そこへやってきたのはミヌ王子でした。
二人とも顔はそっくりですが、ヨン王子が黒髪でくせ毛、黒い瞳なのに対し、ミヌ王子はサラサラなブラウンヘア、琥珀色の瞳をしています。
「ミヌ王子・・・」
ウンスは顔を輝かせました。やっと運命の人に会えたのです。
「こんにちは。お嬢さん、お名前は?」と、ミヌ王子がウンスを覗き込みます。
「えっと、ウンスです」
ウンスが慌てて返事をすると、ミヌ王子は明るくにこりと笑って
「よろしくね、ウンスちゃん。落ち着くまでここで暮らすといいよ。わからない事があったら聞いてね」
と優しい笑顔で言いました。
横では仏頂面のヨン王子が何故か「うん、す・・・」と声を出さずに名前を復唱しています。
「あ、はい・・・ありがとうございます」
ウンスが顔を真っ赤にして言うと、ミヌ王子は「またね、ウンスちゃん」と、笑顔で去っていきました。
ぼんやり見送るウンスに、横からヨン王子の低い声が聞こえます。
「勘違いするなよ」
「え、何が?」
「ミヌはみんなに優しいだけだ。お前にだけじゃないからな」
「わ、わかってるわよ」
顔はそっくりだというのに、優しいミヌ王子とは正反対のヨン王子に、ウンスは少し突っかかるように言いました。
「それにしても、兄弟なのに性格が随分と違うみたいだけど」
「あいつは外交担当。俺は防衛担当。役割が違う」
ヨン王子は何でもないようにウンスをちらりと見ると、行ってしまいました。
その後、ウンスがお喋り好きの召使いを捕まえて聞いたところ、
このハン国という国は小さな国で、いつも大国のチュン国や、海の向こうのイルボン国に脅かされているということ。
女性にすこぶる人気のミヌ王子は海外のお姫様達を虜にして外交での融和を保ち、
戦の能力に長けているヨン王子は、王子自らが王様の近衛隊長としてこの国を剣で守っているということを教えてくれました。
そろそろ二人とも結婚しても良い年頃なのに、ミヌ王子が誰か一人を選ぶとなると、それこそ各国同士の摩擦が起きて戦争になり兼ねない。
ヨン王子は女性に全く興味がない様子で、お見合いの話しも全て断っているらしい、男色という噂もある。と、興味深い事も教えてくれました。