DNA解析で障害を発見する技術の果てにある未来は | いおりくんの色えんぴつ

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いおりは2012年生まれのダウン症の男の子。福岡市在住。
ダウン症についてたくさんの人に知っていただきたいと
思いブログをつくりました。

 今朝、おそるべきニュースが掲載されていました。(リンク先の記事は時間がたつと削除されるため、全文を転載します)

 

朝日新聞デジタル版 2017年7月18日21:00配信

 

ヒトゲノム、世界最大級のDBに 日本人特有の特徴発見

 

 東北大学などは18日、日本人3554人のゲノム(全遺伝情報)を解析し、公的機関で世界最大級のデータベースを作ったと発表した。日本人特有の特徴も見つかった。今後、1万人に数人の割合で発症する希少な病気と遺伝子の特徴との関係に関する研究を進め、原因究明に役立てたいとしている。

 データベースは東北大が岩手医科大や日本医療研究開発機構と連携して作成。日本各地の健康診断などの際に同意を得られた3554人のゲノムを解析した。

 ヒトのゲノムは30億個の遺伝情報があるが、今回の解析で、個人によってわずかな違いがある場所が約3710万個あることがわかった。このうち約2690万個は国際データベースにもない新たな情報で、半数以上が日本人に特有とみられるという。

 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170718-00000086-asahi-soci

 

 コンピューターの情報処理速度が爆発的な進歩して、いまや人間のゲノム(遺伝子情報)すべてを一日もあれば全て解読できるようになっています。記事内の青字で示した部分。1万人に数人の割合で発症する希少な病気の人のDNA情報と、それ以外の人たちのDNA情報を見比べて、その病気の人にだけ共通する遺伝子配列の箇所が発見できれば、その遺伝子の位置がその病気に関係があるようだとわかります。

 

 私はダウン症児の父親で、希少な障がいの子どもたちのサークル(「ひまわり~希少障がいの親の会~」)の世話人もしています。今回のニュースはとても気がかりです。

 技術の進歩自体には善も悪もありません。問題はその技術をいかに使うかです。たとえば、原子力の技術を発電に使えば世の中便利になりますが、原子爆弾を作って使用すれば大変悲惨なことになります。

 今回の障害のDNAでの位置を発見する技術は、病気・障害の治療法を開発する目的で使われれば、障害のある人たちの役にたつかもしれません。おそらく研究者の方々はこれを目指しておられるでしょう。

 しかし、特定の障害のDNA上の位置が分かれば、健康診断のときと同じような腕に注射して血液を採取するだけで、その人にその障害があるかどうかがわかるようになります。さらに応用すれば、妊婦さんの血液を検査することで、その中に混じっている胎児のDNAを抽出し、生まれてくる赤ちゃんにさまざまな障害があるかどうかを調べることができるようになります。人はみなできるなら健康な赤ちゃんが生まれてほしいと願うもの。格好のビジネスチャンスです。開発者にその意図はなくとも、医療関係の業者が学術論文に発表されたデータをもとに検査キットを開発するでしょう(すでに米国にはあります)。

 

 その先にある未来は?

 いま、ダウン症、13トリソミー、18トリソミーの3つの染色体異常が赤ちゃんにあるかどうかを調べる新型出生前検査が日本でも臨床研究として行われています。検査を受けた妊婦さんの95%以上が産まない選択をしました。私は自分が重い障害を負ったとしても、自分の意思に反して誰かに殺されたくはありません。ですから、出生前検査については断固として反対です。

 早すぎる医学の進歩に、生命に関する倫理問題の議論・合意が追いついていません。障害がある人は生まれないほうがいい?生きる価値がない?もしも自分に障害があって、周りの人にそう言われたら、あなたはどう感じますか?少しの時間でいいから、考えてもらえませんか。