スライム社製のパンク防止剤が真鍮製のバルブプランジャーを腐食させてしまうのではないか?と言う事で、昨年の8月から簡単な実験をしています。ちょうど一年が過ぎた所での状態を観察しましたので報告します。

実験の目的と方法、1か月目と4か月目の観察報告を今年の1月5日にUPしていますので、その内容をお読みになっていない方は、

https://ameblo.jp/shibuya-bicycle/entry-12564586215.html

をまず読んでみてください。

 

及び、再びお断りしておきますが、私はパンク防止剤の功罪論争に加わるつもりは全く有りません。この実験も純粋に好奇心から行ったもので、この結果をもってどうこうするつもりは有りません。

 

内容を簡単におさらいすると、スライムパンク防止剤が入っているタイヤのバルブプランジャーが下の写真の様に腐食して短くなっている事が時々あります。パンク防止時が入っていないタイヤでは起きない現象です。

パンク防止剤の主成分は水で、他に真鍮を腐食させるような成分は入っていないと思われます。であれば原因は水による電食ではないかと思い、水道水で(ご存知のように純水は導電性が無いので)の試験を昨年の8月に始めました。

 

 

 

試験開始から1年後の状態報告

 

試験サンプル状態(プランジャーが確実に水に接触するように虫ゴムは通常より短くしています)

左の一本はプランジャー表面のメッキを剥がして試験を始めたもの、右側二本はそのまま試験をしたもの。

メッキ剥がし品は明らかに腐食して短くなっています。メッキ品はメッキが剥がれて腐食が始まろうとしている感じです。

 

メッキ剥がし試験サンプルと通常品(未腐食)の長さの比較。

試験サンプルは明らかに先端の丸い形状が腐食により無くなって短くなっています。

 

試験サンプルとスライム入り自転車から取り出した腐食品との比較

左:試験サンプル。 右:実車取り出し品。

 

先端部のUP

表面状態は良く似ています。腐食の原因は同じ理由と思われます。

試験サンプルは虫ゴムを短くしている為に変色している部分が長くなっています。実車取り出し品は液体に接触している端面のみ腐食しています。

 

メッキを剥がしていない試験サンプルの状態

左はメッキが完全に剥がれて本体の腐食が始まっています。右はニッケルメッキは剥がれていますが、下地の銅メッキがまだ残っています。この二本は製造メーカーが異なり、右の方が良いメッキが掛かっている様です。

 

以上によりスライムパンク防止剤が入ったタイヤのバルブプランジャーが腐食するのは、パンク防止剤の水分による電食の可能性が高いと思います。

 

バルブステムの状態について

バルブステム(チューブから出ている筒状の部品)は特に変化はない様です。前回、電食の原因としてプランジャーとの合金比率(銅と亜鉛の比率)の違いについて思い付きを書きましたが、本当にそうなのではないかなと思います。

 

パンク防止剤が入ったタイヤでもプランジャーが腐食しないことも有りますが、原因が電食であるとすれば、パンク防止剤がバルブ付近に滞留している時間が短ければ腐食しないのではないでしょうか。

パンク防止剤はチューブ内に充満しているわけではなく、恐らくチューブの容積の1/10 ~1/20位しか入っていないと思います。

なので腐食し易い(滞留時間が長い)のは、両立スタンドの付いた自転車の後輪の様に、駐輪時に車輪が自由に回転して、バルブの重さでバルブ部が下になりパンク防止剤がバルブ付近に溜まる場合の様な気がします。(まあ何はともあれ、チューブ内に水分を入れてしまうのはちょっとどうかなと思います。子供のいたずらじゃないんだから・・・)

 

実験はメッキ品の腐食進行状況を確認するためにもう一年継続します。虫ゴムは一般的な長さにしました。

 

2020年10月17日追記

1、腐食の原因ですがバルブステムとの電蝕では無く、黄銅特有の腐食形態である「脱亜鉛腐食」かも知れません。その為、試験サンプルに単体(バルブステムにねじ込んでいない)で水道水に浸漬した虫ゴム付きプランジャーを追加しました。

2、前回短期間ですが黄銅は共晶系の合金と記載しましたが、固溶体の誤りでした。