先日ポーランド人の方が作ったYoutubeの討論番組を聞いていたら面白い情報を耳にしましたので、本日ざっくりと内容をご紹介したいと思います。
私のブログでは 以前から「ポーランドはウクライナ西部に"領土的野心"を持っている」ということを何度か書いてきました。
ですから、少なくとも4~5万人はウクライナに「ボランティア」という名前の契約兵士を送ってきたし、多くのポーランド軍契約兵士がウクライナで死亡してもいます。
そして上の過去記事でも書いていますが、ポーランドのドゥダ大統領は 何度もゼレンスキー宇大統領と会談を行なっていて、そこで話し合われたことは 単なる兵器支援のことではないだろうと見られています。
今回、私が見たYoutubeビデオ(下のリンク先)でポーランド人女性作家が語っていたことは ポーランドは やはりウクライナとの将来の「連合国家」設立に向けて動いている というのです。(その名前がウクロポリ?)
今のポーランド政府は「ウクライナが負けたら第三次世界大戦だ」と煽っていますが、はっきり言って、ロシアと直接戦争がしたい と思っている国は NATOの中でもほとんどいないのではないでしょうか。
しかし、NATOの元事務総長は「ウクライナが負ければ、ポーランドが率いる”有志連合”がウクライナへの兵士派遣を行うことに興味を持っている」と発言しています。
NATO states may send troops to Ukraine – ex-chief
(和訳開始)
NATO諸国はウクライナに軍隊を派遣する可能性がある - 元首相
ポーランドは「有志連合」を率いる可能性があると、アンダース・ラスムセンが主張した
NATOのアンダース・ラスムセン前事務総長は、ウクライナが今後の首脳会談でさまざまな問題について安全保障を提供されない場合、一部の加盟国が兵士の派遣を志願する可能性があると主張した。
ウラジーミル・ゼレンスキー大統領の顧問を務め、前任のペトロ・ポロシェンコ大統領とも仕事をしたラスムセン氏は、来月リトアニアのビリニュスで開かれるNATO首脳会議の前に、キエフに西側の情報共有、武器譲渡、合同軍事訓練などについて書面による保証を与えるべきであると述べた。
「NATOがウクライナのために進むべき明確な道について合意できない場合、いくつかの国が個別に行動を起こす可能性は明らかだ」と、ガーディアン紙によると、彼は水曜日に述べたという。
「ウクライナがヴィリニュスで何も得られなかったら、ポーランド人は本気で乗り込んで有志連合を組むと思うね。」
ここ数週間、ウクライナへの軍事支援を取り付けるために欧州と米国を訪問したラスムセンは、キエフから要請があれば、外国軍の派遣は国際法上合法であると主張した。
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は最近、サミットで安全保障の一部について議論することを確認したが、完全な保証は加盟国にしか提供できないことを強調した。NATOは2008年にウクライナの加盟を初めて約束し、キエフは昨年9月に正式に加盟を申請したが、それ以来、この問題にはほとんど進展がなかった。
NATOの加盟国の中には、ウクライナの将来について、加盟への明確な道筋を示すよう他の西側諸国に強く求めている国もある。今週初め、「ブカレスト9」と呼ばれる東欧NATO諸国の小グループは声明を発表し、ビリニュスでのイベントで「ウクライナのNATO加盟につながる新たな政治的軌道を開始」し、「より強固で複数年、包括的な支援パッケージ」を提供するよう欧州連合に要請した。
ワシントンもまた、ウクライナがいつの日か軍事集団に加盟することを繰り返し肯定してきたが、現在のロシアとの紛争に重点を置き、加盟の問題は後で解決することを望んできたのである。しかし、ジュリアン・スミス駐NATO米国大使は、水曜日にガーディアン紙に、「ウクライナがNATOとの関係を前進させていることを示すために、さまざまな選択肢を検討している」と語ったが、その内容については明らかにしなかった。
ゼレンスキーは、いかなる「NATOの代替品」も拒否し、西側パートナーに、ブロックがウクライナに「具体的な」保証や完全加盟へのロードマップを提供しない限り、7月にリトアニアで開かれる首脳会議に出席しないと伝えたという。
ロシアは、NATOの東方拡大継続を自国の安全保障に対する脅威とみなし、2022年2月に隣国での軍事作戦を開始した理由の1つとして、加盟国のウクライナへの援助を挙げている。モスクワは、ウクライナの中立性が恒久的な平和のための重要な条件の1つ
になると繰り返し述べている。
(和訳終了)
つまり、NATO加盟国でないウクライナの為にNATOは軍を送れないけれども、ポーランドとバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)が中心となった"有志連合"の軍ならば、出しても違法ではない とNATO元事務総長は言っているわけです。(上の記事ではバルト三国のことには触れていませんが、別のビデオのニュースでは「ポーランドとバルト三国が中心になって有志連合を作る」とご本人が言っていました。)
ポーランドに対しては 以前から この戦争が終わる間際になったら 軍をウクライナに送り込んできて西部を併合することを狙っているのでは・・・ということもオルタナティブ・メディアの記事等に書かれていたので、ウクライナが失った領土をほとんど取り返せず、ロシアに負けそう となると、余計に ポーランド軍派遣の可能性が高まると思います。
そして、上のリンク先Youtubeビデオのポーランド人女性作家の方が言うには ウクライナ、ポーランドは 今後、経済、軍事、教育の面で統合をしていく と言っています。それを勧めているのがポーランドの現在の政権与党「法と正義」です。
