日本でもすでに大きなニュースになっていますが、モスクワ近郊のコンサートホールに数人の銃を持った男たちが3/22金曜日の夜、乱入して無差別に一般市民に向けて銃を乱射し、その後建物に放火し、この記事の下書きを書いている3/24午前の時点で、133名以上が殺される という、大規模で凄惨なテロ事件が発生しました。

 

この事件では 金曜日の夜の大型ショッピングモールとそれに隣接したライブ会場という、最も多くの人が集まる場所と時間を狙って、一般市民を無差別に狙撃し、その後ライブ会場には火をつけて車で立ち去るという、犠牲者の数を最大限にしようとする犯人側の意図が見える、実に凶悪極まりないテロ事件となりました。

 

この事件について、テロリストのISが犯行声明を出していると、AP通信や日本のメディアは報道しています。 

 

ですが ロシアのメディアは 私が見た限り、ISとのつながりよりも、ロシアからウクライナに車で逃げようとした銃撃の実行犯4名がウクライナ国境近く、ロシアのブリャンスク州で逮捕されたという記事が大きく報道されています。↓はロシアメディア、RTが報じているものです。

 

Suspects behind Moscow terrorist attack: What we know so far

 

(和訳開始)

 

モスクワのテロ攻撃の背後にいる容疑者について、これまでに分かっていること

金曜日、コンサートを待つクロッカス市庁舎の観客に対する残忍な暴行を受け、合計11人が拘束された

 

 

 

モスクワ郊外にあるクロッカス市庁舎のコンサート会場に対する金曜日のテロ攻撃を受け、ロシアの法執行機関と治安当局は容疑者計11人を拘束した。ロシア国内治安当局FSBによると、拘束者には130人以上の命が奪われ、150人以上が負傷したこの虐殺の実行犯とされる4人が含まれている。

容疑者の身元と襲撃の状況に関する詳細はまだ明らかになっていない。FSBによると、今回の襲撃は死傷者を最大化するよう慎重に計画され作られたという。この事件については捜査が進行中である。これまでにわかっていることは次のとおりです。

拘留
FSBの声明によると、主要容疑者4人は土曜日の早朝、ウクライナと国境を接するロシアのブリャンスク州で拘束された。ニュースメディア「78.ru」によると、犯人らは現場から逃走する際に使用した白い車「ルノー・シンボル/クリオ」に乗っていたという。

ロシアの法執行当局による短時間の追跡の後、容疑者らは車を放棄した。そのうちの1人は現場で拘束され、他の3人は森に隠れようとしたため、大規模な捜索が行われたとメディアが報じている。

その後、容疑者の拘留と尋問を映したいくつかのビデオがオンライン上に公開された。ビデオのうち 2 つは RT 編集長のマルガリータ シモニャンによって公開され、もう 1 つはジャーナリストのアレクサンドル コッツによって公開されました。マッシュ・テレグラム・チャンネルによると、少なくとも容疑者1人が法執行官とのにらみ合いで負傷し、入院した。

ロシア当局は容疑者の1人が入院したとされる情報についてコメントしていない。土曜日、FSB(ロシア連邦保安庁)は声明を発表し、事件に関連して襲撃犯容疑者4人を含む計11人を拘束したと発表した。

同報告書は、主要容疑者4人について「犯人らはロシアとウクライナの国境を越えるつもりで、ウクライナ側に関連する連絡先があった」と付け加えた。ロシアメディアによると、他の7人の拘束はモスクワとモスクワ地方で行われた。

容疑者の身元
ロシアの法執行当局は拘束されている11人の名前や国籍に関するデータを公表していない。ロシア内務省は、主要容疑者の中にロシア国籍を持っていないことを確認しただけだった。

同省報道官のイリーナ・ヴォルク氏は、「内務省移民局はFSBの同僚らと協力して、拘束された各人のロシア領土内での滞在理由と滞在期間を慎重に調査している」と述べた。

武器と装備
現場で撮影され、ロシア捜査委員会が公開した映像によると、襲撃犯はアサルトライフルのようなもので武装し、大量の弾薬を装備していた。このクリップには、AK アサルトライフルに似たそのような武器が少なくとも 1 丁、弾薬が装填されたままの 12 個近くのディスペンサー マガジンが見られる。

