何週間にも渡って解任する・しないで揉めていたウクライナ軍のザルジニー総司令官ですが、ついに解任が正式に発表されました。

 

私がブログの過去記事でザルジニー総司令官の解任について書いた記事をアップしているのが1/24です。↓

 

 

 

その1/24時点よりも2週間前位から、ウクライナの戦況実況チャンネル(Youtube)ではザルジニー氏とゼレンスキー氏の間で亀裂が激しく、解任されるのでは・・・という噂があったので私が記事にしていたわけですが、そうなると1ヶ月位、

ゼレンスキー「辞任しろ」→ザルジニー「お断りする」

ゼレンスキー「じゃあ、解任を検討する」→ザルジニー「任命権は大統領にあるのだから、勝手にしろ」→ゼレンスキー「・・・」

というゴタゴタが続いていたことになります。(このような2人の会話のやり取りはYoutubeでの戦況実況チャンネル、Military Summary等で報じられていたものです。)

 

先日、2/1にウクライナのキエフには2014年のマイダン・クーデターの首謀者だった現米国務次官、ビクトリア・ヌーランド女史が訪れました。

この訪問の目的は ウクライナ国内の政治的ゴタゴタ劇で、クーデターが起こるのを心配したネオコンのヌーランド女史がそのような動きを牽制し、「現ゼレンスキー政権を今後も資金面、兵器供給の両方で今後も支え続ける」というバイデン政権の意向を伝えるためだったと言われています。↓

 

 

しかし、ヌーランド氏のキエフ訪問以後もゼレンスキー・ザルジニー両氏の間の政治的駆け引きは続いていました。

 

本来は軍の総司令官を誰にするか というのは大統領に任命権があるはずですので、

解任したければ さっさとできたはずですが、なぜこんなに時間がかかったのか というと、やはり クーデターや国民や軍からの大反発をゼレンスキー大統領が恐れていたからです。

 

Zelensky was warned of riots if he sacked top general – media

(ゼレンスキー、彼が総司令官を解任した場合の反乱について警告されていたーメディア)

 

しかし、このように政治的ゴタゴタで指導部が麻痺している間にも ウクライナ軍は

アウディーフカやその他全ての戦線でロシア軍に対して劣勢を強いられ、ジリジリ下がっている状況でしたので、ゼレンスキー大統領は ついに「ザルジニー解任」という決断を下したようです。

 

そして、新たな総司令官として任命されたのは 最も有力な候補だと噂されていた諜報機関のトップであるキリロ・ブタノフ氏ではなく、2番目に名前が挙がっていた、ウクライナ地上軍のトップ司令官を務めていたオレクサンドル・シルスキー氏です。

 

(上の写真:新たに総司令官となったオレクサンドル・シルスキー氏)

 

しかし、シルスキー氏も一度は 総司令官就任のオファーを断っていて、彼は兵士からの人望がなく、国民からの人気もない と言われています。

 

そして、彼は 「バフムートの肉屋」というニックネームを付けられた位、通称”肉挽き器”と言われた位、凄惨な状況だったバフムートで ゼレンスキー大統領に命令されるがまま、兵士をどんどん送り込んで、バフムートでウクライナ軍のマンパワーを大きく削ってしまった という悪い実績があるのです。

 

ちなみに、ゼレンスキー氏、ザルジニー氏の対立が鮮明になったのは 「どうせ陥落が免れないのだから、バフムートから自軍を撤退させるべき」 と主張したザルジニー氏に対し、自分の政治的なダメージを心配して「一歩も引き下がるな」と命令したゼレンスキー氏との口論があったといわれています。

 

ですから、ウクライナ軍兵士の中でのシルスキー氏の評判はすこぶる悪く、しかも

彼がウクライナ人の間で評判が悪いのは 彼が「ロシア語を話すロシア人」だから というのもあります。そして、シルスキー氏のご両親やご兄弟は今でもロシアに住んでいるロシア国民なのです。(シルスキー氏の父親は元ソ連軍兵士だった方で今は年金暮らし、ご兄弟はロシアで警備員として働いており、シルスキー氏とは長い間連絡を取っていないと報道されています。)

 

 ↓

ところで、シルスキーはロシア人。

彼はウクライナ語をほとんど話せない。

だから、彼はロシア流の指揮をやっているのだ。

 

下は「私はウクライナ軍総司令官としてシルスキー大将を任命した」というゼレンスキー大統領の発表に対してのウクライナ国民の圧倒的なネガティブな反応(顔文字)を示しています。

 

 

まあ、陥落間近と言われているアウディーフカの状況は はっきり言って 誰が総司令官だろうが、よほど、核兵器でも使用しない限りはここから好転させることはできません。

 

(上の地図:ロシア軍によって包囲されつつある要塞のアウディーフカとその周辺)

 

しかし、総司令官が誰になるかによって左右されるのは 陥落確実となっている都市からいつ兵士を退避させるか ということだと思います。

 

昨年のバフムートの例のように、ゼレンスキー氏の命令に100%従っていたら兵士をどんどん肉挽き器に送り込んで人命を無駄にするだけだと思います。

しかし、結果的にザルジニー氏が総司令官だった際にも ゼレンスキー大統領の命令に従って、どんどん兵士を送り込んでいたわけですから、そういう意味では 誰が司令官だろうが、政治決断を下す大統領がゼレンスキー氏だと ウクライナ軍は はっきり言ってポジティブな材料はほとんどなく、お先真っ暗な状態だと思います。

 

ですから、1日でも早く交渉をしなさい と言うべきなのが日本の立場なのであって、「ウクライナ復興会議」をこの2/19に東京で主催して、再び数兆円単位の支援を表明する というのはとんでもない事なのです。 

和平交渉再開が遅れるほど、ますますウクライナ国民、ロシア国民を死なせ、国も破壊させ、ますますウクライナ国民を国外脱出させるだけだということを日本は本来は訴えるべきなのです。