此の世のものは全て幻という説を唱える哲学がある。仏教が代表的だ。色即是空、空即是色。マーケットの取引なんてもしかしたらそんなものじゃないかと思う。
今日、マザーズに上場したジェイコムという銘柄に、みずほ証券が誤って、61万株を1円で売る注文をしたという。本当は1株を61万円で売るはずだったという。
面白いのはこの会社の株が実際には1万株ちょっとしか発行されていなかったにもかかわらず、架空の売り注文が出されたその株が、あたかも現実に存在するかのように売り買いされて、ものすごいお金が実際に動いたのだという。そして、誤発注した証券会社の損は1000億になるとの観測もある。
この注文をしたのは誰かな?もしかしたら契約社員のOLさんかもしれない。顧客からの注文を受けてパソコンに打ち込んだのかもしれない。その人が1000億払えるわけがないから、会社が立て替えるんだろうけど、大変なことになったものです。
それにしても、お金そのものだって、紙でできているわけだし、それそのものには価値がないわけで、それを後生大事にしている我々は、幻想を信じ込まされているわけです。ましてや、コンピューター上のやりとりでは、なにがしかの価値はディスプレイに表示されるだけで、なんの重みも痛みも感じないわけです。私はものの価値や、お金の価値を大事にしろといっているわけではなく、皮膚感覚を離れたところで何かが決まっていくのがなんだか面白いだけなんです。
所詮、物事の価値には実態がないのかもしれないし、それにしがみついているというのも奇妙なことかもしれません。終戦後、リアルに必要だったのは食料だった訳で、都会のブルジョアたちが農村にいって食べ物を譲ってもらったというのが思い浮かびます。