先日南アフリカでBRICSサミットが開かれ、そこで発表されましたが、BRICSに新たにサウジアラビア、イラン、UAE、エジプト、エチオピア、アルゼンチンが加盟することが発表されました。

 

これは昨年始まった西側諸国のロシアへの歴史上類を見ない厳しい経済制裁以降から始まった「脱ドル化」の流れをさらに加速するものになることは必至ですので、今回はこの話題について触れたいと思います。

 

下の地図が 今回(2024年1月1日から)加盟が認められた国々です。中東からはサウジアラビア、イラン、UAEと大きな石油生産を行っている産油国が新たに加盟、アフリカからは交通の要所スエズ運河を持ちGDPでナイジェリアに次ぐアフリカ第2位のエジプト、金の産出国であり人口が1億2000万人と、ナイジェリアに次いで大きいエチオピアが、ラテンアメリカからは食肉や穀物の輸出国であるアルゼンチンが新たに加わりました。

 

上の地図は新たなBRICS加盟国。

 

注目すべき点は 中東の産油国3カ国が新たに加わったことです。

下の写真は世界の1~10位までの石油生産国のリストです。

 

 

今回、サウジアラビア、UAE、イランの加盟が認められたことで、世界の上位10位以内の石油生産国のうち6カ国がBRICSに加盟することになります。これは世界の石油生産の40%を占めることになります。

 

下の表は 石油の消費国の世界1~10位です。日本は第5位に入っています。

 

 

そして、BRICSは加盟国間での取引には もうすでにドルをあまり使わなくなっています。サウジアラビアやUAEが中国の人民元で石油を取引し始めたのは有名な話ですが、インドもUAEとの石油取引でドル決済をやめてインド・ルピーで決済をすることになりました。

 

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ドルは捨てられた? インドはちょうど米ドルの代わりにルピーを使って、UAEからの100万バレルの石油を初めて購入した。

なぜこれが米ドルに破滅をもたらす可能性があるのか?

 

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「脱ドル化」は後戻りできない過程だと、ロシアのプーチンは言う。

 

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私達の経済関係の脱ドル化の過程は客観的で不可逆的である。私達は相互決済と金融・財務管理の為の効果的なメカニズムのために取り組んでいます。結果として、BRICS内の米ドルでの輸出及び輸入の割合は低下しており、昨年はたったの28.7%になりました。

 

 

下のグラフは天文学的な数字にまで膨らんでいる米国債の発行額。日本の国債残高も1000兆円を超えてはいますが、アメリカの場合、アメリカ一国だけで 日本、中国、イギリス、フランス、カナダ、ドイツ、イタリアの国債残高を合わせたほどの規模にまでなっています。

 

 

米ドルからの脱却や米国債を売るというBRICSの動きに危機感を募らせたアメリカは 「石油の購入をドル決済でのみ行い、そのドルで米国債を購入する」というペトロダラーシステムを支えてきたサウジアラビアに「ドル以外で決済するな」とか「米国債を売るな」という圧力をかけようとしましたが、失敗しています。下の記事はバイデン大統領が石油生産のカットを発表したサウジアラビアに「行動を起こす」と圧力をかけようとしたという記事ですが、石油生産の減産への圧力というだけでなく、ドル決済からの脱却や米国債売却への警告もあったようです。

 

 

米上院議員のマルコ・ルビオ氏は「脱ドル化」について、下のように言っています。

 

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なぜ世界の国々は米ドルから離れたいのでしょか?

アメリカ上院議員マルコ・ルビオ:「ドル以外の通貨で取引する国が非常に多くなり、私達は彼らに制裁する能力がないだろう。

→馬の口からの情報です・・・米ドルは兵器である。

 

 

昨年のロンドンで開かれたG7の会合で決まったロシアの石油に1バレル60ドルという「プライスキャップ」を設ける という経済制裁も 完全に失敗に終わっています。(ちなみに、日本がサハリン2で80ドル近い価格でロシア産石油を購入し、真っ先にその「プライスキャップ」を破った国になりました。)

 

BRICSは まだ入りたいと加盟申請を出している国がいくつかありますので、今後も拡大していくものと思われます。

 

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BRICSは公平で包括的で繁栄のある世界を構築する新たな章に乗り出した。

ラマポーザ(南アフリカ大統領)は言った。「私達はこの拡大プロセスの第一段階について合意を得ている。段階は続くだろう。」

 

下のグラフはG7とBRICSの今後のGDP世界シェア比較。G7は世界シェアにおいて、急速な右肩下がりになっていきますが、BRICSは右肩上がりになっています。

 

 

 

以上の写真は こちらのビデオから拝借させていただきました。

 

 

私は 従来から自分のブログで「日本も脱ドル化の流れに乗るべき」と主張してきました。

ガソリン価格が 元売り各社に流し込んでいた補助金の削減により 今現在レギュラーガソリンが税込190円/L前後にまで跳ね上がっていますが、アメリカが「インフレ対策のため」と称して利上げを急加速的に行っているため、日米の金利差で円売りドル買いが進み円安が進行してますます輸入品の食料品価格やガソリン価格に跳ね返って庶民を苦しめているのです。

 

輸出企業の大企業だけが儲かり中小零細企業やそこで働く庶民は苦しむという過度の円安の中、日本が 脱ドル化の流れに乗ったインドを見習って 「円で取引しましょう」となぜサウジアラビアやUAEに対して言わないのか、私は不思議でなりません。

 

貿易で円決済を進めれば、為替の変動によるリスクや今のようなガソリン価格、石油製品の原材料費の高騰に悩む必要がなくなるのです。インドはやはり、米の利上げでルピー安になっていたので、原油のような輸入品をルピー決済にする事で輸入業者や消費者の負担を減らすことが出来る、と堂々と脱ドル化したのです。インドに出来て日本にそれが出来ないのは日本の政治・外交の機能不全を示していると思います。

 

 

そして、過去のブログ記事でご紹介しましたが、中国が米国債をどんどん売って金を買っているのに対し、日本は米国債を買っています。(下の表参照) これも日本が経済的に米国の完全な属国であることを示していて、日本の国益だけを考えた金融、財政、経済政策ができていないということではないでしょうか。

 

 

国民の「痛み」が分からない、ただの財務省の言いなりの岸田首相は 高騰するガソリン価格に対する「トリガー条項」発動は財務省が強く反対しているため、断固としてやらない方針のようです。↓

 

 

 

元売り各社への「補助金」は ガソリン価格を下げるためには 何もやらないよりは マシですが、元売り各社が儲けただけでした。

石油元売り3社、業績急回復 原油・資源高追い風―21年4~12月期

 

 

本当に日本がやらなければならないのは 石油決済の「脱ドル化」なのであって、それができれば、庶民や物流関係の企業がガソリン価格の高騰に苦しむことはないのです。

 

ロシアへの経済制裁を 国益の為に拒否し石油決済まで脱ドル化を図ったインドのモディ首相の爪の垢を 岸田首相は煎じて飲むべきだと私は思います。