ロシアのレンタ通信は、サイガ狩猟用ライフルも現場で発見されたと報じた。ロシアメディアによると、ブリャンスク地方での拘留中に容疑者の車からマカロフ拳銃ともう1つのディスペンサーマガジンも発見された。

容疑者の1人は取り調べ中に、個人的には面識がなく、テレグラム経由でのみ連絡を取った管理人によって武器の保管庫が手配されたと主張した。襲撃に使用した車両も、テロ行為の直前に容疑者の親族の一人から購入したとされる。

動機
法執行官による取り調べ中に撮影された容疑者の1人は、「お金のために」犯罪を犯したと主張した。この男は、50万ルーブル(5418ドル)を約束されており、襲撃前にその半分をデビットカードに送金していたと述べた。

犯人とされる人物はまた、金曜日の襲撃の首謀者とされる人物らから「約1か月前」に接触を受けるまで、しばらくの間テレグラムで「説教者による説教を聞いていた」とも述べた。金曜日にクロッカス市庁舎で何をしたかさらに問われると、男は「…人々を撃ち殺した」と述べ、ただ人を殺す任務を負っただけであり、誰を殺すかは「問題ではなかった」と付け加えた。

公開された尋問では、どの容疑者も過激派グループに明確に忠誠を誓った者はいなかった。

首謀者の可能性
ロシア捜査当局は、襲撃の首謀者とされる人物の名前は明らかにしていない。FSBによると、主容疑者らと過激派グループや外部勢力とのつながりについては、ウクライナへの入国を支援する用意があったとみられる一部のウクライナ人の「連絡先」を除いて、何も示唆していないという。

ロイター通信やCNNなど一部の西側メディアは、イスラム国(IS、旧ISIS/ISIL)が犯行声明を出したと報じた。テロ組織はまた、ISの旗を背景に4人の容疑者がポーズをとっている写真も公開したとされる。その後、一部のメディアによって共有されたこの写真には、野球帽をかぶって顔を隠した4人の男性が写っている。ロシア政府はISの主張についてコメントしていない

(和訳終了)

 

ウクライナ政府のスポークスマンは「ウクライナは無関係」とのコメントを出しています。しかし上の記事にある通り、狙撃手は誰かに50万ルーブル(日本円換算で82万円ほど)のお金で雇われ、半金を犯行前に貰って、後の半金は実行後に貰う予定だったと自白しています。

 

テレグラムで首謀者と連絡を取り合いながら、犯行後の逃亡は ウクライナへと逃亡しようとしていたわけです。ロシア軍と戦争状態にある4州からウクライナに入国するのは難しいわけですから、現在戦争状態にはないハリコフ州と接したブリャンスク州まで380キロ以上も車で走って逃げたのですが、ロシアが素早くウクライナに入国する道路を全て封鎖して狙撃手の車を追跡したために、彼らのウクライナ入国は失敗したわけです。 

ということは ウクライナに犯人のウクライナへの逃亡・入国を手助けする人物もしくは団体がいたであろうことは 容易に想像できます。

 

(上の写真:狙撃手が犯行現場に行くときと現場から逃走するときの両方に同じ「ルノー・シンボル/クリオ」が使用された。写真はこのビデオからの引用)

 

 

上の写真は捕らえられた狙撃手のひとりです。報奨金目的で犯行に及んだことを自白しました。半金はすでにもらって実行後に残りの半金をもらうつもりだったと片言のロシア語で言っているビデオが↓にあります。

First interrogation of Moscow terrorist attack suspect (VIDEO)

(モスクワのテロ攻撃の容疑者への最初の尋問(ビデオ))

 

 

ですから、日本のメディアの ウクライナは関係なく、ISによる犯行だろう という現段階での決めつけ的報道は 「本当の犯人」を隠してISの責任にしたい意図が西側メディアでは強く働いている可能性があります。

 

この件に関して、元CIAでテロ対策の情報分析官をされていたラリー・ジョンソン氏語っておられるビデオが↓です。ビデオのタイトルは「ロシアでの本日のテロリスト攻撃についての意味を理解する」です。

 

 

このビデオの中でラリー・ジョンソン氏が ウクライナの工作機関による犯行が強く疑われるとして指摘されている理由は以下の2点です。

 

1.このテロ事件が行われてから、わずか1時間半以内にアメリカ国務省が出てきて

「ウクライナは(このテロを)やっていない」と言った。その時点では何人の狙撃手がいたのかや爆弾が使われたのか、どんなタイプの兵器が使用されたのか、何人が殺されたのか等の情報が全く無かったのに、「ウクライナは(このテロを)やっていない」と、なぜ米国務省は言い切れるのか?

