イラン政府のテロや要人の殺害に対する反応を見ていると、私は イスラエル政府よりも よほど大人の対応で、大規模な戦争になることは避けるように行動していることが見て取れると思っています。

 

まず、イランが今年になってから受けた大規模な挑発だけでも下の大きな事件があります。

 

●1/3、イラン南東部の都市ケルマンで、トランプ政権時代の2020年に米軍の無人機攻撃で殺害されたイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官の墓のある墓地で行われていた追悼式典中に爆発が発生。爆発は2回起こり、1回目の爆発でたくさんの死傷者が出てそれを救助しようと救助隊が駆け付け救助を行っている時に2回目の爆発が起こる という、死者の数をできるだけ増やそうという意図が感じられるテロ事件でした。結果、95名死亡、211名が負傷。当初「自爆テロ」との報道もありましたが、実際は 爆発は仕掛けられたもので、テロリストの遠隔操作によって爆破されたものということが分かっています。この時犯行声明を出したのが ISで、テロ実行犯2名のうちの1名はタジキスタン及びイスラエル国籍(二重国籍)だった と報道されています。

 

●4/1、シリアの首都ダマスカスにあるイランの領事館へイスラエルがF-35で空爆。

イラン革命防衛隊の司令官クラス7名を含む17名が殺害。

 

ISが犯行声明を出している事件もありますが、IS=米英イスラエルの子飼いのテロリストなのです。

なぜなら、彼らは米英イスラエルの敵であるシリアやイラン、先日はロシアに攻撃しましたが、けっしてイスラエル軍に対しては攻撃しません。

 

ISとシリア政府軍との戦闘で、イスラエルが不法占領しているシリアのゴラン高原へISのテロリストたちの「流れ弾」が飛んで行った時には イスラエル軍に謝罪したりしています。(詳しくは下の記事で解説)また、シリア南部での戦闘でISのテロリストが負傷した時にはイスラエルが治療しています。

 

 

 

ISのテロリストへと化けたイスラエルのユダヤ人。↓

 

ですから、イランもとっくに認識していると思いますが、ISの犯行=イスラエル工作員の関与濃厚 ということです。

 

 
今年に限らずだったら、イスラエルの諜報機関モサドはイランの地で爆弾テロによって核物理学者を殺害したり、何度も挑発をしてきました。
そして、アメリカは2020年トランプ政権の時にイラクでイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官をドローン攻撃で殺害しています。

 

1/3のテロ事件も被害者の数が多くてイラン国内で起きた最悪のものでしたが、4/1の領事館への空爆 というのは イラン領土への空爆と同じ意味を持ちますから、これに対する「仕返し」はどのような形になるのだろう・・・とイスラエルと米国も 内心恐れおののいていたのではないでしょうか。

 

そして、4/13夜に実際に起こったイランからイスラエルへの「仕返し」は 多数のドローンとミサイルをイランからイスラエルに飛ばす というものでした。しかも72時間前には近隣国全てに通告する という近隣国へのある種の”配慮”も行っています。

 

イランが発射したのは185機のドローン、110発の地対地ミサイル、36発のクルーズミサイルです。(Youtubeの History Legends のビデオからの情報)

 

 

イランが報復攻撃を開始すると同時にレバノンのヒズボラ、イラク、シリア、イエメンからも数十発のミサイルやドローンがイスラエル北部へと発射され、これらのいわゆる「抵抗枢軸」と呼ばれている親イランの同盟がほぼ同時にイスラエルへの攻撃に参加しました。

 

合計300数十発のドローンとミサイルは イスラエル軍発表では「99%迎撃に成功した」と言っています。しかし、実際は 米英軍のF-16戦闘機からのドローン撃ち落しの援護もあって、前半はほとんど迎撃できていたようですが、明け方近く、終盤のほうは アイアンドームも過負荷状態となって迎撃できず、何発も着弾するところがビデオに撮られています。(ご興味のある方は下のビデオをご覧ください)

 

 

 

そして、ガザやヨルダン川西岸、レバノン南部、シリアで民間人を殺しまくっている凶悪なイスラエルとは違って、民間施設や民間人を全く狙っていないイランは この300数十発のドローンとミサイル攻撃をもって、「シリアでのイラン大使館空爆への報復は終わった」と言っています。

イラン側が配慮して事前にアメリカにも通告していたこともあり、十分な準備ができたイスラエルは 民間人の被害も 子供1人が負傷しただけ と言うものでした。

 

