朝日町むかし話 ー 姫次郎稲荷 | 朝日町shellのブログ

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先日、病院の待合所で診察の番が来るのを待っていた時に、図書コーナーで「山形の昔話」という本を捲っていたら、朝日町に残る物語が載っていたので読みました。


読んだ後に、なぜだかブログでこの話を紹介したくなりましたので、内容をざっくりと暗記して編集を加え、挿絵を描きました。 悲しいお話かもしれませんが、よろしければ読んでみてください。※1



本編はここから。


今からずっと昔、宮宿村※2に沖田源兵衛という、鉄砲狩りが好きな武士が住んでいました。


ある日のこと、山中できつねの親子を見つけた源兵衛は、美しく立派な毛をした親ぎつねに狙いを定めます。


銃を向け、楽しそうに遊ぶ子ぎつねたちを、見守るように立っている親ぎつねに狙いを定めました。


親ぎつねに気付かれぬよう慎重に見定め、息を殺しながら鉄砲の引き金を引きます。


鉄砲の弾は親ぎつねに命中し、親ぎつねはその場に倒れました。


そして、それを見ていた子ぎつね達はしばらく呆然と、その場にたたずんでいましたが、やがて悲しそうに泣きながら山中へ逃げ去ったのです。


美しい大きなきつねを手に入れた源兵衛は、大満足で家へ帰ると、その皮で小鼓を作りました。 その小鼓が言葉にできぬ程の美しい音を出すことから、源兵衛は小鼓を家宝として大切にするようになりました。


ところが、しばらくして一人の美しい娘が源兵衛の家へ奉公に上がった頃から、不思議なことが起こるようになったのです。


夜になると鼓が悲しそうな音を響かせるのでした。 鼓 「ポ~ン...ポ~~ン」

そして、鼓が鳴り出すと娘もすすり泣くのです。 娘 「シクシク・・・・、なぜにこのようなことに・・・。」


さすがの源兵衛もこれには耐えられず、鼓を桐の箱に入れて秘蔵することにしました。


ところが数日後の、ある雨の降る晩のことです。


屋敷に入った盗賊が、鼓と娘をさらって行ってしまいました。 源兵衛 「俺の家に盗みに入るとはいい度胸だ。撃ち殺してくれる!」

勇んで後を追う源兵衛が、盗賊めがけて銃を放ちます。 ド・ド~~ン!!


すると悲しい悲鳴と共に、二つのきつね火が揺れました。


不思議に思った源兵衛が近づいてみると、鉄砲の弾を受けた二匹の狐が鼓を抱きながら、寄り添って死んでいるのです。


娘はあの時の子ぎつねだったのです。 弟ぎつねと相談して親を取り返すために、家に入り込んだに違いありません。 どこか悲しそうでいて、しかし親ぎつねとまた一緒になれた姉と弟の兄弟ぎつねは、どこか安らいだように見えます。


源兵衛 「そうだったのか、お前たち。一緒にいたかったんだな・・。すまなかった。」


大力無双の武士、源兵衛はきつね達に心から詫び、姫次郎という名の稲荷を建てて、親子ぎつねの霊を慰めたそうです。



※1 内容はおおまかには原案どおりですが、脚色して編集をおこなっています。

※2 現在の朝日町中部にある宮宿地区。町役場や消防、町立病院などの行政が集まる朝日町中心地。