 

2.3月7日、モスクワのアメリカ大使館、イギリス大使館が彼等の市民に対して、テロリストによる攻撃の計画があるとの情報があるので、コンサート会場などの多数の人が集まる場所に出かけるのを避けるように警告を出していた。

 

通常、アメリカのCIAがこのようなテロ攻撃の情報を事前に掴んでいた場合、その国の政府の外務省にも情報を伝えるのが当然であるが、今回はそれがなされていなかった。それでモスクワの米国大使館、英国大使館がテロへの警告を出した3/8、ロシア外務省のスポークス・パーソンであるマリア・ザハロワ氏は テロの警告だけを出して情報を共有しない米英の姿勢を非難して「もしテロ攻撃が起こった場合には (それを知っていて情報を与えなかった)米英に責任がある」と発言していた。

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たしかに、ラリー・ジョンソン氏の言う通り、事件直後のロシアメディアや警察から何も情報が公開されていない時に、なぜ「ウクライナの犯行ではない」と言えるのかが不思議ですし、もし米CIA,英MI6が事前にテロの情報を盗聴等で知っていて彼らの国民に警告を出したのなら、ロシア政府の外務省にも伝えるのが 良識のある政府ならば、当然行うことでしょう。

 

ちなみに、昨年10/7に起こったハマスのイスラエルへの攻撃の際には エジプトの情報機関が2週間前にイスラエル政府に「ハマスの攻撃が近い」と伝達していました。

 

ですから、テロ計画があるのを事前に知っていたならば、被害国になるであろう政府に対して連絡しないのは まだ外交関係がある以上は 米英はその姿勢を責められても仕方ないでしょう。

 

そして、ラリー・ジョンソン氏のこの2つの見解に加えて、私の意見を付け加えるならば、まだ疑わしい点があります。

 

その1つは すでに大手メディアのニューヨーク・タイムズ紙で報道されていますが、米CIAはウクライナに12か所もの拠点を持っていることです。

 

そして、事実上、ウクライナの諜報機関は 米CIAから訓練されている下部機関であって、もしもウクライナの諜報機関がロシア本土でテロを行う計画があるならば、米CIAはその計画をいち早く入手することができる立場だということです。

(詳しくは下の過去記事をご参照ください)

 

 

そして、もう1つ、ビクトリア・ヌーランド氏が 退任前、最後に訪問していた国が2/22、ウクライナの首都キエフでした。

彼女はその時にとても意味深なスピーチをしています。彼女の意味深なスピーチの一部だけ、ご紹介します。(ヌーランド氏のスピーチ全文はこちらで読めます)

 

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政権が議会に要求した600億ドルの補正により、我々はウクライナの存続だけでなく繁栄を確実にすることができます。

この支援により、2024年にウクライナが戦い、建設、復興、改革を継続できるよう支援できるでしょう。

この資金があれば、ウクライナは東部で反撃し、戦場で最も効果を発揮した非対称戦争を加速させることができるでしょう。そして、私が3週間前にキエフで述べたように、この追加資金により、プーチンは今年戦場で汚いサプライズ(nasty surprises)に直面することになるだろう。

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nasty surprises のnasty は 「汚い」 とか、「厄介な、下品な、酷い、意地悪な」 等という意味です。

この "nasty surprises" とは いったい何なのだろう?という憶測も ずっとネットでは言われていました。

 

それでYoutubeのコメント欄などを見ると、今回のモスクワのテロ事件がヌーランド氏の言っていた"nasty surprise"ではないか とのコメントも見受けられます。

 

そもそも、キリロ・ブタノフ氏がトップにいるウクライナの諜報機関、工作機関は 哲学者のアレキサンダー・デュギン氏の娘さんのダリヤ・デュギナ氏の自動車爆弾での殺害、ロシアの人気ブロガーだったウラドレン・タタスルキー氏の爆弾テロによる殺害等、過去に何度もロシア国内でテロ事件を行ってきていますし、今のキエフ政権はロシアにとっては「テロ支援国家」だといってもよいくらいでしょう。

 

ブタノフ氏については「世界のどこにいてもロシア人を殺し続ける」等と堂々とテロを示唆する発言を過去にもしています。

 

