物価上昇が止まりません。
総務省が6/24に発表した5月の消費者物価指数は、2.1%の上昇となりました。
上昇率は2か月連続で2%を越え、30年振りの伸びとも言われています。
生鮮食品は12%も上がっていて、毎日の買い物のたびに、物価高を痛感させられますね。
まさに、未曾有のインフレともいえるこの状態。
これが、この先もしばらく続くと予想されています。
6/15年金支給 -0.4%の減額
そんな最中、6/15から、2022年度の年金支給が始まりました。
6/15に入金された年金は、4月分と5月分です。
支給額は前年度に比べて0.4%の減額。
物価高がどんどん進んでいるのに、時代に逆行しているかのような年金の減額に、不安を覚えている方も多いことでしょう。
入金の前には、令和4年4月から、年金額が改定されるお知らせ「年金額改定通知書」が、年金受給者に送付されました。
下は、実際の見本です。
116万円弱の年金が、年間5,000円ぐらい下がっているのがわかりますね。
政府・与党が3月に年金生活者向けに5,000円の給付金支給を検討し、結局断念したのも記憶に新しいと思います。
そもそも年金の支給額は、報酬や月数に何の変化が無くても、物価や賃金の動きに応じて毎年度改定されます。
その改定ルールは、前年の物価変動率と、2年度前から4年度前までの3年度を平均した実質賃金変動率に応じて改定する、というものです。
今年度の減額については、次の記事を参考にしてください。
それでは、今年の物価上昇を受けて、来年度は必ず年金は増えるのでしょうか。
話はそれほど単純ではなさそうです。
「年金額の改定ルール」
「マクロ経済スライド」
「キャリーオーバー制度」
これらすべて、年金額の増加を抑制する仕組みです。
増額は賃金に合わせる
「年金額改定ルール」
まず忘れてはいけないのが、年金額改定ルールの基本です。
次の図を見てください。
物価や賃金の下落、上昇に応じて、年金額改定のパターンが6つ設けられています。
日本は、賃金がちっとも上がらないことで有名ですが、物価の上昇に伴い、多少は賃上げも実現するでしょう。
そうなった場合、パターンとしては⑥になりそうです。
ここで注意したいのは、物価上昇より賃金上昇水準が少なければ、年金額は低い方の賃金に合わせるということです。
年金は、世代間の仕送り制度です。
いくら物価が上がっても、支えてである働き手の賃上げがそれほどでなければ、物価に合わせて年金の大盤振る舞いをするわけにはいかないのです。
結果として、年金受給者にとっては、物価が上がった割には年金が上がらないという事態になりそうです。
年金制度の財政を維持するための
「マクロ経済スライド」
次に考慮すべき仕組みはマクロ経済スライドです。
これは、「物価や賃金による改定率から、平均余命の延びや年金の加入者数の減少に応じて「スライド調整率」を算出し、それによって年金の給付を減らす」という仕組みです。
日本は、少子高齢化が進み、保険料の担い手が減る一方、平均余命が延びて年金を受ける高齢者は増加する一方です。
マクロ経済スライドは、給付を抑制することによって、年金財政を安定させるために導入された制度です。
今後、賃金・物価が上昇しても、年金額はそれほど増加しないことになります。
マクロ経済スライドを有効に機能させる
「キャリーオーバー」
さらに、このマクロ経済スライドにはキャリーオーバー制度というものがあります。
マクロ経済スライドは、賃金や物価がマイナスになった場合は、実施されず、その未調整分がツケのように繰り越されています。
現在、0.3%分のマイナスが「ツケ」として溜まっています。
翌年度、物価・賃金の上昇を理由に年金が増額されても、、このキャリーオーバー分の0.3%分は、減らされてしまうということです。
物価高は、7月の参院選でも大きな争点になっています。
物価が上がっても、賃金が追いついていません。
苦しいのは年金受給世代だけではなく、一時的な給付金を貰えれば解決する問題ではないのです。
長い将来を見据えた改革が必要とされています。
現在、高齢者や短時間労働者も、厚生年金に加入できるよう、適用拡大も進んでいます。
保険料の担い手を増やす。
賃金を上げる。
少子化をストップさせる。
こうした取り組みを地道に続けていくことが、長い目で見れば、年金財政の健全化に結びつきます。
年金が減った、これからも増えないかもしれないと、いたずらに不安に思うことなく、色々な仕組みの背景をしっかりと理解して、この変動期を乗り切っていきたいものです。
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