前回からのつづきです。
事案の概要を再掲します。
貸主と借主は、平成12年6月1日、期間3年の定期借家契約を締結し、借主はそれ以降、本物
件で店舗を営んでいます。平成15年5月31日に期限が到来し、貸主は、借主に対し、終了通知
を出しましたが、賃貸借契約書の取り交わしのないまま、新たな契約締結に向けた交渉が行わ
れ、その後も借主は家賃相当額を支払いながら、本物件で営業を継続し、それに対し、貸主は借
主に対し、物件からの退去を求めることはしませんでした。結局、平成15年6月1日から平成18
年5月31日まで、賃貸借契約書の取り交わしはありませんでした。
平成18年6月1日と平成21年6月1日に、貸主と借主は、定期借家契約の体裁が整った賃貸借
契約を締結し、貸主は、平成23年12月1日に借主は対し終了通知を出し、平成24年5月31日
までに退去を求めて、訴訟となったものです。
この事案において、①賃貸借契約書の取り交わしのない平成15年6月1日から平成18年5月3
1日までの期間の位置づけ、②平成18年6月1日付、平成21年6月1日付で締結された定期借
家契約の体裁の整った賃貸借契約は定期借家契約かそれとも普通賃貸借契約か、の2点が問
題となりました。
前回のブログでは、①について、裁判所は、貸主と借主との間で賃貸借契約が成立したと認定し
ました。
今回は②についてです。②について、貸主側は、仮に、平成15年6月1日から平成18年5月31
日までの間に普通借家契約が成立したとしても、平成18年6月1日に、貸主と借主との間で、定
期借家契約の体裁の整った賃貸借契約が締結されたことで、普通借家契約は合意解除され、改
めて、期間3年の定期借家契約が締結されたと主張しました。
これに対し、裁判所は、定期借家契約が普通借家契約に比べ、契約の更新がなく、期間満了に
より賃貸借が終了する点で、賃借人にとって不利益であり、新たに定期借家契約を締結する際に
も借地借家法38条所定の要件を満たすことを要することを考慮すると、既に普通借家契約を継
続している賃貸人と賃借人との間で定期借家契約の合意をするためには、賃貸人は、賃借人に
対し、普通借家契約を更新するのではなく、これを終了させ、賃貸借の期間が満了した場合に、
更新がない点でより不利益な内容となる定期借家契約を合意することの説明をしてその旨を認
識させたうえで、契約を締結することを要するものと解するのが相当であるとして、平成18年6月
1日に、そのような具体的な話し合いがされたことを示す証拠がなく、新たに定期借家契約が成
立したということはできないと判示しました。
以上の事案は、私が借主の代理人として関与した事件で、最近判決が言い渡されたものです。
以上のとおり、①、②の2点について、裁判所は、私の主張を全面的に認めてくれました。
貸主の明渡請求は棄却され、私のクライアントである借主は、退去しなくてもいいことになりまし
た。
これまでも何度か定期借家契約の問題を取り上げてきましたが、定期借家契約には、借地借家
法上厳格な様式性が求められており、契約書の体裁を含め、その取扱いには十分な注意が必要
です。形式面の不備等があれば、たちまち貸主にとって不利になってしまう可能性が大です。
本判決が実務に与える影響については、次回以降にお話ししたいと思います。