 

そしてウクライナ諜報機関の上部機関である米CIA自体も 過去には9.11等のテロ事件を起こすことに関わってきています。(9.11事件を起こしたとされるサウジアラビア国籍の容疑者の何人かはCIAとのつながりが指摘されていますし、アルカイダの設立者のオサマ・ビン・ラディン氏も米国が作ったアフガニスタンのタリバンの訓練キャンプにいた時代からCIAとのつながりがあった方です。)

 

米CIA因子の9.11テロ関与が発覚

 

今回テロ組織のISが犯行声明を出しているのと言うのが事実ならば、もちろん、ISが本当にテロを行った可能性はあると思います。

しかし、問題はそのISのテロリストの「雇い主」が誰かということなのであって、ウクライナ戦争にもシリアから連れてこられた反アサド政権のISやアルカイダのテロリストがウクライナ側戦闘員や傭兵として参加していたことを考えれば、ISが犯行声明を出したからと言って、ウクライナや米国への疑惑が完全に晴れるわけではないのです。

 

 ↓

この注釈は間違っており、ウクライナそれ自身がAP通信の報道を通してISISとの関係があることを示している。

 ↓

(上の写真:AP通信がウクライナの部隊の司令官がISISのパッチを身に着けているところをビデオで公開

 

 

 ↓

ウクライナは100%モスクワのテロ攻撃の背後にいる。

ウクライナはヨーロッパのISIS。

 

 

そして、狙撃手4名は全てロシア国籍ではない外国人とのことですが、協力者も含めた容疑者11名の中に反プーチンとか反ロシア政府の工作員が参加している可能性もあります。しかしロシア国籍者がやったからと言ってウクライナ工作機関とつながりがない というわけでもないです。

 

ロシア大統領選挙前後からウクライナ側戦闘員が越境して何の罪もない市民に対して大砲による砲撃やドローン攻撃でのテロ攻撃を行っていましたが、彼らの中心メンバーは「ロシア義勇軍」等と名乗るウクライナ側で戦闘しているロシアのネオナチでした。

 

彼らも反ロシア政府の活動をしているNGOやNPO、故・ナワルヌイ氏等の活動家と同じく、米国や英国からお金をもらって反ロシア政府の活動を長く続けられているのであって、外国からの資金がなければ、ロシアで活動できない彼らは生活することができません。

 

なぜなら、プーチン大統領が「外国政府代理人法」というのを作って、ロシア国内で活動するNGO等に資金源を開示するように義務付け、外国政府・団体からの資金主体で活動している団体を強制的にロシア国内では閉鎖に追い込んだからです。このプーチン大統領のやり方が「ロシアは強権的」とか「独裁」と言われる理由の1つになっていますが、今までに起こってきたロシア国内でのテロ事件やロシア国内の政治的安定やテロのリスク、国民の安全を考えれば、外国政府の代理人的活動をしている団体をロシアから追い出すのは当然のことです。(むしろ、そのようなことをやっていない日本政府のほうが大問題)

 

第二次世界大戦でドイツが敗北した直後から、すでにソ連に対するアメリカの工作活動は始まっていて、ナチスドイツでソ連に対する諜報のトップを務めていたラインハールト・ゲーレン氏をアメリカがスカウトして対ソ連の諜報活動を続けさせたり、ナチスドイツの科学者を過去の犯罪履歴を抹消するなどして大量にアメリカに連れて行ったり(ペーパークリップ作戦)、当時世界の最先端の技術をもっていたそのナチスドイツの科学者たちがNASAでロケット技術の開発や軍産複合体企業でミサイル等の開発に携わっています。

 

米国には 東欧やロシアで約80年にもわたり、資金援助、兵器援助、軍事訓練を施す等して対ソ連・対ロシアの活動をさせたりしてきた、長い歴史があるのです。だから米CIAや英MI6のおかげで、ロシアやその周辺には反ロシア政府の活動をしている団体が数多くいて、彼らは資金も豊富に持っているということです。

 

(上の写真:ナチスドイツで対ソ連諜報のトップを務めていたラインハールト・ゲーレン氏。ドイツ敗北後は米に投降し密入国し、CIAの協力者となった)

 

ペーパークリップ作戦で渡米したドイツ人科学者達。

 

 

私が字幕を付けた下のビデオでもこの事をご紹介していますので、まだご覧になられていない方はぜひご覧ください。