小さい頃、たまごサンドは好きじゃなかった。
茹でたまごとマヨネーズをくちゃくちゃにまぜて、せっかくのしゃきしゃきレタスも一色単にしてラップでくるんだママのお手製、ロールパンで作ったたまごサンドサンドは、食の細かった私には見ているだけで胸やけがしそうだった。
だからいつもたまごサンドが好きな妹と私の大好きなハムチーズサンドをとりかえっこして食べた。
大人になった私はきのう、たまごサンドを作るためにゆで卵を切っていた。うまく切れないので「卵切り器がほしい」とつぶやいたら、よっちゃんが不思議そぅな顔をして何それと尋ねた。
「ゆでたまごを切る器械だよ」と言って、それは器械と言っても手動で、手に収まる位の大きさで、プラスチックの器のタマゴ型の凹みにゆでたまごをセットして、上から裁断機の要領で、ピアノ線の張られた枠を閉じると綺麗なタマゴスライスができる事を教えた。
ゆでたまごをスライスにしなきゃいけない状況なんて早々無いだろうに、小中高とそれは家庭科室の引き出しに必ずあった。
ゆでタマゴをスライスするためだけに存在するという気高さと、ゆでたまごのスライスに余念が無く、朝昼晩ろくに食べずにタマゴ切り器の事ばかり考えて遂にこの機械を開発した、労力とお金と技術を全てタマゴを切ることに注いだという贅沢さ、そして何より家庭科室にあるという特殊な状況は、もうそれだけでタマゴ切り器を素敵にさせていた。
きっと買うことは無いな。
と思うと同時に、いっこくらい持って帰らなかったことをちょっと悔やんだ。
そんな事を色々思い起こしながら作ったタマゴサンドを食べながら、やっぱりあたしはハムチーズだなと思うのでした☆