確認した事のみを書いてみたいと思います。

先端の状態。実際の使用状態ではプランジャーには虫ゴムが被っているので、パンク防止剤に触れているのは先端部分のみです。なので先端が腐食して短くなっています。

 

スライム製パンク防止剤の成分をWeb検索した所、スライム社からSDS(Safety Data Sheet)を取り寄せた方がいらっしゃって、それによると グリセリン20-40%、セルロース<5%、ラテックス<1%との事です。

残りの部分は実際のパンク防止剤を見る限り水ではないかと思います。(割合は重量%だと思います)

グリセリンは冬季の凍結防止剤として入っていると思います(チューブ内で凍ってしまうと、パンク防止効果がなくなる、ホイールバランスが崩れて危険な事に成るなどの問題あり)。セルロースはパンク穴の詰め物として。ラテックスの目的は分かりません。

 

私は化学は全く分からないのですが、グリセリンが真鍮(黄銅)を腐食させるとは思えません。とするとほかに考えられる腐食の原因は電食です。

電食は電位差の有る(イオン化傾向の差)金属の間に水などの導電性の有る液体が有ると起きる腐食です。

しかし、英式バルブ付きチューブの場合はバルブステムもプランジャーも真鍮なので電位差は無いはずです。しかし、それぞれをヤスリで削りメッキを剥がして見た所、バルブステムは金色、プランジャーは銀色でした。これは真鍮の合金成分比が、バルブステムは銅が多い、プランジャーは亜鉛が多い合金が使われている為と思われます。

亜鉛が多い方がイオン化し易い(金属的に卑)ので腐食が起きる側となります。

 

本当に電食が起きるのかを実験してみました。

チューブのバルブ部分を切り取り、U字型に曲げて中に水(水道水)を入れました。水を入れた後にバルブのネジを少し緩めて(空気抜きの為)バルブのプランジャーまで水が達するようにしました。

 

試験サンプルは虫ゴムを短くしてプランジャー先端が水に接し易くして有ります。サンプル三本中一本はニッケルメッキをやすりで剥がして有ります。

写真は試験開始後一か月目の物。右端がメッキ剥がし品で白い析出物が多く付着しています。析出物は柔らかく拭き取ると簡単に落ちました。物質については不明です。メッキ品も表面が変色しています。

 

試験開始後四か月の状態。白い析出物は少なめです(ちなみに水道水は一か月目に取り出した際、交換しました)。

 

虫ゴムを外した状態。左端がメッキ剥がし品。明らかに表面が腐食しているように見えます。また、メッキ品もメッキが剥がれて腐食が始まっているように見えます。

 

以上ですが、試験は継続していますので、一年後くらいにまた経過報告をしたいと思います。

 

2020年8月追記

実験開始後1年経過時の状態報告をUPしました。

https://ameblo.jp/shibuya-bicycle/entry-12620674599.html