先日、私のブログの過去記事ではアントニー・ブリンケン米国務長官が中国を訪れた話を取り上げました。

その時は 外務次官→外務大臣→習近平主席 という具合に、習近平主席に合うまでに外務次官クラスから対面しなければならず、主席に合うまでに外務次官、外務大臣のところでそれぞれ3時間位会議を行って、へとへとになったところで習近平主席に会って、疲れた状態で蛇に睨まれた蛙のような感じで写真撮影をし、台湾問題について言及した記者会見を行いました。その米中の会談をどう解釈すべきか、私なりの意見を書いていますので、よろしければ そちらも まだご覧になられていない方はお読みください。

 

 

 

今回は 7/6に中国を訪問したジャネット・イエレン米財務長官、そして7/20には ニクソン政権下で「米中国交回復」に大きな役割を果たした、御年100歳のヘンリー・キッシンジャー氏が中国を訪れていますので、なぜ米の大物3人が相次いで「中国詣」をやっているのか、背景を説明したいと思います。

 

(上の3枚の写真:最近中国を訪問した米の要人3名。上からブリンケン国務長官、イエレン財務長官、ヘンリー・キッシンジャー氏)

 

特に、財務長官のイエレン氏が中国を訪問したのは 米国が置かれている深刻な財務状況が関係しているようです。

 

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議会は 中国が一夜にして米国国債を放出する事態に備えて、財務省と連邦準備理事会に「準備」と「備え」をするように指示した。

 

上のグラフ、世界で売られている米国債。2023年4月から急激に売られ始めた。

 

今後も米国債の金利が上昇する確率が99%となっている。

 

世界でダントツで一番、米国債を持っているのは日本です。2位が中国なのですが、下の表は 中国がどれくらいの米国国債を持っているかの推移です。

 

今年の4月には8,690億ドルだったのが5月には8,460億ドルへ減少。

 

中国が米国債をどれだけ売っているか、1年間の流れで見るとこうなります。↓

 

中国は1,000億ドル以上の米国債を売却。

 

最終回の利上げを行い、22年ぶりにピークをつけようとしている米国の金利。下の記事にはインフレ抑制のため、11月までに追加利上げをする見通し と言っています。(ということは、日米の金利差で今後も円安が進み、日本国民は食料高や燃料高に苦しむということです。)

 

そして、中国が米国債を売っている原因のひとつが 日本も含めた西側の「反ロシア連合」がやっている ロシアの資産の凍結です。下のイラストのように、国が買った外国の債券等の資産は 現地の銀行にあります。 ロシアの場合も ロシアの国の資産が各国の銀行にあったわけですが、それを西側の「反ロシア連合」は経済制裁として凍結して、さらにそのロシアの国の資産を ウクライナへの支援金へと当てる、つまり、他国の資産の「泥棒」をしようとしています。

中国が懸念して米国債を減らしているのは 同じような経済制裁を 今後中国がされた時にダメージが小さくなるように、今から米国債を売って準備している ということです。

 

 

 

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銀行強盗は銀行が貸し金庫を守ることを期待すべきではありません。(ロシアの国の資産の泥棒行為を皮肉ったツィート)

フィリップ・ゼルコウとロバート・ゼーリックは野心的な計画を描いています。ウクライナの再建に焦点をあてた欧州復興プログラムーそしてそれは凍結されたロシアの資産によって支えられています。

 

 

下の記事はアメリカの上院議員がロシアの資産の凍結とウクライナへの移動を提案した という記事。

 

だから、資産押収のリスクや将来のデフォルトのリスクが非常に高い米ドルをどんどん売って、代わりに金を買っているのが中国です。

下の記事は 中国の中央銀行は 金の備蓄を8ヶ月連続で増やし、6月には2,330トンにまでなっている というもの。

 

 

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  金曜日に発表された公式データによると、中国人民銀行の地金保有量は68万トロイオンス(13.6億ドル相当)増加した。

   これは23万トンに相当する。現在の総備蓄量は2,330トンで、11月からの買い入れで約183万トンが追加された。

 

中国は世界最大の金の生産国であり、輸出国でもあります。

 

下のグラフは高騰しているゴールドの価格

 

 

しかし、中国は一帯一路での途上国への融資はドルで行っています。下のイラストは 中国の中央銀行が国家開発銀行を通して一帯一路のプロジェクトにドルを貸していることを示しています。

 

中国の方針は「一帯一路」プロジェクトに1900億ドルを提供する という記事。

 

下の記事は中国がいくつかのアフリカの国に融資したお金の一部免除を行い、IMFが100億ドルの資金を提供した という記事。

 

アフリカの国は最近はどんどん「親中」になっていって、欧米からは距離を取りつつありますが、なぜ、アフリカ諸国は 中国の援助を喜び、IMFからの援助は嬉しくないのかというと、下の記事で書いてあるような理由があります。

 