つまり、さんざん今までイスラエルによって軍事挑発もされ、自国民や軍のトップ、科学者まで殺され、自国の領土と同じ扱いとなる領事館まで攻撃されたイランが「大人の対応」をして、「イスラエルがさらにエスカレートして イランやイラン大使館等を攻撃する等の行動に出なければ、イスラエルへの報復攻撃はひとまず終了したので、行わない。」と言っているのです。下のリンクはイランのニュース、PressTVからのものです(下のニュースのタイトル:イランは占領地域への報復攻撃は終結したと発表。イスラエルの反応を警告)

 

 

イランと米国は 明らかに この戦争を地域戦争にまで拡大はしたくないのです。

米国は シリアにあるイランの領事館がイスラエルによって攻撃された時、「アメリカは関係ないから、アメリカを攻撃しないでくれ」と即座に言ったことでも ウクライナと中東の2方面で同時に戦争はできない、アメリカのイランに対する弱気な反応が見えています。

US Has Told Iran It Was Not Involved in Damascus Attack, White House Says

(米国、ダマスカスでの(領事館)攻撃には関与していない とイランに告げた とホワイトハウスは言う)

 

そして、このイランとアメリカが直接連絡を取った時、イランは「イスラエルへの仕返しは必ず行うから、イスラエルから離れておけ」というようなことを言った と私はニュースで聞きました。(下のニュースのタイトル:イランは率直に「離れておけ」と米国に警告。イスラエルを200機のドローンで叩く)

 

 

そして、イランからの攻撃が始まる直前には十分な準備の時間があったので、米国の高官とイスラエル政府がイランの報復に対する対策会議を行っている とのニュースもありました。

そこでは おそらく「イランからの攻撃が予想されるが、イランが行った報復攻撃への報復は行わないでくれ」ということもイスラエルは言われたことでしょう。

 

何よりバイデン政権が今心配しているのは 大統領選挙選前に、原油価格がこれ以上高騰することは避けたい(だからウクライナのロシアの製油所へのドローン攻撃にも怒りを示したのがバイデン政権)ということであって、また、イスラエルによって中東戦争に引きずり込まれることも避けたいのです。

(下の記事のタイトル:バイデンはネタニヤフに、米国はイランへの反撃には加わらない と告げる)

 

 

そして、今まで「親米」と思われていた米軍基地を置かせてくれている湾岸諸国が「イランを攻撃するのであれば、我々の国の基地は使わせない」とか「空域は使わせない」とアメリカに対して冷たい態度を示しました。(下のニュースのタイトル:湾岸諸国は米国に反イランの攻撃のためには基地を使わせない と告げた)

 

 

上の記事の中では 「イラン攻撃の為に基地を使わせない」と言ったのが サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーン、クウェートの名前が挙がっていますが、私はほかにも トルコ、バーレーンも同様のことを言っているという記事を見ましたので、かつて「親米」だった湾岸諸国やトルコが イランを攻撃するなら基地を使わせない というふうに 「反米」 とまでは言わないまでも パレスチナ人虐殺を続けるイスラエルを絶対支持して兵器を送り続ける米国に対して不満を持つようになっているというのが明らかです。

 

中東のこれらの基地が使えない となると、もしもアメリカ、イスラエルがイランと戦うことになれば 核兵器を使う選択肢以外では 確実に「負け」が見えているわけですから、アメリカも これ以上は中東での戦争をエスカレートさせたくないはずです。

 

しかしイスラエルは 最近は アメリカでさえも手に負えないような状態にまで、極右政党を取り込んだ政権がもはや常識や良識、法が通用する人たちではなく、完全に頭がイカレてしまっています。

また、ネタニヤフ首相個人は もしこの戦争をやめれば、確実に失脚、その後は汚職等で逮捕され、ロクな末路にならないことは確実なので、彼の自己保身のために、戦争を拡大させて、偽旗作戦でも何でも起こして、アメリカも引きずり込もうとするかもしれません。

 

というわけで、イスラエルが もしイランに対し、「報復への報復」を行うようであれば、確実に戦火が拡大することになるかと思います。

 

ですから、中東で戦火が拡大するかどうかは 今後のイスラエルの出方次第だし、イスラエルがこれ以上イランを直接挑発しなければ、イスラエル対「抵抗枢軸」のハマス、ヒズボラ、フーシ、イラク、シリアに限定した戦火のみに留まる可能性が高いと思います。もちろん、日本にとっては 円安の上に石油価格がこれ以上あがってもらっては

困りますので、イスラエルがイランを直接攻撃する等、まさに「自滅」の道に進まないことを望みます。