昨日行ったミステリーツアーの最後の話。
この場所は特定させたくないので廃墟とだけ記します。
それは静かな場所にあるようでなかなかに車の通る音がするという不思議な場所だった。
その建物はとあることに使用されていた。
が、今は生きている人間は物好きな者だけが訪れるような場所になっていた。
建物の入り口にあったであろうガラスは割られ、誰が持ち込んだのかゴミとも言えるものが積まれていた。
建物の床は燃やされたのか黒く焦げ、ガラス片が散らばっていて夜中に訪れるとしたら怪我の心配をしなければならないような場所だった。
いつものように私が先陣を切って先に建物の中に入る。
見えない圧迫感を感じる、見えないものの視線を感じながら建物の中に入った。
昼前だというのになんとも言えない不気味さを放っていた。
が、心霊スポットになっている建物特有の落書きがアンバランスさを感じさせる。
しばらくして二人が入ってきた。
けど、気味悪がりしばらくは動かずにその場でそれぞれが周囲を見回していた。
この時、私は入り口から奥に進んだ場所にいた。
おたぬさんは少し進んだ場所にいた。
Jさんは入り口付近にいた。
私はその場所から奥が見えるのでどうしたものかと思案していた。
その場所から見えるのは廊下と開きっぱなしになった部屋のドアが二つと突き当りの間の壁に描かれた落書きだった。
その落書きはとても見事だったので行きたいと思いつつ躊躇していた。
というのもそこに行くまでの足元がどうにも危なげなのと待ち構えているものの言うままになるのが嫌だったから。
と、その時にJさんが「うわぁぁぁ」という驚いたような怯えた声を発した。
Jさんの方を見て「どうしたん?」と聞くと黒い人影がJさんの方に向かって突進してきたと思ったら上へと上がって割れた窓から出て行ったというのだ。
正直、Jさんの驚く声にびっくりした。
なのに私はそんなJさんを自分のいる場所に呼び寄せて奥に行くかという相談をした。
で、結局やめた。
理由は足が悪い中年女が二人とおたぬさんはサンダルというか雪駄だったので足元が危ないということで止めた方が無難だと判断したからだ。
事実、おたぬさんの雪駄の裏側にガラス片が刺さってたし。
これ、正直な話、夜に行ったらなかなかのものだと思う。
霊の溜まり場になってたしね。
で、外に出て周囲を少し歩いて驚いた。
隣が普通に民家だったから。
建物がそこそこの大きさなのと隣の民家がちょっと引っ込んだ位置に建っているので分かりにくかったのだ。
そこに住人もいるので引き上げて次の場所に移動する時にJさんが自分が見たものを説明してくれた。
それは驚いた声を発する前の瞬間の出来事だった。
その黒い人影は私がいた場所のすぐ近くから現れたそうだ。
そして一目散にJさんの後ろの出入り口を目指していたそうだ。
だけどJさんがいるからその出入り口から出ずに上に飛んだそうだ。
と、ここまではおたぬさんも聞いた話。
でもね、もっと詳しく聞くとこんな風に言われた。
「あの黒い人影、動きがおかしかったんや。
普通、霊っていうのは水平にすーっと移動するんやけど、黒い人影は何かに怯えて逃げるような感じで動きがおかしかった。
なんていうのか、あなたに怯えてというか怖くて逃げてた。
身体が生きている人みたいに、慌てて逃げるような感じで前かがみになってた」
私「なぁ、その黒い人影、腕をぐるぐる回してなかった?」
話を聞いてる時にその時の黒い人影の様子が頭の中に浮かんだのだ。
なんていうのか、人って腰を抜かすほどに驚いて逃げ出す瞬間って前かがみになりつつ両腕を振り回しながら移動したりするんだけど、まさにその通りの動きで、しかも出入り口だって思ったらJさんがいたのでぶつからないように上へと飛んで割れた窓から逃げ出した感じ。
と、Jさんに言われた。
「黒い人影っていうか霊は性質が悪いんやけど、あれはあなたが奥に進んでいったから慌てて逃げ出したんやで。
よっぽど怖かったんやろな。ものすごく慌ててたわ」と。
へぇーーーーー、私、そいつの事なんも気づいてなかったんですが。
突き当りの間にいる者の方に気がいってたんで。
てか、突き当りの間の手前にあった開きっぱなしのドアのところから感じる不気味さの原因をにらみつけてたもんで(笑)
ええ、私、立ってるだけで霊に逃げられるような人なんですわ。
それも悪霊に。腹立つわ。
奥の方にいたのは私が行かないのを見越したから挑発したんでしょうね。
過去にありましたわ。
挑発してくるおっさんの霊に腹立てて近づいたら土下座されたことが。
まぁ、私の後ろにずらずらといるのを見たらさぞかし恐ろしいことでしょうよ。
だって百鬼夜行みたいですからね。
ということでミステリーツアーの話はおしまいです。
一気に書き上げたのは旦那にばれないための小細工です。
なぜなら、旦那にばれると怒られるから。
私にとっては幽霊よりも旦那の方がよっぼど怖いですわ(笑)
最後までお付き合いいただきありがとうございました。(終)
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