破鏡重円〜再婚 11.想いの丈 | 信の虹 ー신의 nijiー

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ここは韓国ドラマ「信義」の登場人物をお借りして楽しんでいる個人の趣味の場です。
主に二次小説がメインです。ちま(画像)の世界も大好きです。
もしも私個人の空想の産物に共感してくださる方がいらっしゃったら、
どうぞお付き合いください^ ^


そういうことか。あの狸、逆賊に化けるつもりだったとは。
"医仙"として元に差し出すだと?
案内をするヘインの後を歩きながら、あまりの怒りにぐっと拳に力が入る。
このまま彼奴の首根っこを掴み、王の前に突き出してやろうか。
いや、奴は白を切るだろう。そして仮にも元の皇族の縁者だ。
王様も確固たる証拠が無ければ沙汰を下せまい。

「お預かりの品、こちらに御座います。どうぞ。」
ヘインが奥の部屋の前で立ち止まり、扉を開いた。
ヨンが怒りもさめやらぬままに足を踏み込むと、薄暗い灯りを灯した部屋には布団が一組。
派手な模様の掛け布団に、灯りがチラチラと反射している。
その奥に、鬼剣と丁寧に畳まれた外套が置いてあった。
何だ、これは。
そう思いつつもヨンは無言でのしのしと部屋に入ると、剣と外套を手に取った。
畳まれていた外套の下に、木箱が一つ。銀の塊がたんまりと入っている。
くだらない。鼻で笑って部屋を出ようとしたその途端。

「お待ちください。」
ヘインがいつの間に脱いだのか、下着一枚の姿で立っていた。

「何を、している。」
「お待ちください。
私に、、見覚えはありませんか。」
小さな顔に入り切らぬぐらいの大きな瞳。
赤く塗られた唇を、囁くように動かし、ヨンに問いかけた。
「儺礼の儀で、初めてお見かけした時から、、お慕いしておりました。」
…確かに、あの時鮮やかな舞を見せた妓生がいたが、、顔までは覚えていなかった。
ヨンは何も言わずに扉口へ向かった。
するとすかさずその背中に、温かい女人の体が張り付いた。

「一度でいいのです。」
外へ出ようとするヨンにすがりつく。
「一度だけ、情けをかけてください。」

キム・ギョン様と、ある約束をしました。
何度も身請けを迫るあの方に、私は条件を出しました。
チェ・ヨン様にお会いしたいと。あなたと一度でも情を交わせたならば、私は未練無くキム・ギョン様の物になりましょう、と。

「あいつの物になりたいのか。」
「いいえ。違います。ですがどうせ抗えぬ身なら、女として、生きてるうちに一度だけでも恋慕う方と想いを遂げたいと。」
「すまぬが、断る。」
短く答えて立ち去ろうとするヨンの手を取り、ヘインは声を大きくした。
「こちらを、見てください。」
私を、もう一度しっかりと、あなた様のその眼で見てください。
それでも帰るというのなら、お引き留めは致しません。
今後宮中でお見かけしても、もう二度と、目を合わせる事も致しません。

更にそれを無視して帰ろうとするヨンの袖をもう一度掴み、
「見ずに捨て置かれるつもりなら、この場で"無理矢理この姿にされた"と騒ぎ立てます。皆が何事かと見に来るでしょう。そうすれば屋敷内だけでなく、噂は宮中に、そして奥様の耳にも届くでしょう。」
薄い衣を一枚纏っただけの裸同然の姿で、瞳を潤ませヘインが訴えた。

馬鹿馬鹿しい。ウンスがそんな噂、信じる訳がない。
しかし、ヨンはもう面倒はごめんだった。
既にキム・ギョンの狙いも明らかになり、ここに長居する意味は無い。
ヨンは一刻も早くこの場を立ち去り、ウンスが待つ自分の屋敷に戻りたかった。
覚悟を決めて、後ろを振り返る。そして今すぐにここを去ろう。

灯りに揺られる艶かしい姿。
下着も取り去り、意を決した面持ちで瞳を潤ませるヘインが見えた。
が、すると突然、視界が揺らいだ。
一瞬の無防備をつき、そのまま前から抱きつかれ、肌が触れる。
「お酒に…媚薬を少々。本当に、申し訳ありません。
奥様をとても大事にされていると聞いたもので…念のため、卑怯な真似を致しました。」
ヨンは目を閉じ、丹田に気をやった。

「後生ですから。一度だけ。」
気を持ち直すと、ぼやけた視界が元に戻り、鮮明になる。
ヘインの頬を流れた涙が、その白い肌を伝わる。
すがりついてきた柔らかい身体の曲線の先に、腰のくびれがはっきりと見えた。