この「法と正義」という右派の政党が2014年頃にポーランドで絶大な人気を得たのは シリアやアフガニスタン、イラクなど中東からの難民が大量にヨーロッパに渡ってきて、EU加盟国であるポーランドにも割当で押し付けられたことによる国民の反発からでした。
元々、「難民・移民の受け入れ反対」を旗印にしていたはずが、ポーランドにやってきた150万人のウクライナ難民については かなりウェルカムのようです。もちろん、中東からの難民とは違って、ウクライナ人は同じ白人でキリスト教信者であり、ウクライナ西部はポーランド人と同じカトリック教徒も多い ということがあって歓迎されているのでしょう。そしてポーランドに来た150万人のウクライナ難民のうち、半分の75万人はすでにポーランドにIDや保険を持ち、ポーランド企業で雇用されているようです。
ポーランド人女性作家の方曰く、「ウクライナ人にポーランド人と同等の市民権、選挙権を与えて与党の"法と正義"への集票につなげる」ことを目的としているのだろう とのことです。
しかし、ポーランド人とウクライナ人の間には 暗い歴史があります。
第二次世界大戦中、過激民族主義者でナチスの協力者だったステファン・バンデーラとその信奉者のウクライナのネオナチが 10万人以上のポーランド人を惨殺したりしたのですが(ボルカニアの大虐殺など)、ウクライナ政府はこのことについて公式に謝罪をしたことはないし、謝罪どころか、銅像を立て、毎年バンデーラの誕生日を祝い、「バンデーラは我々の父、ウクライナは我々の母」という歌を歌っています。
ポーランドとウクライナ西部は 経済や軍事だけでなく、教育も統合していく との話ですが、このような過去の暗い歴史と、未だにウクライナにはびこる、バンデーラを英雄視している「ネオナチ問題」をどうするのか、その対応いかんによっては 新たに誕生するであろう「ウクロポリ連合?」の中で 民族紛争や内戦が発生する可能性も大いにあるのではないでしょうか。それをこのビデオのポーランド人女性は心配しています。
民族紛争や内戦が起こると、また得をするのは米国の軍産複合体です。現在のポーランドはEUの中で最も比率の高いGDPの4.1%ものお金を軍事費に使っています。
異常なまでの「ロシア恐怖症」で 政府の公式見解とは違うことを言う表現の自由もなくなり、上のリンク先ビデオのポーランド人女性作家はわざわざ国を出てそのYoutube番組を撮影したとのことです。もう1つ、ポーランドがどんどんおかしな独裁国家になっている事例の1つが ポーランド国内で最近、新たに大統領が署名した「ロシアの影響法」という法律です。
これは 「ロシアの影響下で行動した」とみなされて有罪判決を受けると、その人物は罰金を課せられるか10年間、公職を追放される というものです。この「ロシアの影響下で行動した」という定義が ロシアのガスや天然資源を利用するエネルギー政策を過去に主張していただけでも「ロシアの影響下で行動した」とみなされる という、かなりクレイジーなものです。
この法律は2010年にロシアとのガス契約を結んだり、メドベージェフ当時露大統領と対談して歴史的な和解をしたドナルド・トゥスク元首相を政界から排除するために作られた法律なのでは、とも見られています。
「ロシアに融和的」という理由で政敵を排除できるという恐ろしい法律だと思いますし、反ロシアで行動しているEUでさえも「このような法律は許されない」と言っています。
あと、もう1つ、私が上のビデオを見るまで知らなかったのが 現在の与党の「法と正義」ですが、2014年にウクライナで起こった暴力革命にも関わっていたそうです。これは驚きました。しかし、ウクライナのネオナチだけでなく、隣国のジョージア(グルジア)からも元大統領のサアカシヴィリ氏や狙撃手含めて多くの人が参加していたし、事実上、米の「手下」になっているポーランドの右派政党が ウクライナでヤヌコビッチ政権打倒の為、カラー革命に参加していてもおかしくはないのでしょう。
また、先日の過去記事でご紹介したように、隣のベラルーシで「ルカシェンコ政権打倒のクーデターを起こすことを手伝わなければならない」というポーランド軍関係者の発言もあったことも考慮すると、ウクライナの2014年の暴力革命にポーランドも関わっていた という話は信憑性があるかと思います。
今のポーランドは ドイツとともに、事実上 政治的には 「アメリカの植民地」 と言って良い状態ではないでしょうか。(日本も完全にそうですが・・・) このポーランド人女性作家は どんどん専制主義的な国家になっていっている現状に不安を持っているようですが、彼女のような人はポーランドではごく少数派です。
なお、ウクライナとポーランドが連合国家を作って「ウクロポリ」になるかも、というのは下のロシアメディア「スプートニク日本語版」の記事にもありますので、最後にご紹介します。
ポーランドの国名が「ウクロポリ」 に? 現地メディアが移民危機を指摘
(記事引用開始)
ポーランドはウクライナ難民に占領され、その国名が世界地図から消える可能性がある。ポーランド・メディアNDPのコラムニスト、ハンナ・クラメル氏が指摘した。
「直近の数年間で政府は一貫してポーランドを破壊し、ますます多くの占領者を誘致している。仮にこのまま行く場合、我々はまもなく欧州の地図から消えるだろう。というのも、ポーランドの代わりにここではウクロポリ(「ウクライナの町」、ポリは「町」ポリスを意味する)が誕生するからであり、ポーランド人はネオ・バンデラ主義者(バンデラはナチスに協力したウクライナ民族解放運動の指導者)たちの奴隷となるだろう」
ウクライナ難民の流入はポーランドに大きく影を落としている。難民は支援を必要とするだけでなく、違法武器の持ち込みにより犯罪率の増加を引き起こしているという。これによりポーランド市民を危険に晒しているとコラムニストは指摘している。
先にポーランド紙「ムィシュル・ポルスカ」のコラムニスト、コンラド・レンカス氏はウクライナの民族主義を除去(非ナチ化)する必要性を主張していた。
(引用終了)