2014年の高知県と他県との県境を跨ぐ車道の全走破計画ツーリングも、四国の超秘境と言われる祖谷を取り囲む峠を越えるルートとなって来ました。
平家の落人伝説の残る祖谷は標高1500mを越える山々に四方を囲まれ、車道も1000mを越える峠に囲まれています。
■走行日2014年7~8月
そんな祖谷を囲む峠の中でも最も標高が高い絶景峠の落合峠にたどり着き、しばし景色を眺めながら小休止しました。
目に前の稜線は矢筈山(1859m)から黒笠山(1703m)で、祖谷を取り囲む山々です。
落合峠の景色を堪能した後は、国道439号線の落合の集落へと下って行きます。
急勾配の下り坂でへピンカーブが連続します。
下るというよりも、祖谷川まで真っ逆さまに落ちていくようです。
途中では徳島県側の交通会社の廃バスがありました。
前に見た林道沿いの廃バスの交通会社と同じ物だと思います。
道は“落合谷川”に沿って走るようになります。
その落合谷川に架かる橋の橋柱には“ふるやだにばし”とありました。
この橋にも、徳島市までの距離が表示されていますが、先ほどまで走ってきた深淵経由での距離となっています。
こうして、周囲をすっぽりと高山に取り囲まれたような祖谷に下りていきます。
そんな祖谷は平家の落人伝説で名高い所でもあります。
屋島、壇ノ浦の合戦で源氏に敗れた平家一門は安徳天皇を擁して、この四国山中の山村に落ち延びました。
平国盛は安徳天皇に随行しましたが、その平家の赤旗を所有している子孫の家が東祖谷に残っていると言います。
やがて、国道439号の 峠の名前にもなっている「落合」と言う集落に降りてきます
そこには落合深渕林道の表示が残っています。
ちなみに地区の表示では深淵となっていましたが、林道は深渕という漢字が使われています。
平地がほとんど無い地域で、平家の落人伝説もある集落です。
剣山を源流地とする祖谷川と、これまで下ってきた落合峠からの下り道に沿って流れてきた落合川とが合流しています。
東西に祖谷川の谷が延びており、その谷間にも古い民家が点在していて、平家屋敷もいくつか残されています。
そのため古き良き日本の風景が見られる地域となっています。
その落合の集落から、国道439号線を祖谷川沿いに下って行きます。
国道439号は徳島市を起点に高知県四万十市まで続く、四国の山間部を通っていく、まさに、秘境峠越え街道といってもいいほどの酷道です。
ここから、“京柱峠”へと向かいます。
国道沿いには徳島県の清酒芳水(ホウスイ)の看板がありました。
芳水は徳島県の北西部に位置する山紫水明の山峡にある三好市井川(旧井川町)にある酒蔵で、傍に流れる吉野川を“芳乃川”と詠み、その水を利用した酒の名を“芳水(よしみず)”としたそうです。
道沿いの古い建物には「439」という数字が刻まれていました。
この建物は何だったのか、これまで数回通っていますが、喫茶だったか美容院だったのかちょっと忘れてしまいました。
今は物置のようになっています。
“祖谷川橋”を渡ります。ここは旧東祖谷山村で、初めに通った祖谷川沿いのエリアは旧西祖谷村。
この2つの集落を合わせて祖谷といいます。
今は合併して三好市になっていますが、やっぱり昔の町村名の方がいいなぁ。
こんな山奥に市のイメージはどうしても似合いません。
祖谷川橋の橋柱にも徳島市までの距離が表示されています。
「至徳島138粁」、つまり138キロで祖谷川沿いの池田経由での距離だと思います。
「粁」はメートル千単位と言う表示でキロという意味です。
祖谷川橋のある栃ノ瀬の集落には西祖谷方面へ行く県道32号線の起点地があり、京柱峠方面へ行く国道439号線との分岐点があります。
大正時代になってやっと祖谷川沿いの道路が完成して、初めてよその世界と自動車で結ばれた祖谷ですが、それ以前は東の剣山方面にある小島(おしま)峠、これまで越えてきた桟敷峠と落合峠、西側にある水口(みずのくち)峠、寒峰(かんぽう)峠、これから向う京柱峠といった標高1000mを越える峠を細々と越える峠道で結ばれているだけでした。
そのため、他地域とは隔絶されていて、かつては飛騨の白川郷、肥後の五箇荘とならんで、日本の三秘境の一つとされていました。
栃ノ瀬から京柱峠への道は国道439号線の本性が出てくるルートとなり、古味の集落では明るく開ける区間がありますが、酷道と言われる狭く曲がりくねった急勾配を延々と進むことになります。
綴ら折れどころか、Uターンするようなカーブもあります。
初めて通った時には道を間違えたのかと思ったぐらい、国道と言うよりも舗装林道のような険しい道を進みます。
ただ、周辺の自然林の景色が気持ちよく、こうした道を楽しむ者にとってはこの区間は走りごたえを感じるかも知れません。
目指す京柱峠も祖谷を囲む峠の一つなので、急勾配の峠道を登るようになります。
その道は国道ですが林道を舗装した程度の狭さです。
グングン高度を上げ、峠に近づくにつれて山の間は深い谷底となって、山の稜線が近づいてくるのがはっきりとわかります。
稜線が近くなって視界が広くなったと思うと標高1120mで、徳島県と高知県の境の峠となっている“京柱峠”に到着しました。
四国でもトップクラスの絶景峠といっても言いほどで、落合峠と同じく観光化している感もあります。
落合峠のルート