相模原市障害者施設での殺傷事件について① | いおりくんの色えんぴつ

いおりくんの色えんぴつ

いおりは2012年生まれのダウン症の男の子。福岡市在住。
ダウン症についてたくさんの人に知っていただきたいと
思いブログをつくりました。

 障害者を標的にした,確信犯による大量殺人傷害事件の発生を受けて,大きなショックを受けました。まだ自分自身の考えが十分にまとまらない段階ですが,自分自身が何を感じ,何をすべきと思ったか,記録を残そうと思います。

2016年,7月26日の深夜,神奈川県相模原市にある知的障害者施設「津久井やまゆり園」に元職員の若者26歳が侵入し,ナイフで重度障害者19名を刺殺,26名が重軽傷を負いました。犯人は「障害者はいなくなればいい」,「障害者は不幸を作ることしかできない」,「障害者は安楽死させるべきだ」といった発言を事件前に繰り返し,事件後も同じ発言をしていると報道されています。

 ワイドショーで,この施設に通園されていた軽度知的障害の男性が,「自分は学校でいじめられ絶望していた。そんなときにこの施設に通園するようになって,施設に入所している障害者の方々とふれあううちに心が癒されていった。(…)仲間がなぜ殺されなければならなかったのか?私たちが何をしたというのか?」とおっしゃっていたのが,いちばん心に刺さりました。障害者や社会的弱者は生きる価値がないなんて,まちがっている。そんな差別発言,隣人の人格の否定を許す社会ではあってはならない。亡くなられたみなさま,さぞ悔しかったことでしょう。ご冥福をお祈りいたします。

(私の関心)

 私は,今回の事件についてマスコミがどのような観点で報道するのかを注意深く見守っています。語られることと語られないことがあります。私たち市民が意識しておきたいことは,実は,「語られないこと=語る必要がないこと,重要ではないことではない」という事実です。とても大事だけれども語ったらどこかの誰かが困ること,不都合な真実がある。自主規制か外部からの圧力かは知らないけれど,それが故に語られない。確実にこういう事情があるのだと感じます。自分たちの利害から遠いところにある事例だったら理解しやすいと思います。中国が東南アジアの海の中に島を勝手に作って昔から自分の国の領土だと主張し,国際社会から承認されないことを自国内でどう伝えているか,北朝鮮の国内向けの報道,戦時中の日本の国民向けのウソの戦況報告・・・。また,今回の事件については,障害者当事者,関係者でなければ気づきにくい視点もあります。気づいた人がこれらを語ることが必要だ,と思っています

(特殊な個人が起こした理解不能な犯罪か?)

今回のような凶悪事件が起こるたびに,犯人の動機は?心の闇を作りだした背景は?ということで,犯人本人,そして家族や職場も含めて,過去にさかのぼって不祥事や出所があいまいな噂がワイドショーで取り上げられ,お茶の間に束の間の話題を提供します。そして新たに別の事件が発生すると,何事もなかったかのように時間がたつと忘れられてしまいます。

犯罪が起こる原因には,①犯罪者の個人的要因と②社会的要因の2つが複雑に絡み合っているものだと私は考えています。

原因を①の個人的問題にしてしまえば,ニュースを見ている第3者は安心できます。あの事件は,私たちふつうの人とはちがった,特殊な事情を抱えた人が起こした理解不能な事件だと。事件の真相解明とワイドショーが呼ぶものは,たいがいこちらの個人の問題のような気がします。

 私は②の社会的な問題としてとらえ,考えることが非常に重要だと思います。個人の資質(犯罪を起こしやすい性格や精神障害者というレッテル貼り)の問題として捉えると,次の事件の発生防止に繋げることがむずかしい。しかし,個人の資質だけの問題ではない=自分にだって,ごくわずかながらも同じことを起こす危険があるかもしれない,という意識を多くの人がもつならば,改善策をもっと真剣に考えるだろうし,国や社会も具体的な対策を起こさざるをえなくなるからです。

(社会の仕組みにも原因がある?)

 社会の仕組み・ルールを改善することで犯罪を減らすということは実現可能です。例をあげるまでもなく理解いただけると思いますが,念のため一例上げます。

 今回の事件について海外でも大きく報道されたというニュースが流れました。米国のワシントン・ポスト紙(電子版)は,「日本は治安がよい国で,今回のような大量殺人事件が発生することは非常にまれ。市民はとてもショックを受けている」と伝え,「米国とちがって日本では銃所持が厳しく規制されているせいで殺人事件発生件数自体がとても少ない」ことを紹介しました。つまり,法律で銃規制をおこなえば,銃を使った殺人事件は減ります。

 今回の殺伐とした事件が起こった背景には,いまの世の中が殺伐としているという現実があると思います。このような事件が起こるとは想像していませんでしたが,私が成人してからの20数年のうちに,人の命を軽んじる,何やらきな臭い世の中に急激に変わりつつあるなと,危機感をもって感じていますので,いざ起こってみると,ああ起こってしまったか,全然予期できない事態ではなく,発生が心配される事態ではあったのかな,と感じます。では,次回以降,具体的に私見を述べたいと思います。


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