破鏡重円〜再婚 10.獣の根城 | 信の虹 ー신의 nijiー

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ここは韓国ドラマ「信義」の登場人物をお借りして楽しんでいる個人の趣味の場です。
主に二次小説がメインです。ちま(画像)の世界も大好きです。
もしも私個人の空想の産物に共感してくださる方がいらっしゃったら、
どうぞお付き合いください^ ^


キム・ギョンの屋敷に着くと、ヨンはテマンを外で待たせた。
迎えに出てきた使用人に外套を預け、中へ入ろうとすると、
「そちらの剣もお預かりします。」
「いや、これは。」
「お部屋にはキム・ギョン様と妓生の方々のみ。物騒な物はお預かりするようにと、仰せつかっております。どうか。」
深々と頭を下げられ、ヨンは再度、上を見上げて屋敷内の空気を読んだ。
手慣れの者が潜んでいる気配は無い。殺気も感じない。
何かあれば外のテマンが駆けつけるだろう。
「では。」
と、剣を預け、中に足を踏み入れた。

「おお、来ましたか。お一人で来られたのか?供も連れず。」
キム・ギョンは意外そうにヨンの顔を見た。
「ええ。某に話しがあると仰られていたので。」
さっさと用件を済ませたかった。一人の方が身軽に動ける。
「それで、話しというのは。」
ヨンは座敷に座るやいなや、切り出した。
「ほほ。せっかちな方だ。まあまあ、まずは先に酒を楽しんでからにしましょう。
ヘイン、チェ・ヨン殿に酌を。」
部屋の中の妓生で一番格上らしき者がヨンの側に座った。
キム・ギョンにも別の妓生がつき、ぴたりと横に侍っている。

「ヘインと申します。どうぞ。」
上品な手つきでヨンの杯に酒を注ぐと、しとやかに笑みをこぼした。
「ヘインは高麗でも稀に見ぬ美貌。芸に長け、才もある。
男なら誰もが望むおなごじゃ。此奴になびかぬ男は高麗中探しても居らぬじゃろう。」
そう言いながら、物欲しそうな目つきでヘインを見ると、隣に侍る妓生に、
「今宵はお前で我慢しようか。」と、顔を近づけ、赤く黒ずむ舌を出し、

べろり、とその耳を舐めた。
「やだ、旦那様ったら。」
「大護軍殿も、今宵は楽しんでくだされ。」

…気分が悪い。反吐が出そうだ。
このようなもてなしを、重臣達は喜んで受けていたのか?
ヨンは虫けらを見るようにキム・ギョンを一瞥した。

「お話しを、伺いに参ったのですが。」
ヨンが生々しい空気を凛と正すかのように言うと、
「うむ。では、大護軍殿、率直に聞くが、今の王様をどう思っておる?」
"今の"とは聞き捨てならない。
「チェ・ヨン殿は王様の腹心中の腹心。そなた無しに、今の王はここまで持ちこたえられたかどうか。」
「キム・ギョン殿。お言葉が過ぎるのでは。」
「はは。本当の事じゃ。そなたはもっと高い位にいてもおかしくない。
男なら、国で一番の権力を掌握したいと、誰もが願うものじゃろう?」
「某は、」
「なあ、チェ・ヨン。わしと共に、もっと大きな夢を見ぬか。
今の王では、高麗を強くするなどと言いながら元国に抗い、返り討ちに合うのがオチじゃ。それにあの王、お主無しには何もできまい。
わしと共に、そして新しい王と共に、この高麗を創り直すのじゃ。」
「何をっ。」
「まあ、最後まで聞け。
それに、医仙の身代わりにと、そっくりな女人を妻に娶ったらしいが、お主なら元の貴族を嫁に娶る事もできよう。容姿だけを求めるのなら、もっと器量の良いものはいくらでも居る。」それに。と、キム・ギョンは続けた。
「容姿が瓜二つで医員の腕もある女人ならば、"医仙"として元に差し出せば格好の切り札になる。どうじゃ、わしと手を組み、もっと高みを目指さぬか。」

ヨンは最後まで聞かぬうちに立ち上がり、
「剣を。返してください。」
と、キム・ギョンを見下げて、今にも殴りかかりそうな形相で、ぎろりと睨んだ。
「そう怖い顔をするでない。そなたもこの話しがどれだけ良い話しか、わかるであろう。考える振りをしたいのなら、少し時間をやろう。」
ヨンの気迫にやや押されながらも、ヘインに目で合図をしながら、
「今宵は楽しんで行かれよ。」
と、唇の端を上げた。
「いや、帰らせていただく。」
そのまま扉口に向かうヨンの後ろから、
「お預かりしている物をお返しします。こちらへ。」
と、ヘインが前に出て、廊下へ案内をした。