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IMFとそれに対する不満
 

 IMFは長年にわたって声高な批判を集めてきた。 ノーベル賞受賞経済学者ジョセフ・スティグリッツは、2002年の著書『グローバリゼーションとその不満』の中で、世界の最貧国の一部で実施された開発政策の失敗の主犯として基金を非難した。 同氏は、IMFが緊縮財政、高金利、貿易自由化、民営化、資本市場の開放の条件として求めた経済改革の多くは逆効果であることが多いと主張する。 西洋市場のルールは対象の経済にとっては打撃であり、地元住民にとっては壊滅的な影響を与える。

 

「中国は高利貸しのようにカネを貸して返せなかったら、港などを奪う」とよく日本の保守派の人たちは言っていますが、それも

アメリカによる一種のプロパガンダです。私も中国を好きではありませんが、このように事実ではないことを広げるのは 中国の一帯一路プロジェクト=高利貸し という印象操作をしたい(アメリカや従米派の)裏の意図があると見たほうがよいです。

 

下のビデオではアフリカのザンビアの大統領が「中国は1%しかローンの金利を取っていない」と言っています。(ビデオのタイトル「ザンビアの大統領はスピーチで、中国はそのローンの金利を1%しか取っていない」と発言)

 

 

 

 

つまり、途上国を助けるフリをして高金利でお金を貸して、代わりに インフラの民営化、市場の開放、借金返済の為の緊縮財政

を要求するのがIMFなので、途上国はIMFからお金を借りると、長年に渡って搾取され続ける ということですね。ですから、アフリカ諸国は中国のほうがまだ親切 ということで、中国のほうになびいているわけです。

そして、中国は アフリカへの投資もそうですが、50年先、100年先まで見据えた外交戦略を立てています。この辺は 政治が中国共産党による一党支配だからできることであって、通常の政権交代がある民主主義の政治体制では 50年先まで見据えた長期戦略は なかなか立てられませんね。

 

下のグラフは世界の中での中国と日本が持っている米国債の占める割合(2018年に日本が中国の米国債保有高を追い抜いた)

緑の線が日本、紫の線が中国、赤い線が全ての国を表しています。

 

 

そして、32.3兆ドルと危険なレベルにまで跳ね上がった米国の借金。2022年からは ウクライナへの支援の為、特に急カーブで借金が跳ね上がっています。↓

 

 

下の記事は 米国の金利が11年ぶりの高水準に達し、債務コストが6,52億ドル増加 と報道。

 

そのような中で、「グローバルサウス」はドルを捨て始めました。BRICS加盟を希望する国が40カ国以上へと増加。

(上の記事:「40カ国以上がBRICSへの加盟に興味を示している。」と南アフリカは言う。)

 

 

米国債を売りもせず、支え続けている日本ですが、現在のアメリカは32兆ドルもの借金を抱えて、それを米国債で調達しているけれども、その米国債の金利も今は5%を超えているので、今後は利払いの分だけでも大変な額になっていくはずです。

 

日本も国の借金の額では1270兆円もありますので、アメリカの32兆ドル(1ドル=140円換算で4480兆円相当)を笑えないレベルではありますが、日本の場合は ずっとほぼゼロ金利であって、日本国債の買い手もほとんどが国内にいて、1270兆円の日本国債のうち、581兆円もの国債を民間銀行ではなく日本銀行(国が過半数の株を持っている)が持っている という点ではアメリカの状況とは大きく異なります。アメリカの場合 国内の民間銀行や他国からお金を借りていて5%以上の高い金利を付けて債権者へ返さねばならないのです。

 

ウクライナへの巨額融資、援助により、2022年からの米国の借金の増え方の急カーブは 素人目に見てもヤバいレベルだと思いますが、アメリカの借金を支えているのが日本です。

 

しかし、米国債を売る と堂々と言った日本の歴代首相はひとりもいません。

仮に冗談でほのめかしただけでも酷いことになるのです。米国債を売りたいという衝動にかられた」と一言いっただけでアメリカで猛批判されたのは橋本龍太郎元総理です。
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1997年6月23日、当時の橋本龍太郎首相が米コロンビア大学での講演のあとの質疑応答で、「米国債を売りたい衝動に駆られることがある」とジョーク交じりにコメントした。NYダウは192ドル下落、1987年のブラックマンデー以来の大幅な下げとなった。1985年のプラザ合意以降の急激な円高ドル安(260円から85円へ)が進むなかでの発言だったが、「もし売るようなことがあれば(米国への)宣戦布告とみなすと脅された」とささやかれた。
(2018.5.2付 Quick Money Worldの記事「貿易摩擦と橋龍発言 米国債について回る「売りたい衝動」」の記事の一部)

そして、「日本はATMにはならない」というようなことを言ったら、米に同行していた読売新聞の記者によってお酒の中に睡眠薬を入れられるという罠にはめられてアメリカで酩酊会見→大臣辞職→議員落選→不審死という流れになった中川昭一氏などを見ると、日本が 政治、経済、防衛だけでなく、財務の上でも 米国債を買い支え続けなければならない という、アメリカの奴隷であり続けることを要求されている というのは明らかではないでしょうか。