給湯器の型番と2階のリフォームの進捗を確認した。
そうだ、お世話になった仲介業者にお礼をしに行こう。
途中でコンビニに寄りぽち袋を買いその中に5千円を入れた。
お礼の意を込めて世話になった営業に渡すつもりだ。
それから仲介業者に立ち寄った。
2組のお客さんが来店していて、その対応に忙しそうだ。
店長が俺に気がつき、「どうぞどうぞ」と席に促した。
「○○オーナー様、今回は大変でしたね。」
いつも思うがオーナーと呼ばれるのは気分が良い。
「営業の○○さんの親切な対応のお陰でなんとか大事にならず
に治まっています。 まだ直ってないんですけどね。
○○さんにお礼をしようと思い立ち寄らせてもらいました。」
「ああ、○○なら今接客中なので少々お待ちください。」
「はい。ありがとうございます。」
10分くらい待っただろうか。 冷えた麦茶が美味しかった。
接客が終わったようで○○さんが俺に近づいてきた。
電話の声から想像していた以上に優しそうな顔立ちだ。
そう、俺はこの時初めて○○さんにお会いしたのだった。
一連のサポートに対して心から感謝している意を述べた。
そして、神の心で対応してくれたお礼にぽち袋を差し出した。
もちろん回りから気付かれないように、スーッとだ。
彼は受け取らなかった。
そして、小声でこう言った。
「ありがとうございます。でも、当然のことをしただけですから、
それに仲介を預かっている2階の部屋もまだ決めてないので、
せめてあの部屋の入居を決めたら、堂々といただきますよ。」
まさに、神だ。 なんと言う誠実さだ。 眩し過ぎる。
俺は生まれて2回目の神の言葉を聴いた。
神は存在した。それも俺の目の前にいる。
ここで無理やり手渡しても意味がないと思い、
俺はそのままぽち袋の手を引っ込めた。
もう一度お礼を言って店をでた。
いつもの俺なら、やったー、5千円得したーと喜んでいただろう。
しかし、今回はそう思わなかった。 このまま引き下がれなかった。
どうしてもお礼がしたいと言う気持ちが消えなかった。
そして駅前で5千円の和菓子を購入して、再び店に戻った。
店長も○○さんも、あれって感じで俺を見ていた。
そして店長にお世話になったお礼だと言って
先ほど購入した和菓子を見せた。
「いやー、すみません、では遠慮なく頂きます。」
俺は○○さんに今度は堂々と手渡した。
彼は参りましたという感じで、はにかみながら受け取った。
さすがに店長がOKしたら、彼も断れないだろう。
作戦成功だ!
それにしても今回の件ではいろいろと学ぶことが多かった。
疑心暗鬼になり理由なく人を疑ったりもした。
しかし、彼のような清々しい営業と出会えることが出来て、
俺は本当に心が洗われるようだった。 素直に人に感動した。
そして、もう一度人を信じてみようかなと思うのである。
おっと、そういえばまだ給湯器は直っていなかった。
次回は完結編だ。
