シンイ・ヨン周年まつり限定ぐるっぽ「天上のひと」 | 信の虹 ー신의 nijiー

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主に二次小説がメインです。ちま(画像)の世界も大好きです。
もしも私個人の空想の産物に共感してくださる方がいらっしゃったら、
どうぞお付き合いください^ ^

こちらはりえさんのシンイ・ヨン周年まつり限定ぐるっぽに載せたお話しです。(加筆修正しました)
画像作成主は恋藍さんです。
(恋藍さんのブログはコチラ→http://0f2350koiai.blog.fc2.com)
 
 
 
「素晴らしい…されど、画像をここから持ち出してはなりませんよ」byヨン
 
星が無数に輝く夜空に浮かぶメヒとヨン。なんて綺麗…とうっとりした後に湖面に映る二人を見て再度溜息。
素敵な画像にお話しを付けさせていただき、ありがとうございました!
 
 
 
シンイ・ヨン周年まつり限定ぐるっぽ「天上のひと」
 
 
生きてゆく意味がわからなくなり、途方にくれることがある。
そんな時、ヨンはよく宮奥の沢へ足を運び、その水面(みなも)を眺めた。
 
流れゆく穏やかな波に己の心を浮かべるように佇んでいると、次第に心が軽くなってゆく気がするのだ。
死にゆく為に生きている今の運命を受け入れられる心地になる。
 
その夜、新たな王を元国へ迎えに行く命が迂達赤へ下った。
 
 
 
元の国境から続いた船での移動が終わり、一行は陸路へ入った。
明日には王宮へ辿り着ける。
夜が明ける前、ヨンは王と王妃、そして天の女人の警護を再度確認すると、宿の外へ足を向けた。
山々に囲まれた湖。
王宮で眺めていた沢と異なり、湖面はひっそりとしていて風も無く、さざ波さえも見られない。
しかしその静けさが逆に心の慰めになる心地がして、ヨンは水面にじっと目を凝らした。
 
メヒ。
 
命果てるまでに、幾度この名を呼ぶのだろう。
置き去りにされた絶望は幾度も形を変えヨンの古傷をえぐったが、年月を経た今ではもう何も感じるものは無くなった。
それでも未だ僅かに心が生きているのか、時折やりきれなくなる。
 
漆黒の闇に光の砂を撒いたような満天の星空。そこへ懐かしいひとの面影が浮かぶ。
想いを馳せるうちにどのくらいの時が経ったのか、白々と夜が明けてゆく。
 
かさり、と遠くで草を踏む気配を感じてヨンは振り向いた。
天の女人。
天界の衣に桃色の上着を羽織り、草むらを一歩一歩こちらへ進んでくる。
歩を進める度に女人の赤い髪が弾む。
穏やかだったヨンの心が波立つ。ふいに逃げ出したい心地になる。
 
「目が覚めたら眠れなくなっちゃって。外の空気を吸いに来たの」
そしたら、あなたが居たから。と言いながら、笑うでもなく、いつものように怒るでもなく見つめてくる。
 
「警護の者はどうしたのです」
 
「あー、見張りの人?無理言って部屋から出してもらったんだけどね…あそこで、待ってもらってる」
 
示された先を見るまでも無く、そこには松明を手にした夜番の迂達赤が立っており、ヨンに向かって必死に頭を下げていた。
 
「ねえ、寝なくて大丈夫なの?それと傷口、いい加減見せてくれないかしら」
指をつんと一本立てて、ヨンの腹を指差す。
 
「しつこいな。平気だと言っているだろう」
 
ヨンが黙らせるようにわざとウンスに睨みをきかすと、ウンスも「あのねえ!」と負けていない。
が、その後の小言を続ける事無く、ふと食い入るように空を見上げた。
そして「わぁ…綺麗…」と誰に言うでもなく呟く。
 
夜明けを知らせる陽の光が、滲むように黒の世界に入り込み息を吹き返そうとしている。
ヨンもつられて、ゆっくりと広がって輝き出す夜明の空を見上げると、
先程まで見つめていた懐かしい面影は跡形も無く消えていた。
 
木々の枝葉が音を立てながら二人に優しい風を運んでくる。
明けない夜は無いのだ、と諭すように。
朝の光を含んだ湖の水面が、たおやかに揺れた。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 
 
 

 
 
恋藍さん、ありがとうございました。